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これは“世界”を救う物語。  作者: 高平めめこ
召喚された十三人の勇者
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0-3-17 戦いは避けられない

 メルリヌスと名乗った存在からは底の知れない魔力が溢れており、魔力が尽きた隙を着くなんて事は出来そうにありませんね。私の方が気を抜けば先に動けなくなりそうです。

 幾ら魔力を活力に出来るとはいえ、運動量が増えればその分魔力も多く消費する。さっきの唄う岩蛙との戦いで消費した魔力があれば、と思いますが、無いものはねだれませんね。


「“伸びる石”」


 メルリヌスが言葉を放ち杖を振るうと彼の足元から床の石材が複数、此方に向かって伸びてくる。石の先端は人間の握り拳の様になっており、此方を攻撃する意志がありありと伝わってくる。

 石の連撃を躱してメルリヌスに向かって指輪を射出するも、魔力障壁の様なモノに阻まれ指輪は空中で停止する。そのまま指輪を放置してメルリヌス本体へ殴りに掛かるが、浮遊されて避けられる。鎖を伸ばしても不可視の力に弾かれ、引き摺り落とす事が叶わない。


 ここで自分も浮遊すれば――ダメだ。


 二日と数時間を掛けて動くなら魔力は無駄に出来ない。何か別の方法で空に浮く事が出来れば……。


「力を使え。その(ころも)は既に目覚めている筈だ」


 衣……この服の事なのは間違いないと思いますが、()()()()()()()()とはどういう――此処に来た時の事でしょうか。確かに翼みたいになっていましたね。

 でもあれは意識せずに行われた事。この空間に来た時に何かに干渉されたのか、それとも何かに目覚めたのか。分かりませんが、一応記憶はしています。翼のイメージをすれば、背中の繊維が翼の形へと変わっていく。

 身体が浮かぶ感覚。

 正面の防御はまだ繊維に余裕があるから大丈夫だと思います。背後も翼で、腰あたりは薄いですが、なんとか守れていますし。


 これで、空中戦も出来そうですね。

 空中に浮かびメルリヌスへと距離を詰める。

 左腕の繊維を導入して右手にブレードを作り、そのまま振りかぶって石の杖と繊維で出来たブレードがぶつかる。硬さは同じくらいなのかそのまま弾かれる事なく火花が散る。


「そうだ。まだお前は戦えるはずだ」


 杖の先端と繊維のブレードがぶつかる事数回。杖の先端に急激に魔力が溜まり危険だと判断し、一度距離を取る。

 ブレードを見ても刃毀れという概念がないのか綺麗なままであり、まだまだ使えそうではある。けれど、距離を取ったのは正解だったかもしれない。石の短杖からは膨大な魔力によって(かたど)られた剣が顕われる。


「命への恐怖がなければ、覚醒しないと見た」


 そういった彼の斬撃は先程までとは打って変わって早く重いモノとなった。繊維のブレード――漆黒の剣で受けるもその重さに身体が揺らぐ。一撃の重さと速度の変化に戸惑うも、着いていけない速度ではない。

 徐々に押され、地面に到達する。さっきまでの伸びる石とやらの残骸の近くに到達した時、メルリヌスから距離を取る。

 命への恐怖と言った割には、思ってはあれだけど些末なモノだ。


「“枯死(こし)腕風(わんぷう)”」


 そう言って振るわれた右腕から灰色の風が齎される。

 石の残骸と、地面の石が砂へと帰っていく。


 流石の私もそんな害のある風には触れようとも思わない。視覚で見える灰色の部分にその効果があるというのも魔力が視えて分かる。腕で振るっただけの風は進みは穏やかだが、全く穏やかなモノではない。

 地面を駆ける際に背中の翼で速度が上がる様にサポートしてメルリヌスの背後へと回り込み、漆黒の剣で斬り裂こうとした時、メルリヌスの左腕が振るわれる。

 そこからはさっきの灰色の風が噴き出し、私はそこに突っ込む自分を翼の力で抑えてその場から急いで離脱する。


「両腕で使えるとは、卑怯ですよ」

「言っただろう。命への恐怖がなければ、と」


 そこからメルリヌスは魔力の塊を射出し一気に視界が彩り豊かな魔力塊の数々――確か夜黒くんはこういう球の集まりを弾幕と言っていただろうか――に覆われる。色通りなら炎や電撃、氷、毒などの効果が付与されていると見ていいかもしれない。

 あんな石を砂に変える“魔法”を見せて、今更ただの魔力塊による攻撃だとは思えない。


 地面を駆けるだけでは回避できないと踏んで、空へ駆ける。


 繊維を脚に集めると、空中を踏む感覚を覚える。

 一歩で一気に距離を動ける様になった今、この程度の弾幕には当たる気がしない。鎖を展開すれば軌道を変えられる事も分かった。向こうも腕の一振りが鍵になる様に、此方も腕を振るえばどうにかなる。


「“魔法”がこれだけだと思っていないか?」

「……まさか」

「『魔術』を超えた技術が“魔法”であり、その多様性は私でも把握しきれない程だ。“魔法”とは“完成”した技術。“ⅱ”を相手にするのであれば、私を超えなくてはならない。人間はそろそろ眠る時間だろう。今回の契約にお前を殺せという文言はない。あと二日、その力を覚醒させてみせろ」

