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これは“世界”を救う物語。  作者: 高平めめこ
召喚された十三人の勇者
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0-3-22 戦闘開始

 一戦目の対戦相手である本城くん、秋音ちゃん、吉良々さんと、審判役の赤騎士さんを交えて相対する。

 向こうは本城くんを前に出して、残った二人で後方支援をする形であり、此方の読みが当たった形となる。

 此方も当初の予定通り行方くんを後ろに置いて私と須藤くんで前衛を担う。私はデスサイズを顕現させて戦闘態勢を取り、須藤くんも既に剣を抜いている。本城くんも剣だけど、鞘から抜いてはいない。


 今更だけど勇者の武具は特注品で、そのどれもが黒竜の魔石を使用した一級品である。王都一と謳われる鍛治職人のドワーフ族の人が打った武具にクローディアさんが直々に付与魔術で強化した金貨が何枚必要になるのか分からない程の高級な品である。

 私だけは自前の武器だけど、みんなが持っているのはそういう強い武器。下手にデスサイズで斬り裂いたら――弁償は一生をかける必要があるかもしれない。だから私は少し重くなるけれど、刃を潰したデスサイズを顕現させている。一応そんな事も出来るというのは“死神”の知識に有った。


「ふゆみーん、負けないからねー!」

「正義くんと敵かぁ。頑張るよ!」


 女子二人は楽しそうだけど、本城くんの顔は険しい。純粋に強く勇者という言葉が一番しっくりくる須藤くんとまともな戦術は一切使わない読めない行方くんがチームを組めばそんな顔もしてしまうのも頷ける。

 私だったらデスサイズの刃を潰さずに行方くんからダウンさせると思う。全ての訓練をそつなく熟す彼は下手をするとこのクラスで一番厄介な存在かもしれない。須藤くんとかは王道な感じで強くなってるけれど、行方くんだけ成長の仕方が変。


「それじゃあ双方構えて」


 赤騎士さんがその場から離れる。


「初め!」


 その合図で秋音ちゃんと吉良々さんから無数の魔術が飛んでくる。魔力消費の少ない『魔力の矢』な辺り次の戦いを見越していると分かる。だけど、私達を倒すのにその程度で事足りると思われるのは癪だ。

 迎撃しようとしたら前衛の私達に当りそうな全ての魔術が解除される。この現象は取得難度の高い反魔術によるもの。やったのは当然私達の後衛、行方くんだ。


「うーー! 行方くんやるねぇ!」


 秋音ちゃんが吠えると吉良々さんと共同で魔術を発動させようとしている。多少溜めがいるであろうその技の間に本城くんを狙う。


「正義!」

「俺だけじゃないぞ尊」

「厄介だな!」


 須藤くんの一撃が終わったら私が一撃を入れる。

 繰り返す事十と数回。本城くんのスタミナ切れを狙うが、中々どうしてしぶといもので息すら乱さない。何かカラクリがありそうだけど……もしかしてアレかな。


「須藤くん、任せるよ」

「分かった」


 その場を離れようと大きくデスサイズを振って本城くんを弾くも、その場に留まり私の事を集中して習ってくる。須藤くんは気づいていないのか秋音ちゃんと吉良々さんの魔術に向かおうとしないし、それに本城くんは上手いこと私と須藤くんが重なる様に立ち回ってくる。


「そんな簡単に行かせると思うな、よ!」

「それは、残念ですね」


 本城くんの動きを止めるには行方くんと須藤くんの気付きが重要となってきますが、須藤くんは私と本城くんの隙間を伺って気付いていないし、行方くんは二対一の魔術戦を強いられているから中々近づかないでいる。少しずつ距離を詰めている所を見るに、こっちの事を把握している可能性が高い。


「よそ見とは余裕だな!」


 本城くんの本気の一撃が私のデスサイズに当り、弾かれる。

 身体がもっていかれる程の衝撃だが、それでいい。


「それじゃあ須藤くんにお任せしますね」


 弾かれる衝撃を利用してその場から離脱して行方くんの近くに寄る。“死神”としての力を使えば一瞬で終わるけれど、それでは向こうの成長には繋がらない。これはあくまで訓練で、お互いに高め合うのが目的だ。

 気配を殺して二人の背後を取っては、主旨に反する。


「四季さん、こっちに来なくても――」

「あの二人の共同魔術を破壊しに来ました。行方くんも前衛の様子を察して戦線を上げているんですよね?」

「須藤くんは気付いてなさそうだから、四季さんが気付いたんだ。普通戦う相手の事なんて観察する?」

「私達を相手にして息を切らさない時点でおかしいと思いましたよ」

「あはは、僕もあの魔術からなんにもこっちに発射されないからおかしいと思ったんだ。やっぱり体力の外部バッテリーだったんだね」


 飛来する魔術の悉くを反魔術で相殺する行方くんは悠々と歩いて秋音ちゃんと吉良々さんに近づく。その距離はあと30メートルもない。飛来する魔術はその全てが基礎魔術とはいえ、これだけの量を消して問題無いのだろうか。少し心配になる。


