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白と黒の狭間で ~現冥境奇譚~  作者: 白杉裕樹
第一章
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第17話 終の思い

「自分って……誰かを護ることが出来るのかな」




 最近、実戦が増えるにつれて疑問に思っている事だった。

 ただ、自分は運がいいだけなんじゃないか……と。


 最初の救出戦も、相手が過小評価してたから何とかなって……巴御膳の働きもあったし。


 ここのところ、多数対単体ばかりの戦闘が多い。

 不利な状況になるのはわかっているが数は脅威だ。



 最近だと、欧州魔術師ギルドのあの復讐者達……そして、それを追っている討伐パーティー。

 どの戦いも、自分は満足に戦えなかった。

 戦えなかった上に、最後は誰かが割り込んで終了となっている。



 これは、誰かに助けてもらったようなものだ。




 単体同士なら何とかなる。

 2人位ならギリギリだろう。


 ……なら、それ以上は?


 もう答えは出ている。

 しかも、笑ってしまうくらいの絶望感と恐怖。



「ちくしょう……」

 終は目を覆った。

 悔しかった。

 勝機もなにも見いだせず、ただ、立ち向かっていくしかなかった。



 自分は弱い……



 ふと、周囲の声が聞こえた。


「火の精霊たちに命ずる……」

 隣のでは魔法の詠唱の練習をしてるのだろうか。

「確か、仁志って言ってたよな。一生懸命頑張ってる……けど、緊張しすぎだ」

 終がクスリと笑った。


 そういえば、あちらこちらから詠唱の言葉が聞こえてくる。

 初歩の魔法詠唱である“炎の矢”だろう。

 修練場では、式神や護符についての基本を教わっていた。


 みんな、魔術を使えるように頑張っている。



「おいで……風の精霊(シルフ)

 終の言葉が終わると同時に、小さな旋風の中から1匹の精霊が召喚されるように出現した。

 

 風の精霊は、上半身が髪の長い少女の姿をし、下半身は渦巻き状になっている。

 前身が透き通るような淡い白色をしている。


 優雅にお辞儀をすると、まるでダンスを踊るかの様に部屋中を飛び回った。


 時々、終に向かって手を振っている。



 十分に動き回ったのかその姿が消えていった。

 まるで、「ありがとう」と言ったような笑顔を残して。




 強くなりたい。

 今以上に強くなりたい。

 式神より弱い主なんて、何時かは見限られるだろう。


 何物にも負けない、自分だけの力が欲しい。



 けど、どうやって……?


 今はまだ判らない。

 けど、魔術も式神もまだまだ自分は弱いままだ……


 あらゆるものから守れるように、強くなりたい。



 ……けど、誰を?

 姫の宮?


前の施設で厄介者扱いだった自分を引き取ってくれた事は、恩も感じているし感謝もしている。

 だから、力になりたいと思っている……


 思っているのに。

 本気で思っているのに……姫の宮(ここ)の皆は、本当に自分をみとめているのか?


 ……いつも監視ばかりで、助けに来てくれなかった。

 復讐者と言った欧州ギルドの魔術師の時は、相手が見下してくれてたから勝てた。

 学校の時に、死にかけた時は劉さんだった。


 いつも、確かに監視の目はあった。


 監視するだけで、岩倉さんに聞いてもはぐらかされてばかりで答えてはくれなかった。 

 自分は、いつ死んでも良い「替えの利く部品(スペアパーツ)」でしかないのか。





 終の中に……姫の宮に対して、小さな疑惑と不信感の芽が芽生えた瞬間だった。








 終がベッドから起きると、1体の式神を召喚した。


「如何様なご命令で……」

 その式神が片膝をついて、恭しく頭を下げた。


「今日から、剣の戦い方を教えてほしい……」

 終がそう言うと、豪快に笑いながら言った。

「主、その気持ちは誠か……?」

「もちろん。みんなを束ねられる者でありたい」

 そして、終は言い切るように宣言した。


「優しさだけでは戦には勝てない。技量と戦術、そして見極めを極めたい」


 終の言葉に、式神が答えた。

「まずは、相手の力を知ることです。そして、その戦に最善なものを見極めることです」

 終の前に、式神が刀を差し出した。


「これで我に切りかかって下され。我はこれで十分なゆえに……」

 そう言って小枝を1本、終に向け構えた。


「これでも……力差がありそうだな」

 終が苦笑いしながら剣を構え、式神に向かって攻撃を始めた。





「主よ。まだまだこれから……強くなりなされ」


 式神との模擬戦は深夜まで続いた。

この作品は、基本的に火曜、金曜にアップしていきます。よろしくお願いします♪


次回は、10月7日0時にアップ予定です。


乞うご期待ください

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