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これは“世界”を救う物語。  作者: 高平めめこ
召喚された十三人の勇者
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0-3-14 降れダンジョン

 一夜を明かし、濃松さんの魔力も完全に戻ったのか元気になっています。齋藤くんも回復したみたいでこれから第六階層の攻略に移行します。今日は十二階層まで攻略出来れば良いと考えて、出来たら十三階層も狙っていこうと話しました。

 流石に同じ敵が現れるとは思えないらしく黒騎士さんもこの話には納得したのか頷いていました。ゴブリンの群れとかなら私が轢き殺せるのですが、次は何が出るのやら。


「よし、行くか」


 齋藤くんが先陣を切って六階層目の扉の前に立ち、自動で開く扉を(くぐ)ると、そこには液体が形を成したベビモスよりは小さいけれど三メートルはあるであろう生物――スライムが居ました。

 スライムの倒し方は核を壊すか、その肉体とも言える半固形の液体を全て蒸発させるかになります。ダンジョン産の魔物は、というよりここの魔物は此方を向いていない限り気づく事はありません。だから今までは先手を取れていましたが、今回は気付かれてしまったみたいです。


「避けろ!」


 スライムの身体がブルリと震えると液体が噴出されました。訓練の知識通りなら溶解液、それも肉体をも溶かす強力な酸性を有した毒液。

 竜程の強さはありませんが、中々手強い相手である事に変わりはありませんね。指輪で散らしても回収されたら回復されてしまいますし、核は強く液体と結び付いているから鎖で引き出す事も出来ません。齋藤くんの刀も届かないでしょう。濃松さんの魔術は、分かりませんが魔力は残して置きたい所です。


 なら――。


「『炎よ』」


 私の言語魔術で削るのが妥当でしょう。


「四季! 俺達に当てない様に――」

「私の後ろに居て下さい。あれは私が蒸発させます。核は齋藤くんが斬って下さいね」


 無駄な事はさせない。

 スライム相手なら散開する必要もありませんし、溶解液は私の魔力障壁で防げば問題ありません。気を付けるべきは燃えたスライムが此方に迫ってくる事くらいでしょうか。


 三メートルはあった巨大なスライムはやがて炎に焼かれてその身体の全てが蒸発しました。

 スライムはこの状態から回復するのに一日はかかります。核だけの存在なら冒険者に成り立ての子供でも安心して殺せる。


「それじゃあ、トドメはお願いしますね」

「四季、力に目覚めてからお前は――そう、焦っている様に見える。もう少し余裕を持った方がいいぞ。視野が狭まれば選択肢に気付けなくなる」

「……そうですね」


 言われてみれば、そんな気もする。もう少しみんなに頼るのも悪くないかもしれない。

 私一人で出来る事なんて限られている。この力を得てから私は少し、(おご)っていたのかもしれませんね。今も一方的に決めては独断でスライムを機能停止させてしまいました。

 夜黒くんの為に。そう思う程黒の魔人に対する殺意が芽生えてしまいます。以前の私なら秋音ちゃんとかに頼っていたかもしれません。


 考えを改めていると、齋藤くんがトドメをさして七階層に降る事になりました。消耗したのは私の魔力だけなので特に休憩することなく降りました。


 七階層の敵はコボルトの群れ。

 ゴブリン同様轢き殺そうとして両手から指輪を射出しようとした時、齋藤くんから待てという声が掛かりました。


「俺と濃松の分を残しておいてくれないか? 流石に経験を積めないのは俺達も困る」

「じゃあ五体くらい残しておきますね」


 指輪を巨大化させてコボルトを一体ずつ撃破していく。回転する指輪で挟めば面白い様にすり潰されていく。前までの私なら吐き気を覚えた光景かもしれないのに、今では何の感慨も湧かない。

 ここに居たのは四十体だったらしく三十五体目を殺してから指輪を嵌め直す。残りは齋藤くんが三体、濃松さんが二体を相手にする形で戦闘が開始された。


「フユミ、お前は…‥何のためにそこまで力を求める?」


 二人の戦闘を見ようとしたら黒騎士さんからそんな言葉が投げられる。その問いの答えは考えるまでもなく、既に決まっている。

 私の愛した夜黒くん、その魂をきちんと黄泉に送るのが私の最大の仕事と言っても過言ではない。


「黒の魔人に奪われた、私の恋人の魂をちゃんと葬る為ですよ」

「ではその後はどうする?」

「……あと?」

「そうだ。復讐を遂げた後フユミは何を生きがいとする」


 その時齋藤くんがコボルトの一体を両断する。濃松さんが妨害の魔術で上手く一対一の形を作れている証拠だった。


 彼等はきっと黒の魔人を倒したら英雄の一人として何不自由の無い生活をこの世界で送るのかもしれない。ケーニヒ様が人類の生存圏を広げる戦力として運用するかもしれない。勿論私もそこに加えられるだろう。

