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これは“世界”を救う物語。  作者: 高平めめこ
ヒトトセヤクロトイフモノ
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0-2-1 異世界転移

ここから準主人公が活躍していきます。名前は勿論、前から。

0-2-1


 闇に染まった空間に漆黒の髪をした女性が立っている。

 腰からは黒色の尻尾が伸びておりそれが男のを絞める。


 もう、男に意識は殆どない。

 幾ら魔術を高め、“魔法”を使える様になっても炎雷に穿たれた人間はいずれ死ぬ。身体の感覚も、先の攻撃で無くしている。


「“魂の簒奪”」


 男の魂が抜けていく。

 闇に染まった空間にはヒビが奔り、崩れていく。外には待機していたのだろうか、誰かが駆け寄るが、既に男の意識は歿()くなった







 9月15日、月曜日。

 カーテンの隙間から入る陽の光で目が覚める。

 何やら夢を見た気がするが覚えていない。

 今日は学校が休みだし、家でごろ寝でもするか。


「ねむい……」


 スマートフォンをチェックすると驚きの着信履歴。それも数少ない我が友人四季(しき)秋音(あきね)からのもの。


「なんなんだ……」


 言っておくが彼女ではないし、彼女は別にいる。

 とりあえずかけてみるか。


「こういうのってかけると出な――もしもし」

「やーさん遅い!! 出かけるよ!!」

「朝から元気なのはいいがこっちは寝起きなんだ。勘弁してくれ」


 どこに出かけるのやら。

 まぁ、見当は付くが。


「今日は鮫太くんがいなくなって一年でしょ? もしかしたら最後にいたスーパーにいるかもしれない!」


 鮫太。

 鮫島(さめじま)鮫太(こうた)。秋音の彼氏であり俺の友人の一人。去年の今日突如秋音の隣から消失して以来連絡の取れなくなった我が友人。

 確かにもしかしたら、なんてこともあるかもな。


「支度するから家に来てくれ」

「今度はちゃんと服着ててよね」

「いやあれはお前が悪い」

「ふゆみんに言っちゃおっかなー」

「やめろ」


 とりあえずシャワーでも浴びて適当に着替えますかね。

 その前に歯を磨かねば。口の中が気持ち悪い。


「それじゃあ十分くらいかしたらいくからー」

「わかった。じゃあな」


 十分か、間に合うか?


