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これは“世界”を救う物語。  作者: 高平めめこ
召喚された十三人の勇者
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0-3-12 いざ行かんダンジョン

 体術訓練にのめり込んでから更に二週間が経ち、この世界に来てから一月以上を過ごしました。最初に来た頃の自分とは大違いで、肉体的な強さはクラストップ。

 最近では実力の近い者同士で高め合うクラスメイトとの交流戦が行われ、魔術訓練をしている人とも戦えて良い経験が出来ました。軽く視認した限りの記憶では黒の魔人は中距離が得意そうだから魔術訓練に参加する女子との戦いは大変勉強になりました。

 またそれに並行して各訓練では魔物の特徴を教えてもらえたりする様になりました。


 そして今日は延期されていたダンジョン攻略が始まります。

 アテナ王国郊外にある三十階層もある中級と上級の間に相当する、冒険者で言えば一人前かどうかを測るダンジョン。十三人で行くのは非効率だと言われ、三人一組のパーティかつ七騎士の一人が後ろで見守る擬似的なフォーマンセルの形で攻略に当たり、第三回目となる今日、私が参加する事となりました。

 監督役の七騎士は黒騎士さん。以前の訓練から同性という事もあるのか時間外でもそこそこの頻度で面倒を見てくれる優しい人だった。


「それではこれより『魔巣』に入る。死にそうになったら私が手を出してそこで終わりだ」

「はい!」


 その言葉に今回の参加者である私と齋藤くん、濃松さんが揃って返事をした。今回のパーティ構成は近距離の齋藤くん、中距離の私、オールラウンダーな濃松さんとバランスは良さそうに見える。

 齋藤くんとは何度か手合わせをしているからその刀捌きの邪魔にならない様に鎖を振るえばどうにかなりそうだし、濃松さんとも交流戦で何度か闘っているから得意な魔術は把握している。


「『魔巣』の特徴は各階層一部屋のシンプルな構造だ。だが敵が多いか、竜種の場合がランダムである。油断したら即、死に繋がると思え。流石の私も死体を蘇らせる事は出来ない」


 その言葉でダンジョンへと入っていく。


 入り口は煉瓦で舗装されていて、地下に伸びるタイプのダンジョンだけど、明るさは適度に配置されたトーチが確保してくれるから一階層目に入る道は良く見えます。

 一階層目の大部屋に繋がる階段を降りると、勝手に扉が開く。このダンジョンは大部屋にしか魔物が発生しないから階層の間はセーフティエリアとなっています。一日あたり六階層攻略するのが目安らしい。だから平均五日かけて攻略される事になっています。


「初手は何が来ることやら」

「群れとかなら私の魔術で一掃するよ」

「最初の敵が分かればある程度(のち)の展開が掴めそうですね。齋藤くんの体力と濃松さんの魔力を温存出来たら良いと思います」


 中に居たのは武装したゴブリンの群れ。

 ゴブリンやコボルト、オーク、オーガ等は亜人ではなく魔物として認知されているそうですが、初めて目にすると醜悪な見た目ですね。

 ゴブリンは下級の敵として広く知られて居ますが、油断はできません。武装している事からこのダンジョンでのゴブリンの強さは傭兵並みと見て良いでしょう。


 数は三十程。

 濃松さんがこれを一掃すると考えると大規模な魔術行使になりかねませんね。


「ここは私がやります」


 この二週間の間に指輪と鎖には漆黒の名を与えた。

 名前を与えてからは性能が上がった気がするし、七騎士との訓練でもほんの少し強くなったと言われました。私と夜黒くんの力。私はコレを子供のように可愛がっているのです。

 そしてそれと同時に冷たくも思っている。こんな武器は要らないと、夜黒くんが欲しいと思っている。けれどその想いに反してこの指輪と鎖は強度を増していった。


「轢き潰せ、漆黒の指輪」


 両手から射出した指輪が車のタイヤ位の大きさとなり、高速でゴブリン達を蹂躙する。回転も加えたソレは瞬く間にゴブリンらを轢き殺し、その死体がダンジョンへと還元される。

 指輪を回転させるのは血が着かない様にする意味も込めていたが、こんなに破壊力が出るとは思わなかった。


「それでは次の階層に行きましょう」

「そ、そうだね」

「……おう」


 何やら何かを言いたそうにしているけれど、この世界にはゲームのレベルシステムが採用されている訳でもない。私一人で出来るのであれば、それに越した事はないだろうに。


 休む事なく次の階層に降って行くと、今度は一体しか居なかった。

 だがその一体はカバとサイを合わせような動物型の魔物で、余りにも巨大。その巨躯だけでも充分な威圧感がある。


「あれはベヒモスだな。二階層で出てくるとは、運が悪い」

「ベヒモス……俺がヘイトを稼ぐから二人で攻撃してくれ」


 そう言うと齋藤くんは身体強化したその身で、刀を納刀した状態のまま駆け出した。

 齋藤くんは刀を得意とする剣士。剣道とは違って反りの有る刀の扱いにも適応した正に刀の達人といった人だ。


「風刃!」


 此方に気づいていない隙を付き、横を通り過ぎる際に抜刀、風を纏った刃で一閃。ベヒモスという巨躯の魔物に一条の斬り傷が付けられ、血が噴出する。

 動脈を上手く斬れたのだろう。だが人間とは違って出血は直ぐに(おさ)まる。失った血は直ぐには補填されないからアレを繰り返せばいつかは失血死出来るだろうけど、ベヒモスも戦闘態勢を取った。さっきの様にはいかないと思う。


