0-3-15 それ行けダンジョン
休憩を取った後十階層に降りるとロポポラという巨大なサボテンみたいな魔物が鎮座していました。
今までは土の地面だったのが急に砂の地面となっており、アレが倒すべき敵だと思われますが、鎮座するサボテンを痛ぶる趣味はありません。縦長にラグビーボールの様な見た目。魔物と認識していなかったらそういう植物だと認識してしまいそうですが、アレも立派な魔物の一種。
此方を認識したのかグルリと回転すると顔が顕になる。吸い込まれそうな漆黒の目と口。目は縦長の楕円、口は円形とどこか愛嬌すら感じさせる造りですね。マスコット的な敵キャラと思えば良いのでしょうか。
魔物とはいえ――そう油断していた時。
ズドドドドドドドドド!!!
ロポポラから無数の針が射出されました。魔力障壁を幾つか展開して防ぎましたが、間に合わず此方に迫る針を齋藤くんが私達を庇う形で刺さってしまいました。よく見てみると針には黄色と緑色の二色の魔力が使われており、ここ最近の訓練での記憶と合致させるに、恐らく麻痺毒だと分かる。
「解毒は……時間に任せてもいいかもしれませんね」
「妙に痺れるのは毒か……四季一人で倒せるか?」
「勿論」
言語魔術でロポポラを焼却する。
可愛らしい見た目でも魔物だという事を思い知らせてくれた良い敵だ。多少時間は使いますが、ボスを倒せたのですから休憩するのも悪くないと思います。
麻痺も回って来たのか齋藤くんがその場にへたり込んでしまいました。
「しひはふよいあ……」
「適材適所ですよ。私には齋藤くんの様な剣術の才はありませんから」
『身体強化』で齋藤くんの事をおんぶして次の十一階層に移る階段で休憩を取る。黄と緑の魔力は次第に薄れているからあと一時間もせずに齋藤くんは回復するでしょう。そしたら目的の十二階層まで進めば今日のノルマはクリアとなりますが、敵が毒を使うとなれば余裕をもって今日中に十三階層までは行きたいところですね。
「今日は余裕をもって十三階層まで進みませんか?」
「私もそう思ってたから、良いと思う」
「ひょうはい」
そういえばさっきは素肌で齋藤くんの事を乗せたんだった。今は服装を素の拘束服みたいな形に戻してるが、なんとも思ってないのか、思わない様にしているのか、齋藤くんは至って真面目な顔つきをしている。夜黒くんに裸を見られた時は余りにも感想が薄かったから私って魅力が無いのかもと思ったけれど、さっきの齋藤くんの赤面を見るに夜黒くんがそういうのに興味が無いだけだったんだろうなぁ。
黒騎士さんは立った姿勢を崩さずに一時間弱を過ごし、休憩をしていた私達はほぼ万全の状態を確保できました。そういえば黒騎士さんが休む姿を見たことない気がします。訓練の時も常に戦っていますし、何か秘訣でもあるんでしょうか。
後で聞くことが増えましたね。私も継戦能力は欲しいので何か方法があるなら是非とも学びたいところです。
続く階層へ向かい、扉を潜る。
十一階層から十二階層までは弱い魔物の群れだったので数匹残して齋藤くんと濃松さんに経験を積ませるいつものやり方で敵を倒していきました。
十三階層もいけそうな雰囲気だったのでそのまま進むとスライムがまた現れたので私の言語魔術を使って焼却しました。色の違いは何か関係があるのでしょうか。この前のはくすんだ黄緑色――青白橡で、今回は綺麗な青色でした。
今日のノルマを達成したので、攻略はここまでにして睡眠を取りますが、念のために用意された見張り時間の合間に黒騎士さんにさっき思った事を聞く事にしました。
「黒騎士さんはずっと休みがないですよね。どうやって維持してるんですか?」
「お前らが戦ってる間は浅く眠ったりしているし、マコトが見張りの時は立って寝ているぞ。勿論いつでも戦える様にしてはいるがな」
「へぇー、そうだったんですかぁ」
黒騎士さんもきちんと休みは摂っているみたいです。齋藤くんが見張りの時に寝てるのは、齋藤くんなら何もしないと思っての事なのだろうか。
確かに彼は女性に積極的なタイプではない。
しかし浅く眠るとはどうやっているのだろうか。眠りをコントロールする方法が聞ければ朝早い訓練にも余裕を持って到着出来そう。
「私、一度寝たら深く眠っちゃうので……浅く眠るコツとかあるんですか?」
「慣れだな」
「慣れですか」
慣れなら仕方ありませんね。
その後は黒騎士さんとは特に会話する事もなく二人が起きてから、続く十四階層へ向かう準備をしました。
