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これは“世界”を救う物語。  作者: 高平めめこ
召喚された十三人の勇者
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0-3-26 上位者の戦い

 戦闘はそこから始まり、クローディアさんを起点に円を描く様に戦いが展開されました。


 やがてリズムを覚えたのかクローディアさんが引き付けた隙を突いて一人の騎士が斬りかかりました。その行動は想定外だったのかクローディアさんが制止の声を上げましたが、ウィルスから立ち昇る魔力に当てられた瞬間に突如苦しみ出して息絶えてしまいました。

 その後は近寄る騎士は――というか動ける騎士は居らず、ウィルスに対応出来る様に陣形を組んで私達勇者を後方に配置してくれました。


「まさか魔力そのものが毒性を有しているとは……」

「クハッ、知らなかったか?」

「いえ、文献の通りです」


 クローディアさんが移動しながら弾幕を張り、ウィルスを追い詰める。意図的に作られた隙間を縫って動く彼目掛けて放たれる『魔力砲』はどれだけの魔力が込められているのか想像すらつかない。


「流石旧時代の遺物ですね。恐ろしく硬い」

「其方も代を重ねただけはある。クハッ、勝てぬと思わされたのは初めてだ。我と相対したクローディアは死闘の末だっだ、お主はまだ余力があるのだろう? どうしたものか」

「大人しく消えて頂ければ」

「それではつまらん。『忌むべき害悪』として名を挙げた我には相応しく無い幕引きだ」

「貴方を含めて歴代のクローディアは『十人の化物』と呼称する存在を魔導書に記しています。そしてその対処方法も」


 クローディアさんが結界を張るとウィルスはまた一つ成程と呟いたのが見えました。あの男は負けると分かっていても尚戦いを辞めない。

 私からは狂ってるという風にしか見えません。アレは人の範疇を超えた何者かなのでしょう。理解することすら出来ない。

 何が彼をそこまで突き動かすのか。何故躊躇いも無く人を殺める事が出来るのか。流石の私も黒の魔人に対する圧倒的な激情以外で人を殺そうなどとは思わない。“死神”となった事でより死に対して深い知慧を得た私だから、人を殺める事に思う所はある。


「『離酸』」

「『収束する風の流れ』」


 再び最初に放った毒で此方を攻撃しようとしたウィルスは、クローディアさんの魔術によって阻まれた。その全てが彼に対して集められ、自らの毒を喰らうその姿に騎士達は倒したと勘違いしているけれど、私にはその中で妖しく光る魔力が見える。彼には恐らく一切の毒が通用しない。


「これが対処方か? 我に毒は通じ――」

「その毒は引火する事で爆発する事は知れています」

「な――」

「『炎の魔力の矢』」


 その瞬間、クローディアさんが張った結界の内部で大きな爆発が起こりました。クローディアさん自体は魔力障壁で守られたのか無傷ですが、煙の晴れた其処には焼け焦げたウィルスが立っていました。

 一瞬でも目を離せば此方にまで被害が飛んで来そうな戦いです。油断は禁物、それはクローディアさんも持っている意識なのかウィルスの姿を見るなら四肢に魔力の矢を放って動きに制限を掛けました。


「これで動けませんね」

「この程度で我を封じたつもりか?」

「動けますか?」

「動けないな。だが、殺さぬ所が甘いな」


 ウィルスはその魔力を薄く広げると此方にまでその毒性を有した魔力が届く。後方に居る私達はなんとかその範囲外出ていますが、内側にいる騎士の人達は体調が崩れその場で膝をつく。七騎士の二人は魔力で抵抗しているからか影響はない。


「クハッ、ほぅれ、味方が倒れていくぞ。強き者や、主が群れる意味はあるまいて」

「流石の私でも一人でなんでも出来る訳ではありません。それに、貴方を倒す方法は既に組み立ててあります。『黄泉醜女』」


 クローディアさんの影からクローディアさんの形をした人型が生み出されウィルスに向かって駆け出す。四肢を魔力の矢で貫かれた彼は抵抗する事なくその身を殴り続けられている。

