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白と黒の狭間で ~現冥境奇譚~  作者: 白杉裕樹
第一章
22/35

第19話 出会いと共闘1

「くそっ……、本当にひつこいな」




 今日だけで2件目。

 どれだけの人数がこの地(只見町)に来ているんだ。


 “爆裂火球”で相手の動きを止めた。


「“沈黙の領域”! 今だ……っ!」

 詠唱を封じ込められた魔術師の背後に忍者が現れると、そのまま全身を切り刻んだ。



ぎゃぁっ!



 声にならない声を上げ、そのまま倒れた。

「ふぅ……ご苦労様」

「いえ、ありがたき幸せ……では、これにて」

 後ろに控えている忍者に礼をいうと、護符に消えていった。


「さて、このままじゃ駄目だから……と」


“「我が望む場所へ飛べ……空間転移!

(Eitilt go dtí an áit a theastaíonn uait ... metastases spáis)」”


 そのまま倒れた魔術師を彼の記憶を元に、元居た場所に送り返した。

 残るは、この結界解除のみ。


 戦闘結界を解除すると、先程まで焼野原だった木々も元の美しい状態に戻っていた。




「ふぅ……もうこんな時間なんだ」

 時計を見ると、12時近くになっていた。


 只見駅そばの定食屋さんに入ることにした。

「いらっしゃいませ~」

 この店の店員らしい年配の人が、声をかけてきた。


「おや、この辺りでは見かけない人だねぇ~。旅行かぃ?」

 お冷を差し出しながら、興味深そうに終を見ていた。

「ソースかつ丼を一つ、お願いいたします」

 申し訳なさそうに注文をすると、奥にいるのはこの店の亭主なのだろうか元気に答えていた。


 2011年7月の新潟・福島豪雨による路線の被害により電車が走れなくなり、バスの折り返し運転を行ってから11年。

「本当に長いようで短いような……これも、皆さんのおかげなのよねぇ~」

 この店の奥さんらしい人物が、お盆を持って話を続けた。


 10月には、この駅を通る只見線が全面開通するらしい。

「只見駅の前に、只見のいいところが一杯の『只見線広場』が出来るからよ、また来て下され」


 カツを揚げた衣を噛む音が、サクサクと店内に響いた。

「ごちそうさまでした」

 代金を渡すと、店の人が手を振って見送ってくれた。


「……美味しかったな。また、来てみたいかな」

 素朴さと人情味溢れた人とのちょっとした交流が気持ちよかった。




 会場に戻ると、会場設営の準備も順調に進んでいた。

「おっ! おかえりぃ~!」

 一人の丸坊主の少年が手を振っていた。


「仁志君も、こっちに来てたんだ」

 終が久しぶりの再会に喜んだ。

「おぅ、どこも人手不足やからな。小遣い稼ぎや!」

 あははと笑いながら椅子の移動とかを行っている。

「終君も手伝いで?」

「う、うん。まぁ、そんなところかな」

 苦笑いしながらその場を去ることにした。



 会場の一部は宿泊施設も兼ねており、終は個室を与えられていた。

 他の会場関係者は4人で一部屋の相部屋で、異能者などの会場警護関係者と上級の立場の人は、それぞれ個室になっている。


 布団に寝転ぶと、今日の戦闘を思い起こしていた。

 

 どの敵も、今回は単体での行動が多かった。

 これは何かの前触れだろうか。


 現在、行方不明になっている復讐者と名乗るパーティー。

 そして、その復讐者達を追う討伐パーティー。

 その討伐パーティーは、目撃者も抹殺するという。


 で、目下追跡しやすい自分を対象にしているわけだ。

 同じ欧州魔術師ギルドだから、共通の情報システムがあるのだろうか。 

 しかし、どうして自分が此処(福島県)に居るのが判ったのだろう。

 今日だけで、全国各地5か所で同時に開催されているはずだ。



 疑問が疑惑になる。



 あまりにも都合良すぎる。

 姫の宮(この)内部の誰かが、欧州魔術師ギルドと繋がってるとしたら……


 戦闘結界は異能者の素質があると、本人の意思にかかわらず内部に取り込まれる。

 つまり、仁志達適合者も戦闘に巻き込まれる恐れが十分にあるという事だ。

「それは困るな……よし、やってみよう」



 

 時刻は夜中の2時を過ぎたところだ。


 目が覚めると、準備をする。

 何故か胸騒ぎがする。

 護符を持つと、そのまま静かに部屋を出た。

 

 終は何かを決心すると、外出許可をわざと取って会場を後にした。



 自転車で移動中、“魔力感知”を行うと……やはり、式神が周囲に居るみたいだ。


 只見駅を背にして、只見川が流れる橋を渡るとすぐそこに広い公園がある。

 そこで休憩することにした。


 すぐ後ろは山がありキャンプ場もあると教わっている。

 川の向こうは只見の町だ。


 横浜と違い、どこか前に居た施設のある街に似ている。

 周りを山に囲まれ、のどかな風景だ。





 来るのは復讐者か討伐パーティーか。



 終は、静かに待つことにした。

この作品は、基本的に火曜、金曜にアップしていきます。よろしくお願いします♪


本編である「出会いと共闘」編は事情により毎週火曜日の投稿となります。

金曜日は閑話が不定期に入る予定です。

次回の「出会いと共闘2」は、10月18日0時にアップ予定です。


乞うご期待ください

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 終君が「申し訳なさそうに注文をすると」という部分。 どうして申し訳なさそうにしていたのか分かりませんでした。。
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