今日のノルマは平均通りなら十八階層までですが、二人はどこまで進むと考えているのでしょうか。
「齋藤くんと濃松さんはそれぞれ今日でどのくらい進むか考えてますか?」
「俺としては二十階層まで進んで良いとおもってるんだが、濃松はどうだ?」
「私は特に考えてませんでした……うーん、二十でも良さそうな気はしますね。今日で六階層攻略出来れば後の負担も少なそうですし」
「なら二十だな、四季もそれでいいか?」
「勿論、構いません」
そういう訳で今日は二十階層まで攻略する事になりました。
このダンジョンは深く潜っても敵が強くなるシステムではないらしく、本当にランダムで敵が出ててくる。黒竜やベビモスが印象深いだけで、それ以外は人型の魔物やスライムやロポポラといった特異な魔物くらい。
十四階層。
フレイムトーチと呼ばれる燃える木の棒みたいな敵が十数体出てきたので齋藤くんの無数の斬撃を飛ばす風塵閃と私と濃松さんで的確に敵を射抜いて攻略。
次の階層がボスという事もありポーションで魔力を回復させ、呼吸を整えてから次へと降りました。
十五階層。
出てきたボスは楊梅色の体毛をした翼のあるライオンの様な身体に深緑の蛇の尻尾を持つキマイラ。ライオンの口からは電撃の球が三方向に射出され、蛇の尻尾からは紫色の見るからに毒であろう霧が噴出されました。
三人が分断される形になりましたが、『身体強化』した状態の鎖で雁字搦めにして齋藤くんに尻尾を切断してもらい、ライオンの身体だけにしました。独立しては生きていけないのか蛇はダンジョンに還元されていきました。
尻尾が切断されて怒ったのかキマイラが暴れるので一旦拘束を解除して落ち着いた頃に再び鎖で固めようとしたら、キマイラが空を駆ける様にして移動しながら私に向かって電撃を放って来ました。
「四季!」
「分かってます」
『魔力障壁』を展開してキマイラの攻撃を防ぐ。
「――ッ!」
するとキマイラはそのまま此方へ落下してきました。物理に対しても防御力はありますが、爪を立てられ高度から落下してきた動物を防ぐには一枚の魔力障壁では不安がある為その場から離脱する。
獣の戦い方は全く予想出来ませんね。
図らずも近距離となった事で左腕を縦に振って鎖を展開する。横腹からの拘束にキマイラが抵抗するが、時すでに遅し。
「風刃!」
キマイラの首が裂かれ血が噴出する。
両断出来ないと悟った齋藤くんは刀で斬ったら即座にその場を離れており、返り血を浴びる事はなかった。
「私、活躍してない……」
「濃松さんは後できっと活躍しますよ。それこそ黒竜の時みたいに」
濃松さんが軽く落ち込んでいたのでフォローしておく。
私はまだまだ魔力にも余裕はあるので軽く消耗した齋藤くんが疲労回復のポーションを少し飲む小休止を挟んでから次の階層へ降る。
十六階層。
杖を持ったゴブリンとコボルトの群れが戦っていた。魔物同士で生存圏を賭けた争いがあるとは聞いていたがダンジョンで観れるとは思ってもいなかった。距離を詰めたコボルトが勝利したが満身創痍だった為私の言語魔術で一掃した。
十七階層から十九階層では連続してスライムが出てきました。三体とも色違いで順に赤、橙、洗朱のスライムでした。焼却しようとしたら膨れ上がったので赤系統のスライムには炎が効かないと分かり、雷撃で溶かしました。
核は齋藤くんに切断してもらって、今は今日の目標である二十階層目の扉の前で私が念の為魔力回復のポーションを飲んでいます。
「中々良いペースで進んでいるな」
珍しく黒騎士さんが口出ししてきました。
基本的には私が話しかけるか、若しくは黒竜戦みたいな事がない限り黙って見守っているのに、いきなり褒められてちょっと困惑する。
「フユミの殲滅能力の高さは勿論だが、マコトとチヤのそれに着いていける個人の能力も素晴らしい。多分だが次は蛙だ。お前達なら楽に倒せるだろうな」
「ありがとうございます」
「四季の強さに追いつける様に頑張らないとだな」
濃松さんと齋藤くんが返事をするが、私は黒騎士さんの言った蛙という言葉に今までの知識を掘り起こして物理に強い蛙の魔物の情報を呼び起こす。
何故黒騎士さんがこのタイミングで言ったのか分からないが、きちんとできる限りの対策をしなくてはやられてしまうのは確かだ。気を引き締め直し、二十階層の扉へと向かった。
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