 三人で陣形――というか戦いやすい形を取る。齋藤くんが近接し、私が中距離に、濃松さんは入り口の近くで魔術の準備をしてもらう。


 右腕から鎖を伸ばしてベヒモスの身体をその場に縛り付ける。鎖の射程を短くする代わりに枝分かれ出来る様になった鎖は対象を縛り付けるにはもってこいだ。

 身体強化をして力負けしない様にしているが、これはその内持っていかれる。

 実践経験は少ないけれど、最高峰から学んだ二人は即座に行動に移ってくれた。


「『太い毒の魔力の矢』」

「風塵閃!」


 一本の魔術の矢が突き刺さり、幾つもの風の刃がベヒモスを襲う。毒は継続性のモノではなく腐食性のモノらしくベヒモスの脇腹に相当するであろう場所が腐り落ちた。

 齋藤くんの風の刃もその身を削り、ベヒモスは一気に満身創痍となり、私も鎖を解く。

 五メートルは越えるであろうその巨躯には充分なダメージを与えられたと思った。


 だがベヒモスは終わってなどいなかった。

 巨躯を捨て、腐り落ちた肉を補填する様にその身体を縮め、人間大の大きさまで小さくなる。

 明らかに先程までと違って性能が向上している事が見て取れた私は声を上げる。二人を守るには此方へ呼び寄せた方が早い。


「二人とも、こっちへ!」


 ベヒモスが片足で地面を蹴って、突進の前姿勢を取る。猪の様な動きだ。


「漆黒の指輪、展開」


 十個の指輪を展開して壁を作る。

 黒騎士さんは自分の方へ来ない様に私の後ろに来てくれたが、齋藤くんが間に合っていない。指輪の隙間から彼が壁の前で構えているのが分かる。

 無茶はしない性格だと思っている。だからきっと大丈夫だろう。身体強化の魔力が足に集中しているのが、何故か見えた。


「ブモォオオオオオ!!!」


 勢いよく突進してくるベヒモスを真正面から受け止める姿勢を整える。齋藤くんに当たりそうになった時、齋藤くんは跳躍してその突進を回避してベヒモスが巨大化した指輪の壁にその身を当てる。

 そのままでは押されてしまうから指輪を加速させ移動の速度をゼロにする事でベヒモスをその場に留めさせる。


「脳天、いかせてもらうぞ!」


 齋藤くんが落下の速度を利用して頭に刀をつきたてるが、頭蓋骨が硬いのか上手く刺さっていない。

 濃松さんに指輪を一つフラフープの様に通して今いる位置の反対側へと回ってもらい安全に魔術を放つ準備をしてもらう。齋藤くんも濃松さんが(かなめ)だと察したのか降り際に一太刀入れてから私の方へやって来た。


「さっきより硬くなってたな」

「力は落ちてるみたいだから、私が動きを止めますね」


 鎖を伸ばして捕獲しようとしたが思った以上に機敏に動かれ狙いが定まらない。念の為もう一つの指輪を濃松さんの方へ飛ばして、他の指輪で進路を妨害しながら捕獲を図る。

 齋藤くんも協力してくれた。身体強化の殆どを足に回して飛んで跳ねてベヒモスの突進を躱している。だが二人とも生きている生物、どちらかはその動きを鈍らせる時が来る。幸いにも齋藤くんは指輪の内側に入って呼吸を整えたりしているが、ベヒモスは迫る指輪の対処に追われている。


 そして遂にその時が訪れる。


「そこ!」


 鎖を網状に展開して、ベヒモスを捕獲する。


「『強い毒の魔力の矢』」


 さっきとは違いより毒性と魔術の矢自体が強くなった一撃はベヒモスの身体を貫通して身体の半分以上を腐食させる。地面に横たわったベヒモスはダンジョンに還元され、私達は戦いに勝利した。

 これでまだ二階層なのだから恐ろしいダンジョンだ。


「まさか此処でベヒモスが出るとは思わなかったな。それにしても三人で良く倒した。この後はかなり楽に感じると思うぞ」


 次の階層に向かう時、黒騎士さんから激励の言葉を貰えた。

 やっぱり二階層に出る敵ではなかった様だ。よかった、これが連戦したりしたらとても五日では終わらない。他の二人もそう思っていたのか、安堵の息を漏らしていた。

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