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これは“世界”を救う物語。  作者: 高平めめこ
召喚された十三人の勇者
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0-3-25 哨戒と戦い

 混合訓練から二週間が経ち、遂に私達のチームが七騎士の見回りに加わる日がやってきました。哨戒する騎士は青騎士さんと黒騎士さんで変わりなく、各国の騎士が集められているのか鎧の形態はかなり違う。いかにも騎士らしい鎧の人もいれば、丸くてぽっちゃりした見た目の鎧の人もいる。

 あまり交流はしないのか普通の騎士さんは私達勇者とは距離を置いている雰囲気だ。世界最強の一角『七騎士』と異世界からの救世主『勇者』、一般人の枠を出ないただの強い騎士では話しかけるのも憚れるのだろうか。


「ふゆみん、あっちに挨拶はいらないの?」

「したくてもさせてくれそうな空気じゃないので、必要になったら会話しましょう。不必要な接触は、向こうも望んでいないと思います」

「そっかー。あのタマネギみたいな鎧の人は話してみたかったんだけどなぁ。残念」


 秋音ちゃんはこの世界の人と直ぐに仲良くなる。

 お城のメイドさんとも仲良くなり、私とは別の方法で厨房の人達とも仲良くなった。訓練ばかりに目が行きがちな勇者だけど、休む時はきちんと休んでいる。私なんかはお菓子を作ってはクラスの女子に振る舞ったりしています。

 これが中々好評で、この世界のというか、アテナ王国では伝統的な「シュエット」というお菓子も日本人にはかなり受けがよく、クッキーの様な食感はリピートを求める声も少なくありません。


 話は戻して。

 私達はクローディアさんの転移魔術でこの地へ飛ばされて、七騎士と騎士さん方と顔を合わせた、というのが現状です。まだ此処に来てから時間は経っておらず、先に帰ったクラスメイトに労いの言葉を掛けたのも記憶に新しいです。


「騎士諸君、これが最後の勇者達だ。構成としては魔術を得意とする者が多い。忌み名狩りでは良く役に立ってくれるだろう」


 黒騎士さんが私達の事を簡単に告げると此方に近寄ってくる。


「フユミ、まさかリーダーに選任されるとはな。フユミを除けば主に遠距離が得意な構成は騎士達にとって戦闘を楽に進める良い構成だろう」

「行方くんのお陰で仲の良い人と組めただけですけどね」

「良い連携は仲の良さも必要だ。間違っているとは思っていない」


 黒騎士さんに一応認められたらしいので私達は騎士さん達に囲まれる陣形で行動を開始しました。私、秋音ちゃん、真紀ちゃん、濃松さんの中では唯一直接戦闘用の武器を持つ私は先頭を歩く騎士さんを補助する右斜め後ろに位置している。その近くに黒騎士さん、後方を守る為に青騎士さんが配置されている。

 戦闘によっては散開したりもするみたいですけど、これが移動時の基本的な陣形となるそうです。

 騎士一人でも長年の鍛錬によって鍛えられた力は侮れず、一人で大抵の忌み名と呼ばれる存在は対処でき、三人も居れば余裕を持って生捕りにする事も出来ると言われている。尤も、この騎士の戦力は最大国家であるアテナ王国の騎士に当て嵌めたモノで、他の国の騎士はそんな存在ではないらしい。


 忌み名が目撃されたという証言から付近の捜索を各国の騎士を寄せ集めて行っているのは、それだけ黒の魔人を危険視しているからだそうです。

 忌み名は忌み名で繋がりを持つ。

 それは自然と起きる事であり、追われる身同士で仲良くなるそうです。その為現在活動を控えている黒の魔人について少しでも情報を得られる様に忌み名を狩り、早期に潰すというのが所謂首脳陣の考えらしいです。


「……生活の痕跡があります。まだ新しい。近くにいるかもしれません」

「総員戦闘態勢を取っておく様に。忌み名を狩るぞ」


 先頭に立つ騎士さんがしきりにその場を確認しており、どこに向かったのかを推測してその方向へ歩みを進める。

 すると滝の流れ落ちる音が近づき、黒騎士さんが前に立って滝を見つめる。私も滝の中央を良く見てみると、何かしらの存在の魔力を視認出来た。徐々に膨れ上がり、一点に集中する魔力の流れは明らかに此方に気付いている証拠でしょう。


「あれは――」

「総員防御態勢! 勇者は魔力障壁を張れ!!」


 言われるがままに全員が行動する。騎士達は盾を構えて隙間を埋める陣形を取っており、その中に収められた勇者――私達は魔力障壁を展開出来るだけ展開して来るであろう衝撃に備える。