 私もデスサイズで魔術を弾いており、これは決着ももうすぐだろう。あの二人が共同した魔術に対して何かしらの小細工を込めているとは思えない。

 やがてその距離も詰まり、秋音ちゃんと吉良々さんが目の前というところまでくる。二人が逃げないのは魔術を維持する為だろう。恐らく拘束してもその場から魔力を供給出来るのかもしれない。


「大人しく捕まってくれるかな?」


 行方くんが拘束系統の魔術を掛けながら二人に詰め寄る。


「くっ」

「むぅ」


 良く見てみると、やはり魔力は共同して作られた魔術に向かっており、この二人はまだ諦めた訳ではないらしい。ならば早々に諦めてもらうのが手っ取り早い。

 デスサイズを一度しまい、再び顕現させる。今度はきちんと刃がある状態であり、私は一振りすると魔術が瓦解する。何が起きたのか分からないという顔をした二人だが、やった事は簡単で、死を与えたにすぎない。


「ほんじょーくーん! こーさんしよー!」

「須藤くんだけに注意してたけど、二人とも強いね。くやしー」


 『拡声』で大きくなった秋音ちゃんの声が届いたのか二人の動きは止まり、此方へやってくる。


「ごめんね本城くん、やられちゃった」

「気にしないでくれ。どうせ俺もやられていたしな」


 向こうは向こうで話しており、行方くんも赤騎士さんが頷くのを見てから拘束魔術を解いて二人を解放した。何も判断が下されていない状態で勝手に解除してどんでん返しなんて事もある。

 もしそうなっていたら私は一度デスサイズを戻さなくては殺してしまうから非常に面倒な事になっていただろう。拘束は戦闘に対して冷静な行方くんだから任せる事の出来る役割とも言える。


「須藤くんもお疲れ様。なんか違和感とか感じなかった?」

「いや、全然。まさか咲菜と秋音の両方を鎮めないといけないとは思わなかった」


 これだ。

 須藤くんは強いけど、あまり搦手というか、何かしらの技が掛けられている戦法には滅法弱い。学んではいる筈だし、ダンジョンも攻略したのに未だにこの頭お花畑だから足下を掬われやすい。

 それでも男子の中で一番強いんだから、格別な強さを持っているのは事実だ。今回も無限体力な本城くん相手に同等か、むしろまだまだ余力を残して戦闘を終えている。


「まだ向こうは戦闘――いや、終わったな。反省すべき点はきちんと覚えておく様に。セイギのチームはこれといって反省もないかもしれないけどね」


 そう言うと赤騎士さんは一番のチームが移動する様に声を掛ける。向こうからは三番のチームがやってくる。本城くん達が四人チームの魔力をかなり消耗させてくれる事を願っておこう。

 次の相手は紋土くん達だ。やってくるとやっぱり須藤くんが一番の標的なのか紋土くんはあからさまに須藤くんの事を睨んでいる。米俵くんは大人しい性格な人だからそんな事はしないけど、その笑みはちょっと怖い。加祝さんは仲間の紋土くんに若干怯えている気がする。


「後の事は考えねぇ! 須藤! 手前ェをぶっ潰す!!」

「その感情は黒の魔人に向けてくれないか? 俺たちは仲間じゃないか」

「うるせぇ! 黒の魔人はどうせ倒せんだろ。それなら今の内にお前を倒して俺が一番だって――」

「それなら冬美さんを倒さないとだな」

「――ッ!!」


 勢い良く此方を睨んでくる。

 やめてほしい。

 なんで須藤くんはそこで私の名前を出してしまうのか。そんなんだから吉良々さんの好意に気付けないんだと思う。


「四季ィ……俺ァ女を殴る趣味はねぇんだが、今回は勝たせてもらうぞ」

「情報与えちゃうけど私の立ち位置喋ってもいい?」

「いいんじゃないかな。四季さんが後衛ってのは向こうも驚く――おっと、僕が喋っちゃったぜ」


 顔合わせが済んだと判断したのか赤騎士さんは五分の休憩と作戦会議の時間を用意した。向こうからは戦闘の音がさっきから聞こえていたから、どうなるのかとヒヤヒヤしていた所だ。


「何か話す事あるかな?」

「特にないな。さっき話した通りでいいと思うよ」

「二人とも頑張ってね」


 五分とはあっという間で、休憩は少し出来た程度でもう時間が来てしまった。私の補助がどこまで有効かは分からないけれど、出来る事はちゃんとやろう。

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