 だけど、多分黒騎士さんが聞いてるのはそういう未来の事ではないと分かる。鈍感な登場人物でもなければ、私がどうして力を求めて、その後の生活はどうしていくのかを聞いていると分かる。


 考えた事もなかった。


 夜黒くんの事ばかりで、私はそういう戦力以外としての未来を一切考えてはいなかった。その問いに、答えようとしても言葉は出ず、今度は二体のコバルトが首を刎ねられる。


「私はこの世界に貢献する事を生き甲斐として七騎士の一人となった。七騎士は一人でも戦争を抑止出来る存在だ。勇者もそういう見方は出来るだろう。だが、一人のフユミという個人としての生き甲斐が無くては、黒の魔人打倒後は虚無ばかりがその胸を占めるぞ」

「……考えてみます」

「直ぐにとは言わない。お前なりに答えを見つけたらいい。答えを探す事を生き甲斐とするのも、悪くはない」


 今後私がどうやって生きていくのか。それは難しい問いかけだった。他の人を好きになれるかは分からない。失恋とは違って、愛する人を愛したまま失った私は、どうして良いか分からない。

 まだ高校生。だけど、幼稚園からの付き合いで、私達はちゃんとお互いに愛し合っていたと思う。夜黒くんも愛してなかったら力なんて残さずに、私の事なんて考えずに死んでいたと思う。


 どうやって生きていくか。

 もし、夜黒くんが生き返ってくれたらと思う。

 そうしたら彼に殺されるのも悪くない。お互いに死んで、二人で死後の世界へ向かう。

 だけどこの考え方はきっと黒騎士さんは許してくれない。死を望む事は、誰も許してはくれないと思う。自殺をする勇気もないから、誰かを頼ってしまう。でも、もし殺されるなら夜黒くんに殺して貰いたい。


 そんな考えをしながらぼんやりと齋藤くんを見ると風を纏わせずに一体のコボルトを斜めに斬り裂いていた。これで残されたコバルトは残り一体。

 濃松さんがビームみたいな魔術でトドメを刺して呆気なくこの階層は終わりを迎えた。


「よし、次に行こうか。四季、もし次が群れなら少し数を増やしてくれて構わないぞ」


 齋藤くんの声で思考を引き戻し、ダンジョンに集中する。次の階層は八階層。所謂ボス部屋ではありませんが、さっきのスライムの件もあるので慎重に行こうと三人で話し合い次の階層に向かうと、そこには杖を持ったゴブリンの群れが居たのでコボルト同様、今度は八体程残して指輪で抹殺する。

 もうする事もない為、再び黒騎士さんと話す時間が生まれる。


「指輪の使い方にも慣れたものだな」

「まだまだ上手い使い方もあると思うんですけどね」

「最初に比べれば雲泥の差だ。勇者の成長率は恐ろしいな」


 黒騎士さんは褒めてくれるが、私としては納得はいってない。この指輪にはまだ可能性が秘められている気がしてならない。それにこの服についても、まだ試せていないけれど繊維を操れる能力が備わっている。どう運用すれば良いのか分からないから私としては困っている。

 服の繊維なんて流石の黒騎士さんも扱った事がないからお手上げだと言われた。


「私は……この力をまだ完全に扱えていません」

「人に秘められた力を完全に扱えると思うな。今使える力でどうにかするのを考えろ。無いものを強請っても、何も得られないぞ」

「……そうですね」


 この時間を使って繊維の扱い方でも勉強しようかな。

 この服は制服と下着が元になっているのか、脱ごうとした時――脱ぎ方も分かっており、手首にリングとして繊維を集中させた時には全裸になっていた。

 背中は見えても構わないし、胸も最低限守れていれば良い。下も水着みたいにすれば多くの繊維が操れる。当然防御力は下がるが、この服の繊維は固く柔い。私の意志一つでどうにでもなる。(はた)から見れば黒い塊が身体を蠢いている様に見えるだろう。


 右手から伸びる様に繊維を集中させると、一本のブレードの様になる。

 これは、面白いかもしれない。


「お楽しみ中悪いが、終わったそうだぞ」


 黒騎士さんから声を掛けられ二人がゴブリンを倒したのを確認する。特徴的にゴブリンメイジと呼ばれる魔術を扱うゴブリンだったはずたが、そんなに早く終わらせるとは思わなかった。

 それとも、私が結構遊んでいたのが原因でしょうか。


 次の階層に進もうと声を掛けた齋藤くんが私の格好を見て赤面したのは、少し面白いと思った。そんなに刺激的な格好だろうか。


 次に進んだ九階層も同じゴブリンの群れだったから、次が十階層だからという理由で三体だけ残して十階層――所謂ボス部屋へと降って行った。

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