 魔力障壁の前にはかつて私に見せたマリオネットを展開して、青騎士さんは細身の騎士の様な存在を横に並べている。やはり七騎士はそれぞれが特異な力を持っていると見て良いでしょうね。どうやったらあんな技を開発出来るのでしょうか。


 滝から水を伴う爆撃が発生する。


 衝撃波だけでもかなりのモノで、展開していた魔力障壁越しにその威力が伝わってくるが、殆どの衝撃は七騎士の二人が防いでくれたみたいです。滝に繋がる川も干上がっており、その威力がどれほどのモノなのかを窺わせる。


「気を付けろ……アレは、忌み名じゃない」


 滝はやがて流れを創り、再び水が溜まり始める。

 そこから出てきたのは上半身裸の短髪の男性。下の履き物は所々朽ちているが、何とかズボンとして機能している。ダメージというには些かダメージが過ぎる。

 容姿は江戸紫な髪に、濃いクマ、痩躯な身体は容易く折れてしまいそう。苛烈に立ち昇る紫の魔力が無ければ貧困な男性という印象だっただろう。


「クハッ、クハハハッ! どれだけ封印されていたかなぞ忘れたが、クローディアァ……我を封ずるとは面白い者よ。そして、あの小娘。既にいないが我の封印を解くとは、奴も面白い存在よ」

「何者だ」

「おん? おお、人か。我は――そうだな『忌むべき害悪』ウィルスといえば通じるだろうか」


 その一言で七騎士の二人が同じ動作をする。


『伝令、直ちにクローディアを呼べ』


 身体に隠されて向こうからは見えないであろう魔力文字。直ぐに霧散したソレを見て一番後ろの騎士が羊皮紙に何かを書くとクローディアさんがその場に現れる。

 恐らく伝令用の紙で、今喋った内容をクローディアさんが持つ対となる紙に転写させているのだろう。それにしてもなんだか物騒な肩書きが聞こえた。忌むべき害悪、この世界について色々と学んだけれど該当する知識はない。


「貴方がウィルスですか。思ったより弱そうな見た目をしていますね」

「おん? お前は誰ぞ」

「私は23代目クローディアです。先代達が名を残した所謂凍結案件の一人が生きているとは思いませんでしたね」

「確か我を封じたのは5代目だったかな? 成程成程、クローディアは続いていたか……成程」


 顎をさすって得心する。


「成程」


 しきりに成程と呟くウィルスという存在は、何度目かの得心で殺意を此方に向けてくる。“死神”の私だから余計に分かる純然な殺意。これだけの殺意を飛ばせる存在が弱い訳がない。


「ならば、殺して確かめよう。取り巻きは厄介だ……『離酸(りさん)』」


 黄と紫の混じった煙が勢い良く撒き散らされると、それに触れた何人かの騎士が苦しみ始める。色からして毒なのだろう。金属の鎧は蝕まれており、そこから覗く肌は腐っていた。

 七騎士二人は即座に回避行動に移っており、事なきを得ており、私達も魔力障壁を展開してこれ以上蝕まれない様にした。

 クローディアさんは煙の中にいるけれど、ある程度の毒には耐性があるのか涼しげな顔をしていたが、杖を構える。


「『不蝕の身体』」


 名前からして毒への耐性を高める魔術なんだと思った。


「遺物には退席願いましょうか」


 クローディアさんが杖を縦に振ると無数の魔術が飛び、ウィルスを殺しにかかる。だけど、そんな魔術の中でもあの鋭く冷たい殺意は消えていない。寧ろより鋭敏に研ぎ澄まされている気がする。


「クハッ、この程度か?」

「まさか」


 クローディアさんは今の世界で最も魔術に秀でた存在。

 扱えぬ魔術などなく、杖の一振りで無数の魔術が飛んで行くが、ウィルスは周囲の僅かな水を操ってその悉くを防いでみせた。


「水を操るとは聞いていませんでしたね」

「我も今初めてやったからな。『逆聖鈴(さかせいりん)』」


 今度は足元に溜まる水を青色に染めてクローディアさんへと放出する。魔力障壁に阻まれたソレは地面に落ちると地面から嫌な匂いのする煙を出して地面を溶かし始める。


「我に構ってていいのかや? 今頃あの小娘が小国を潰しているだろうよ」

「貴方を解放した存在……殺して魂に聞くとしましょう」


 クローディアさんが空間が歪む程の魔力を噴出させる。こんなクローディアさんを見たのは初めてで、そしてどれだけこの人が強いのか底が知れなくなる。“完成した存在”となった私でも勝てそうにない。やっぱりこの人はみんなに安心感を与えてくれる。


 そう思った時。


「そんな事をするな。我もつられて、昂ってしまうだろう?」


 クローディアさんには及ばないものの、濃密な殺意に塗れた毒々しい魔力が噴き上げられた。

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