表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これは“世界”を救う物語。  作者: 高平めめこ
召喚された十三人の勇者
90/260

0-3-20 神域に迫る

 ダンジョン攻略は全員がつつがなく終わらせ、いつも通りの基礎訓練が始まっている。黒の魔人の動向は掴めておらず、目立った被害も無く七騎士もクローディアさんも困っているみたい。

 そして私は現在クローディアさんと二人で魔術協会の地下室へとやってきていた。理由は神域にという技術を身につけたと言っただけ。クローディアさんのお陰で答えが出せたからそのささやかなお礼として報告したらかなり食いついて来た。


 話を聞いてみると夜黒くんもこの地下室には何度も来ているみたいで、色々やったそうだ。その色々を聞きたいのだけれど、クローディアさんは頑なにそれだけは教えてくれなかった。雰囲気からやましい事では無さそうだけど何なのかとても気になりますね。


「本当なら冬美さんがダンジョン攻略し終えた時には呼ぼうと思ったんですけど、中々タイミングが合わず、すみませんね」

「いえ、あの、それで調べる事って……」

「神域という技術についてです。私と夜黒さんは体験しましたが、どういうモノなのか解明するには至ってませんからね。もし良ければ披露してもらいたいのです。被験体としてゴブリンを用意しておいたので、効果はそちらで見させて頂きます」

「……それじゃあ私に掴まってて下さい。効果は、後で説明するので」

「はい、わかりました」


 クローディアさんに手を差し出すと大人しく手を握ってくるが、その顔は未知を知れる事にはしゃぐ子供みたいだった。


 私の死獄楽々首狩絢爛は指定した存在の首を無制限に斬り落としてその身体と頭部を晒すという神域だが、念の為私の手を握ってもらっている。対象を取らなければただの濡羽色の空間だけど、私の一部としてクローディアさんを認識した方が安全性は増す。


「神域展開」


 現在位置の私を起点に三メートル程度の神域を展開する。

 どのくらいの距離までこの神域を展開出来るのかは分からない――凡そ一キロ位なら出来そうではある――けれど、小さくする事は出来る。

 広げられた空間にクローディアさんは腕を伸ばして何かを確認する様に手を閉じたり開いたりする。


「冬美さんが動くとこの神域も動くのですか?」

「いえ、今回はクローディアさんが色々調べると思って今の位置を起点に展開しています。通常神域は内側から破る事は出来ない造りになっているみたいです」

「成程。少し離れても良いですか?」

「え……はい、良いですよ」


 そう言うとクローディアさんは私の手を離してその場でくるりと回る。屈伸をしたり、浮遊したりと、自由に動き回る事数分。


「魔力も動きも阻害されないんですねぇ。これだけ黒い空間なのに視界も良好。冬美さんの神域がそうなだけなのか……エスグリミスタの神域も運動及び魔術に干渉するタイプではおりませんでしたね」


 クローディアさんがぶつぶつと何かを言っているが、取り敢えず神域は解除する。何かの拍子でクローディアさんを殺したら大変じゃ済まない。クローディアさんは魔術による何かしらの演算装置みたいなモノ――魔力で編まれたコンピューターの様な物――を展開して、私の神域の一部をその場に箱の様な物の中に押し留めている。そんな魔術もあるのかと感心する。この人はもう“魔法”に至っていてもおかしくないのに、“魔法”はどういう技術なんだろうか。


 する事もないのでこれから殺されるゴブリンでも観察しようかと思ったらクローディアさんが解析を終えたのか呼び掛けてきた。


「いや〜、これは私達普通の人類種ではどうしようもない代物ですね。使われたらお仕舞い。あの時は運が良かったんですねぇ。もしあの時破壊が遅れていたら今頃私と夜黒さんは廃人か、それに近しいモノになっていたかもしれません」

「なにか分かったんですか?」


 この短時間で解析を終えるなんて、どんな頭をしているんだろうか。魔術を極めると、色々と便利なのは分かるけれど、この速度ははっきり言って不気味だ。

 “完成した存在”について私は何も言及していない。ただ、神域という技術を手に入れたとしか言っていないのに。


「分からないという事が分かりました。この技術は、神域というモノはその名が示す通り正に神の領域。抗うには展開途中で壊すしかありませんね。エスグリミスタの神域が壊せたのは中途半端なモノだったからでしょうね」

「そのエスグリミスタっていうのは……」

「数年前に夜黒さんと一緒に殺した神様ですよ。まさか神様に会える日が来るとは思いませんでしたね。一応コレ秘匿事項なので、内密に」


 人差し指を口に当ててウインクする姿はお茶目な感じだけれど、そんな秘匿すべき事をあっさり語られても困る。、


「さて、次は外から破壊してみようと思います。冬美さんはそのまま適当に神域を広げて下さい。私は全力で壊しに行きますので。そうですねぇ……30分しても壊れないなら解除して下さい」