「へ?」

「私は眠る。夜黒にやられた私と同期しなくては、未だに夢の中の様な感覚だ」


 そう言うとメルリヌスは眠りに就いた。

 黒の外套を布団にして硬い石材の上で胡座をかいて寝初めてしまった。スゥスゥという寝息が聞こえ、私はどうすれば良いのか分からなくなる。この人は敵で、私の命を狙ったのに、こんなにあっさり眠るのはなんでだろうか。

 契約というものが関係しているとは思うが、その詳細までは想像ができない。特別な条件でこうなる的な事を言っていた気がするから、緩い制約なのだろうか。


「私も、少し眠りますかね」


 相手が寝ては修練も何もない。

 向こうより早く起きて準備するしかありませんね。

 眠るのは五時間くらいで良いでしょうか。七時間も眠る必要はない気がするので五時間にしましょう。それだけ眠れば、魔力も充分回復するでしょうし。


 それでは、おやすみなさい。







 目が覚めると彼、メルリヌスさんは眠っていました。

 私を殺そうとしてきますが、鍛えてくれる事に変わりはないので一応心の中では敬称を着けようと思ったのです。敵と言うには些か毒気が抜けるというか。

 黒騎士さん達は今日で二十五階層まで進むと思われます。メルリヌスさんの話をしんじるのであれば、三人がダンジョンを出るまでがこの戦いの期限。早く起きて欲しい気持ちもあれば、死にたくない気持ちもあります。人間とは、複雑ですね。


「む、先に起きていたのか」

「この力を扱う為には眠ってなんかいられませんからね。早く戦いましょうよ」

「夜黒の魂を少し見たが、冬美()はそんな好戦的な娘だったか?」

「なんでもいいです。さぁ、やりましょう」

「ふむ、仕方ない。今日は私の頭痛が激しいからな。少し敵を変えよう。私の戦い方は昨日の感じだからな。そこまで戦闘を望むならば、良い敵をよういしてやろう」


 立ち上がったメルリヌスさんは石の短杖を軽く構える。


「“進化と完成に至る雛”」


 石の短杖を振るい、言霊を乗せる。

 地面の石材が粘土の様に簡単に形を変えていき、黒竜よりは小さな竜が現れる。確かに竜は私一人では倒すのに苦労する良い敵かもしれない。


「そいつを倒せたら、私が相手をしてやろう」


 石で台座を作ると足を組んで余裕の笑みで、石の短杖を軽く振って座る。引き摺り降ろしたいが、竜を前にそんな事は出来ない。私一人で、この“魔法”による竜を倒せるかは疑問だが、恐らく倒せる程度に調整されている。魔力の量がメルリヌスさんの方が多く、竜にはあまり魔力を渡していない。

 “魔法”による生物が魔力に依存するなら魔力が尽きれば此方の勝利。石を斬る事さえ出来れば、倒せない相手ではなさそう。齋藤くんが欲しいですね。


「ふむ、繊維の扱いに慣れた方がいい」

「グォオオオオオオ!!!」


 簡単に言ってくれる。

 それが出来たら苦労しない。


 竜がその身体をくねらせ、尻尾で此方を攻撃してくる。翼を展開して高速でその場から離れ、空中に逃げる。あの竜に翼はなく、空を対処する方法は、恐らくない。

 尻尾の薙ぎ払いの余波で昨日出来たメルリヌスさんの“伸びる石”の残骸は崩れ去った。あの質量の石が高速で飛んで来たら、骨折では済まない。


 繊維の扱い。

 試して無いのは、繊維の集約。漆黒の剣はただ繊維を伸ばしただけの運用方法。長さもそんなに無く、強度も最低限。


 イメージは重複。

 圧縮させ、繊維を重ね、薄く延ばしていく。

 最低限の服は残して、右腕に全てを集める。


 ――そうだ。


 メルリヌスさんがそう言った気がした。


「名付けるなら、漆黒の刀ですかね……」


 下で睨みつける竜を見て私は、なんだか斬れる気がしてきた。

 この刀は単純に硬さも、切れ味も増している。

 飛翔しながら刀を下に向けて落下する。刺すのは竜の胴体。


「グォオオオオオオ!!!」

「貴方を斬って、メルリヌスと戦います」


 竜の胴体に刺さった漆黒の刀を動かすと石が豆腐の様に簡単に斬れる。半分の長さになった石の竜だが、その身体は崩れていき、石の台座に座るメルリヌスさんを見ると、指が伸ばされる。


「終わってなどいないよ。それは竜種でなく“龍”のなりそこないだ」


 崩れた石が組み上げられ、人の様な形へと変化していく。

 錫色の石材が磨かれ、月白の石材となる。こんな石があんな綺麗な白色を見せるだなんて、思ってもいなかった。

 大きさは二メートルくらいだろうか。石が圧縮されて、さっきよりも硬そうではあるが、漆黒の刀で斬れない相手ではなさそう。


「第二ラウンドですか」


 右腕の刀を構えて龍のなりそこないとやらと相対する。

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