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白と黒の狭間で ~現冥境奇譚~  作者: 白杉裕樹
第一章
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第18話 Welcome to 夏休み!

「ひゃっほーぃ! もうすぐ夏休みだぜぃ!」




 期末テストも無事に終わり、あと数日もすれば夏休みが始まる7月半ば。

 あれほど死人の様な目をしていた学生達も、夏休みが近付くにつれて元気が出てくるという。


 一部の生徒は、夏休みも関係なく部活が待っている。


 鮎美は何を歌っているのかはわからないが、機嫌よく鼻歌を歌ってる。

 よく見ると雑誌を見ている。


 『るるるトラベルin福島県』


 どうやら8月にかけて、家族で福島県へ旅行に行くらしい。


一昨年(おととし)まではお祖父ちゃん(翠閠)とだったけど、昨年からお兄ちゃんが入ったし、今年は天照さんも参加するから賑やかになりそうっ!」

 その話を聞いていた恵ちゃんやなほちゃんが乱入してきた。


「マジマジマジぃ~? いぃなぁ~、あんなイケメンと宿泊旅行……」

 恵ちゃんが明後日の方を見ながら話している。

「おいおい、恵ちゃんよ。お相手はうちのバカ兄貴なんだよ?」

 鮎美が苦笑いしながら両手を組んでいる。

「家族でロマンスもへったくれもないでしょうに!」

 なほちゃんがジト目で鮎美を見てる。

「鮎美ちゃん……あんなイケメンがあーしてこーしてあんなことするんだよ?目の保養になるじゃん……」

 いきなりなほちゃんにデコピンを喰らわす鮎美!

「こらこらこら、勝手に登場人物に家族を入れないっ!!」


 あははと笑っていながら、なほちゃんが横目で終の方を見た。

「あれ、藤塚君はこの夏休みは何か予定でもあるのかな?」

 ん~っ?と言った感じで、首を長ーくしながら終に話かけた。


「自分? 多分、施設の方で色々と用事があるんじゃないかな……」

 そう言いながら遠い目をして外を眺めていた。


「そういえば、施設に住んでるんだけ? あんまり近づける雰囲気じゃないみたいだけど……」

 なほちゃんが終の方に向かって座りなおした。

「そうだね。あの施設に住んでいるのはみんな訳アリの子ばかりだからね」


「そなんだぁ~。 この前ね、近くまで行ったから寄ったんだよね」

 どうやら、なほちゃんが施設の近くまで来たらしい。


「そしたらさ、いきなりどこからともなく職員さんがやって来て、「許可書ありますか?」ってきかれたんだよぉ?」

「ふえ~、厳しいなぁ」

 けんくんが驚きながら答える。

「いつもあんな感じなの?」

 なほちゃんがあまり思い出したくないような感じで話した。

「そうだね……いつもあんな感じらしいよ」

 終が申し訳なさそうに謝った。



「そんな怖い思いしちゃったからさ……あゆたん! 赤べこのお土産よろしくねっ!」

 観光雑誌を見ていた鮎美が笑いながらなほちゃんに反論している。

「なんで、私がそんなことしなきゃいけないのよっ!」


「あっ、一条先輩からグルチャ(グループチャット)だ……何々?」

「どうしたの?}

「何かあったか?」

 けんくんや恵ちゃん、なほちゃんやみんなが集まってスマホを覗き込んだ。




<な、何があったんだ? 高校でもバスケで勝負だとか言ってた奴が……いきなり進路変更?>

<スポーツ特待をけってまで、どこに行くんだよ。悔しぃ!>(一条)


<先輩、その人はどこに進学するんですか?>(鮎美)

 急いで書き込む鮎美。


<何でも、今年開校の新設校に行くらしい>

<あいつの親からも不安と心配の電話が来てさぁ……>(一条)


<それは心配ですね>(鮎美)


<みんなで説得してるが、もう辞退もしてしまって……はぁ>(一条)




「一条先輩も大変だなぁ……」

 なほちゃんが心配そうに言った。


 一条先輩は、一個上の3年でバスケットボール部でキャプテンをしていて、高校も強豪校にスポーツ特待生で進路も決まってた。

 どうやら、別な中学校でライバルだった子が、突然、同じスポーツ特待生を辞退して別な高校に進学するらしい。


 来年は、自分達も進路を考えなければいけない。

「まっ、俺は行ける高校があれば、そこに行くだけだけどな!」

 けんくんが呑気に言った。

「意外とみんな、同じ高校に行ったりしてね」

 恵ちゃんが二や笑しながらけんくんを肘で突いている。


「俺……もっと頑張らないと……」

 涙を流しながら、祈るようなポーズで答えた。




「高校……かぁ……」

 みんなの話題に心当たりはあった。

 自分がいる財団、姫の宮財団で新設の高校を開校すると聞いている。


 普通科の他に、日本では初めて「魔術師養成」コースなるものが新設されるらしい。

 その学校が、神奈川と京都に同時開校するという。

 そして、今まで異能者と呼ばれていた術師達の名称を“魔術師”で統一するみたいだ。


 これが公になったらメディアや世間が大騒ぎするだろう。

 その為に、色々な役所や行政機関、報道機関等に色々と根回しを行っているみたいだ。


 表に公にするのは来年の1月からだとか。



「その先輩、多分……養成コースなんだろうなぁ」

 ポツリと、終が呟いた。


 そこまで強引にするのも、その人は異能者としての素質があったからだろう。




 魔術師養成コースの人員を集めるために、この夏休みに各地で検査を実施するらしい。

 福島コースに自分が護衛として同行する予定だが……


「黙っていた方がいいかもな」

 終は楽しそうに雑誌を見ている鮎美に迷惑がかかるかもしれないと思い、黙っておくことにした。





 いよいよ夏休みが始まる。

 この夏休みは、いつもと違う体験が起こりそうな雰囲気だ。

この作品は、基本的に火曜、金曜にアップしていきます。よろしくお願いします♪


次回は、10月11日0時にアップ予定です。


乞うご期待ください

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