「俺歯磨き長いからな……」


 歯周病を予防するでお馴染みの歯磨き粉を使ってジャカジャカ磨いてたらインターホンがなる。

 時計を見ると既に十分くらい経っており、やってしまったと後悔する。


「きたよー」

「今からシャワー浴びるから、適当に上って待っててくれ」

「やーさん、先にシャワーでもよかったんだよ? そういえば今日千夜ちゃんは?」

「お前を外に待たせることになる。暑いのは嫌だろ。それと千夜は普通に授業でいない。高校だけだ、休みなのは」

「お気遣いどーも。ほら、さっさと浴びてきなー」


 適当に服を洗濯機へいれ、浴室に入る。

 給湯機のボタンを押しシャワーを流して数秒ほどでお湯が出てくる。


「そうかぁ、鮫太がいなくなってもう一年になるのか」


 二人で色々な事をやった。

 あいつには俺と違って沢山友達がいたのに、古い付き合いだからってよく遊んだ。


「一年か……」

「やーさんまだぁー?」

「感傷に浸りすぎてたな。もうちょいかかる!」

「はいよー」


 さっさと洗って、さっさと確認して、さっさと今日を終えますかね。


 浴び終え、身体も拭き終わり服を着替えた。


「いくか」

「いこー」

「冬美には声はかけたのか?」

「ふゆみんは体調不良です」

「そうか」


 さて、それじゃあスーパーに向かいますかね。


「秋音、スーパー以外も回るのか?」

「うん。最後に鮫太くんと歩いたところかな」

「そうか。いるといいな」


 なんとなく分かってる。

 鮫太は二度と戻ってこないって事。

 それでも諦めきれないのが、彼女としての意地なんだろうなと思う。


 鮫太、早く戻ってこいよ。

 秋音が泣いちまうぞ。


「折角来たしなんか買って帰ろうか」

「お菓子が無かったよ!」

「風呂の間に勝手に家探しすな」


 適当にお菓子類を購入し、適当に散策する。


「やっぱり、いないんだね……」

「いたら先ず家だろうしな」

「家にも行ったけど、いなかった」

「そうか」


 スーパーを出た途端、何かが頭上から降ってくる。

 それを回避し、秋音と帰路につく。


「近道しちゃお」

「この時間なら車もとおってないか」


 信号を回避できるこの辺の住民なら皆知っている迂回路もとい近道。俺たちもよく利用するが、今日は運が悪かった。


「秋音抱えるぞ」

「ふぇ?」


 目の前から暴走したトラックが突っ込んできた。運転席を見る限り居眠り運転ってところか。幸い回避ポイントはいくつもある。

 さっきといい、運命が殺しにかかって来てるとしか思えん。


「あぶなー。あれ事故るんじゃない?」

「誰かが警察に通報するだろう」

「やーさんはしないのね」

「鮫太の捜索を早々に切り上げた組織なぞたよるものか」


 秋音の事を降ろし歩いていると誰かとぶつかる。


「やーさん?」


 これは誰にも言ってないひみつなんだが、俺にはある特殊能力がある。

 未来固定、過去回避の二種類。


 どうやら、ぶつかった男は通り魔で俺の心臓にナイフを突き刺してくれたみたいだが、その程度では死んでやれん。

 過去に起きた事象を回避する過去回避を発動し、男とぶつかったという事実をなかったことにした。


「んー? どしたの? 知り合いだった?」

「いやなんでもない」

「あやしー」


 なんて談笑してたせいか見落とした。

 回避は全て自身にしか働かない。仮に秋音を巻き込んで傷付けば、それはどうしようもない。


「わわわっ!?」


 地面が陥没し、電柱が倒れてくる。

 こういうのって日本で発生するのかってツッコミを入れつつ未来回避で運良く秋音を巻き込まずに回避する。


「あぶなー。ここ地盤緩かったのー?」

「さっさと帰ろう。今日はおかしいな」


 そうだ。帰ってしまえばどうにかなる。

 そう思っていた。


「やーさんは運がわ――」


 突如視界が暗転する。思わず目を瞑ると身体に浮遊感が奔り、空中に投げられた様な感覚を覚える。


「どこだ、ここ」


 目を開けば白一色の謎の空間。地面に立っているという感覚もなく、まるで抵抗のない水中にいるようだった。

 それに秋音がいない。さっきまで隣に居たにも関わらず、加えて持っていたスーパーのレジ袋もなくなっている。


「せめて全裸じゃない事を喜ぶべきか」


 辺りに何もない事を確認すると、背後に気配を感じ、振り返る。


「ヤッ、僕は自由と快楽の神。フリーって呼んでよ、夜黒くん」


 さっきまでいたか?


「いんや、今来たよ」


 思考が読める。流石は自称神。

 もしかして鮫太の事を誘拐したのもお前か?


「もっと崇めてくれてもいいけど、コウタくん? は僕は知らないなぁ。神友のコバルトくんならしってるけどね」


 ふむ、悪い奴ではなさそう、か? 若干黒いススみたいなのが背中から立ち昇ってるが悪魔の類も否定できん。


「悪魔ねぇ、彼等も懸命に生きてるし、僕の権能は悪魔よりかもしれないねぇ。それに、そう! 僕には時間がない」


 時間がない割には悠長な感じだな。


「あはは、僕は自由がすきだからね。それでもこの縛りからは解放されない」


 なにやら事情があるそうだし、何かしてくるな。


「さすが僕の招待を何度も回避しただけあって鋭いね。そう、僕は君に用がある」


 招待? 今日の殺意の高さか?


「あはは」


 笑って誤魔化されたな。


「君は人間なのに神様的な力を大きく所有してるし、未覚醒の種もある。僕がいじれるのは基礎部分とちょっとした贈り物だけ。こんなんでも最上級の神様なんだぜ? それが、全く介入の余地がない」


 最上級ときたか。ゼウスとかヤハウェとかじゃなくこんな奴がねぇ。


「人間に恩恵を齎した神がいれば、何もしない神もいるのさ。話は戻して、基礎部分とちょっとした贈り物だ」


 何をする気だろうか。


「先ずは魔力の感知とその制御。日本人は魔力適正高いのに魔術が発展しない稀有な一族だからねぇー。それと言語適正に身体能力のちょっとした向上」


 魔力? 魔法でも使えるのか?


「“魔法”はとあるお方専用技術。君達は魔術しかつかえない。そして、魔眼の発露」


 途端に視界が色付く。赤い所もあれば、緑の所もあり、先程までの白一色の世界が色彩溢れた様相に変わった。


「その色が魔力。色の濃さは魔力濃度を表しているし、色の違いは込められた魔力の違いを見せてくれる優れ物。君の特異能力と合わさればヒットアンドアウェイの超人が出来そうだ」


 使い勝手は要検証だが、ただの人間になぜこんなことを?


「君に興味が湧いたから。残念ながら見届けられないけど、君はきっともっと自由に生きられる。それじゃあ、送るよ」


 随分急いでるな。


「ホントに時間がないんだ。ごめんよ、でも、君に対して悪意はない。これは事実。そして、君を別の世界へ送る。地球とは違い魔術の発展した世界へ」


 来た時とは違い世界が光に包まれる。

 最後に見えたのは、フリーって神様が黒いモヤに飲み込まれ、姿を消したこと。


 そして、気づけば全く知らない場所に自分は立っていた。

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異世界転移のキーワードはここで活きてきます。

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