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これは“世界”を救う物語。  作者: 高平めめこ
召喚された十三人の勇者
80/260

0-3-10 覚醒

 あれが黒の魔人……。

 尻尾や翼を除けば普通の人間の成人女性にしか見えないのに、巨悪として捉われている存在。


「カルマ!!」

「お前とはまだ戦わないよ」


 アルマさんが突如現れた鎖に身体を貫かれ、行動が阻害される。クローディアさんは魔力を展開して様子を見ている。七騎士二人も何があるのかと警戒して迂闊には手を出せない状況となった。


 すると黒の魔人が持ち上げていたナニカは放り投げられ、地面に横たわる。胸には大きな穴が空いており、全身焼け焦げているけれど、クローディアさんの言葉通りならこれは、きっと、夜黒くんだ。


「七騎士二人にクローディア、アルマ、勇者か……ここは撤退だな。転移」

「逃がさない!」


 七騎士二人が斬りかかるけど、黒の魔人はその場から消え失せる。残されたのは最早血すら流れ出ないボロボロの死体だけ。

 私はその死体に恐る恐る近付き、そっとその身体に触れる。何が起きているのかみんな理解出来ていないのか固まっているけど、秋音ちゃんだけは失う悲しみを知ってるからか私の事を止めようとしたけど、それを振り切って死体を見る。


「夜黒くん、なの……?」

「ふゆみん! 落ち着いて!」


 秋音ちゃんに止められるがその死体に触れる。みんなには見えてないのか、夜黒くんと思われる死体の上には白く輝く物体が浮いている。魔術的な物ならクローディアさんも気付くはずなのに、見えてないという事はこれは私だけに見える物なんだろう。

 近寄って触れてみると、私の中に力が入ってくる。私一人にはとても扱いきれない大きな力がいきなり入ってきて困惑するが、相性は悪くないのか次第に落ち着いてくる。


 夜黒くんのぶっきらぼうな暖かさが感じられる。

 これはきっと私が困らない様に、最後の力を振り絞って夜黒くんが用意してくれた私の為の力に違いない。


「冬美さん?」


 私の異変にいち早く気付いたクローディアさんだったが、もう遅い。私の中は黒の魔人に対する暗い感情しかなく、全ての力が馴染んだその時、私の身体が変質した。


 着ている服は制服から黒のタイトな服となり、簡単に言えば拘束服みたいな見た目となった。両手首から伸びる一本の鎖が私の腕に巻き付き、全ての指に指輪の付いた黒い、指先の尖った手袋が装着される。

 突然の私の変貌にみんなが驚くのが手に取る様に分かる。魔力が溢れてそれに触れたモノが何であるのかが分かる。赤騎士さんが言っていた戦いに身を投じる未来がこんな風に訪れるとは思ってもいなかった。


 死体に対してクローディアさんも検分して、夜黒くんであると判断された。


「魂がありません。黒の魔人は夜黒さんの魂を奪いましたね」


 やっぱりこれは夜黒くんで間違いなかった。

 一目見た時から、そうだと私は思っていたし、事前の言葉通りならと冷静に分析する私も居る。


 もっと会いたかった。

 もっと話したかった。

 もっと触れたかった。


 冷静な私を置き去りにして、様々な感情が渦巻く。

 最早原型すら留めていない夜黒くん。ここまで痛ぶる必要があっただろうか。きっと苦しんで死んだに違いない。こんな事を平然として、何食わぬ顔で逃げた黒の魔人に腹が立つ。私から愛する人を奪って、その魂までも奪った事に(はらわた)が煮えくり返る。

 私が私で無くなっていく奇妙な感覚。頭の中には『復讐者』という単語が現れ、私はそういう存在になったのだと悟る。


 腕を振るうと、鎖が伸びて近くの大木を薙ぎ倒す。 

 無造作に振るったが、誰にも当たらない様に頭で操作して蛇の様にしなる鎖を扱う。


「ふゆみん!?」

「大丈夫、もう、落ち着いた」

「冬美さん、その力は――」

「夜黒くんから貰ったものです。今度からは私も訓練に本格的に参加しますね」


 みんなが私の変化と、夜黒くんの死に着いて行けてない。それを理解して、私は心に一つの事を決める。

 私らしくないけれど、夜黒くんの為に私は動こう。お菓子なんて作ってる場合ではない。ただこの殺意を研ぎ澄まさなければならない。


 黒の魔人をこの手で殺す。


 殺す。


 躊躇わずに殺す。


 殺す。


 この手で殺す。


 私に適した武器が鎖と指輪だなんて、面白い。この指輪の使い方も分かってる。鎖の射程も見た目より長い事も確認出来たし、伸ばした後もある程度は自分の思い通りに動く事も確認出来た。

 後は私がどこまで伸びるのか。夜黒くんの力の塊みたいなモノを受け取ってから身体の調子が非常に良い。夜黒くんは魂を奪われたみたいだけど、夜黒くんの一部を私に残してくれた。


「夜黒くん、仇は私が取るよ」


 小声でそう告げ、死体から離れる。クローディアさんがそのままにしておく訳にはいかないと、死体にかける『揺籠の炎』という魔術を夜黒くんにかける。

 この炎は決して熱は持たず、ただ物質を焼いていく魔術だそうだ。夜黒くんの魂は黒の魔人が持ってるけれど、私の中にやどるこの力に乗っているかもしれない夜黒くんには安らかに眠ってほしい。


「転移場所の補足は出来ませんね」

「案外近くに潜んでるかもしれない。周辺を見て回ろう。アルマの拘束も解けたみたいだからな」


 この日は周辺の警戒を私達で行ってから、日が暮れる前に引き継ぎにやってきた王都の騎士十数名が派遣されお開きとなりました。

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