 私の知識がアレは『魔術』ではないと教えてくる。ならアレは一体どんな力なのでしょうか。

 四肢を貫く魔術を腐食させて拘束を解いたウィルスは痛みを無視出来るのかそのまま黄泉醜女を殴り消していた。


「『桃源郷』の効果ですか……」


 クローディアさんは分かっているみたいだけど、私には理解出来ない。桃源郷とはどんな力なのか。魔術ではない力が飛び交って、こっちの頭は追いつけない。、


「流石に回復は行うとも。『回帰』」


 全てのダメージを無くして元に戻す最上位の魔術をウィルスが唱えて戦況は元に戻ったかの様に見えましたが、黒騎士さんと青騎士さんが斬りかかり、素手で受け止めた隙に再びクローディアさんが魔術で攻撃する。

 青騎士さんの分身は紫色に染まっていき、黒騎士さんのマリオネットも黒く侵食されているから長時間触れているのは危険だと外から見て分かる。だから私も動いた。


「『強い魔力の矢』」

「『炎の魔力の矢』」

「『風の魔力の矢』」


 三人も今が動く時と判断したのか一切に魔術を放つ。

 太く力強い魔術の影に隠れてデスサイズを握る私はその刃をウィルスに突き立て様としましたが、魔力の変動を見て一旦距離を取る。


 三本の魔術に貫かれ、私達が押している様に見える戦況。

 だけどボロボロなウィルスが好機と捉えたのは今だった。


「我は『忌むべき害悪』。その名に相応しく、散り際も相応のモノとして見せよう」


 比較的遠くに避難していた私達に向けられた魔力。クローディアさんが庇おうとするも、自然と私達とクローディアさんで挟み込む形になった今、クローディアさんは間に合わない。


「『黒死』」


 無色透明な何かがウィルスから発せられる。魔力が見える様になった私には丼鼠(どぶねずみ)な煙が此方に立ち込めて来るのが見えたから魔力障壁を張ったが、それを通過して迫ってくる。


「みなさん逃げて下さい!」


 私とクローディアさんの声が重なる。

 私以外には見えていない丼鼠の煙に触れると騎士達は苦しみの声を上げてその場に倒れ込む。助けたくてもアレは濃密な“死”の気配が漂っており、私が幾ら強くなったとはいえ助けてあげられない。

 七騎士の二人は魔力を感知しているのか、風を作り出して煙から逃れている。私を除いたチームの三人は比較的速やかに後方へと駆けられた為被害はないけど、殆どの騎士はやられてしまった。


「クハハハッ、楽しかったぞ。さようならだ」

「『重箱』」


 クローディアさんが漆黒の箱をウィルスに向けて展開すると、後には何も残されず全てが消え去っていました。地面も四角くくり抜かれており、範囲内の物質を消し去る魔術なのだろうと当りを付ける。


「全て消えましたか……魂の名残からして、黒の魔人が関わっていますね。騎士の被害状況は?」

「全滅だ。いや、まだ一人残ってるな。だがもう駄目だ。触れてる」

「……そうですか」


 ウィルスという謎の存在の所為で私達の初日の行動は最悪のスタートとなった。黒の魔人についても調べなくてはならないから、七騎士の二人と私達勇者で地道に探っていくしかない

 そう思っていた時、クローディアさんの懐から一枚の紙が飛び出す。内容までは見えなかったけれど、顔付きがいつもと違う。


「全員アテナの王城に帰還しましょう」

「何があった?」

「南の帝国ヘルメスが滅びました。観測者によると黒の魔人による可能性が高いとか」

「ヘルメスが滅んだ!? それじゃあウィルスの解放に黒の魔人の関わりは無い――」

「転移魔術があれば直ぐに飛べます。さて、これから作戦を練らなくてはなりませんね。なんせ相手は、国を滅ぼせる力を持っているのですから」


 クローディアさんが騎士達の死体を集めて丁重に弔った後、最後まで苦しむ騎士を助ける為に解毒を試みたクローディアさんでしたが、助ける事は出来ませんでした。私には彼は死ぬと分かってしまったから、私は動かなかった。

 最後の騎士を看取った後、転移魔術で私達勇者と七騎士、クローディアさんは王城へと転移しました。

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