「わかりました」


 クローディアさんが巨大な砂時計を私に渡す。そして私を起点に神域を展開すると外界の情報が全て遮断される。

 これも一応デメリットとして報告すべきだろうか。でもクローディアさんは神域を使えないから、言う必要までは無さそう。多分今頃は外で魔術を放っているのだろうけれど、何も感じない。

 神域としての強度はその存在に由来するそうだが、エスグリミスタとやらは余程弱っていたのだろう。“完成”して得た知識では基本的に破壊不可能と云われている。


 砂時計の落ちる砂を眺めてぼんやりとしているのも好きだけど、今はこの時間を使って何か出来ないか、頭にある知識を整理しながら考える。

 “完成した存在”はある意味で全知全能。

 その知識は有るが、どうして全知全能になるのかは分からない。そもそも“死神”が全知全能な神様かと言われると微妙なところである。確かに殺し方については無数の知識が流れてきたけれど、それで全知全能と語るには些かお粗末とも言える。

 全知全能の存在などこの世に存在しない。そう思っている私としては“完成した存在”という不可思議な存在を疑いたくなるが、知識を探っていけば確かに個人レベルの事すら知れる。それは閲覧権限が敷かれていない限りは知れるモノで、近々緑騎士さんと銀騎士さんが死ぬ。


 この事実を告げるか、告げないかは自由だ。


 だけど今緑騎士さんと銀騎士さんは黒の魔人を探しており、コンタクトが取れない。クローディアさんならなんとか出来るのかもしれないが、私が伝える事で他の人も巻き込んで死なれたら困る。

 二人を救うか、賭けに出るか。私にはそんな勇気はないし、二人ならこの運命から逃げ切れると信じてこの事は口外しない様に決める。要らぬ混乱を齎すのは秩序を乱しかねない。


 本来の私なら、間違いなく死ぬと言うのでしょう。

 だけどクラスメイト、アルマさん、クローディアさん、黒の魔人については一切知る事が出来ない。みんなについて知れたら言っているのに、知りたいモノが知れないなんて、全知とは程遠い。


 それに私は全能な存在でない。

 確かに殺す事についてはある意味で全能な力を手に入れたかもしれないけれど、この神域は使い方を誤れば仲間すら殺しかねない。私に出来るのはただ屍を積み上げる事だけ。

 夜黒くんに会えない時点で全能な存在なんかではない。人一人を蘇らせる事が出来なくて、何が全知全能な存在なのだろうか。


 そうやって考えていると、砂が全て落ちていた事に気付く。

 神域を解除するとクローディアさんは神域に手を添えていたのか空中に手を置いた姿勢を取っていた。


「何か考え事でもしていたのですか?」

「えっと、はい、そんなところです」

「魔力すら遮断するんですね。『念話』を試しても通じないとは思いませんでした」

「結構時間過ぎてましたか?」

「いえ一、二分といった所ですかね。さあ、次はどんな効果なのか見させて頂きますよ。これで終わりですので、冬美さんは終わったら此処からの出方を教えますね」


 何か特別な出方でもあるのだろか。


 取り敢えず今は最後の仕事だ。

 可哀想な気もするけれど、この檻に入れられたゴブリン一体をこれから殺す。クローディアさんが檻を壊すとその強さに恐れているのかゴブリンは腰を抜かしてその場にへたり込んでいる。

 そんな戦意のない相手を殺すのは気が引ける。だけどこれも黒の魔人を倒すのに必要になるかもしれないのだと思えば、醜悪なゴブリン一匹を殺す事に忌避感は覚えない。


「神域展開」


 クローディアさんは対象外にしてゴブリンを殺す為に神域を広げる。今回は地面が有限な魔術協会のものだから、地面すら濡羽色の空間に染めていく。その光景に恐怖したのかゴブリンは泣いている様にも見える。

 今の私は機械的な感情が殆ど。“完成した存在”となってからは黒の魔人に対する殺意しか明確な感情と呼べるモノもなく、少し非情な存在になったと思う。


 だから、せめて楽に。


「死獄楽々首狩絢爛」


 ゴブリンの首が不可視不可避の一撃で切断され、濡羽色の槍が倒れる前の身体と切り離された頭部を貫く。

 神域を解除しても濡羽色の槍はそのまま残り、ゴブリンの死体のオブジェクトが出来上がる。


「話で聞いた以上に強力な技ですね。もしかすると冬美さんには同行してもらうかもしれませんね」

「え?」

「ああ、いえ、なんでもないです。それよりも此処の出方はあっちの奥に隠し扉があるのでそこから出ます。着いて来て下さい」


 中々出にくいというか、なんでこんな造りにしたのか問いたくなる。仮眠室に出て窓を見ると太陽はまだ真上に到達しておらず、これからどうしようか悩んでしまう。


「私は少し検分しますので、冬美さんは御自由にお過ごし下さいね」


 そう言われても困る……そういえば今日は黒騎士さんも体術訓練に参加しているらしいから顔を出すのも悪くない。途中参加だけど、今日については知らせてあるから問題はなさそう。少し体を動かしてスッキリしようかな。

ブックマーク、感想、評価の方よろしくお願いします。

明日の投稿はお休みさせて頂きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