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これは“世界”を救う物語。  作者: 高平めめこ
召喚された十三人の勇者
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0-3-8 勇者の日常

 お菓子を作る生活は一週間と三日目、つまり遂に十日になりました。異世界の食材にも慣れてきて、様々なお菓子が作れる様になり、料理長ともお菓子の創作に関して話し合ったりする日々を送っています。

 今日は魔術訓練に、昨日作ったフルーツケーキを持参して、顔を出しています。クローディアさんは努力型の天才なのか、きちんと先生をしています。今日は夜黒くんはいないみたいで、残念です。


「それでは皆さん思い思いにあの的へ魔術を放って下さい。冬美さんは魔力の流れをスムーズにする練習でもしましょうか」


 訓練に顔を出すからには、何かしらの練習をしようと提案するのがクローディアさんです。そのお陰で少ない練習で私の魔力操作も人並みになってきました。

 魔力の操作は意識しないと魔力が弾けてしまう為とても困難ですが、みんなは特にそういった事もないみたいです。クローディアさんもコレの原因は分からないそうで、訓練あるのみと言っていました。魔術界最高の人から匙を投げられるなんて……とも思いましたが、幸いクラスメイトは私が足手まといでも気にせず接してくれました。


「『毒の魔術の矢』!」

「『太く強い魔術の矢』……」

「『炎の強い魔術の矢』!」


 ふと顔を上げると濃松さん、行方くん、加祝さんの三人が同時に魔術を放っていた。濃松さんは指を銃の形にして片手で、行方くんは腕を振り払う様にして、加祝さんは右腕を突き出して手のひらを的に向けて。

 三者三様の魔術のスタイルだが、クローディアさんは何も言わない。魔術の放ち方に正解はないらしく、クローディアさんは魔力の塊を幾つか展開してその塊からと、両手から魔術を放つスタイルだそうだ。聞いてみれば夜黒くんもそのスタイルで魔術を扱っているらしい。

 魔術を教えたら見て盗まれたそうだ。夜黒くんにはそういう所があるからと言ったら、だからあまり手札は見せたくないと返答が来た。クローディアに伝わる技まで盗まれては沽券に関わるそうだ。


「クローディアさんは、61代目黄泉比良坂の巫女っていうのも兼任してるんですよね?」

「……そうですね。私の代で恐らく終わる風習だと思いますよ」

「あんまり聞いてはいけない話題でしたか?」

「いえ、ただ……なんでもないです。魔力操作には慣れましたか?」

「いやぁ、全然です」

「ふふ、夜黒さんに似てましたよ、今の」

「ふぇ!? そ、そうですか……」

「恋人なんですねぇ」


 クローディアさんの言葉に顔が熱くなる。こういう話は苦手だけど、なんだか長命な人程無頓着な気がする。クローディアさんはエルフだから余計に、なんだか親戚のお姉さんみたいで対応に少し困ってしまう。


「夜黒さんとはどういう風に過ごしてたんですか?」

「えっと、学生だったのでそんなにお金のかかった遊びはしてませんけれど、お金が無くても出来そうな事は大抵やったと思います」


 夜黒くんはスイーツ男子と言っても差し支えのないスイーツ好きだったけど、自分で情報を集めるのは苦手だったから秋音ちゃんが良く教えていた。

 春夏秋冬の家は和風な造りで、夜黒くんの説明だとアパートの一室みたいな感じになっちゃうけれど、都内にしてはそこそこ広く土地を使っている。そんな家の軒下で迷い込んだ数匹の猫を二人で眺めたり、撫でたりするのがとても楽しかった。


「あの夜黒さんと付き合うのは少し疲れるのでは?」

「え、夜黒くんはそんなに大変な人ですか?」

「自由というか、およそ人と付き合うというよりは、内に縛り付けるタイプに見えたもので。事務的な付き合いだとこんな印象になりがちなのですかね」

「うーん……」


 確かに夜黒くんは自由な人だ。

 鮫太くんが居なくなってからは落ち着きを手に入れた感じがするけれど、その前までは自分本位な所もあった様なきがする。だけどそこまで人にそう思わせるかと言われると否と答えたい。夜黒くんの彼女だからそう思うのだろうか。


「まあ夜黒さんは働き者です。私の代わりに色々な案件を解決してくれますしね。将来この世界に根付くのであれば所謂有力物件というやつですね」

「夜黒くんてお金使ってますか?」

「結構倹約家ですね。この前預金を確認したら数食分しか減ってませんでしたよ」


 夜黒くんは飲む事は好きだけど、食べる事に関しては欲が薄い。出された物は食べる、けれど自分では最低限な物しか食べない。朝昼ケーキなんて時もあった。

 一応私はお菓子作りがメインだけど、この世界の料理も学んでいる。料理長さんが教えてくれるから味に自信はある。みんながどんどん強くなる間に、私はどんどんサポート係になっていく。


「嗚呼、それでは他の勇者様の様子も見なくてはいけないので、これで失礼しますね」

「はい。ありがとうございました」


 夜黒くんはどうしてるかな。

 今は何をしてるんだろう。クローディアさんの代わりに案件を解決してるって言ってたからそのお仕事かな。早く会いたいなぁ。


 夜黒くんの事と魔力操作をしていたら時間は過ぎて魔術訓練の昼休憩になりました。みんなに切り分けたフルーツケーキを配って、魔術協会からも差し入れのパンが配られる。

 今日の魔術訓練は女子のみの七人。行方くんは基本的には魔術訓練に顔を出しているみたいだけど、今日は体術訓練に行ってるみたいだ。


「ふゆみん、またこれ作ってよ!」

「冬美のお菓子は相変わらず美味しいねぇ。夜黒が羨ましいよ」


 秋音ちゃんと真紀ちゃんが褒めてくれる。

 他の女子も美味しいのかおかわりを要求してくるから隠していたもう一本を登場させる。女の子はスイーツに弱いのです。

 吉良々ちゃんには運が悪く今まで私のお菓子を食べてもらえなかったけれど、今日初めて食べてもらえた。


「こんなに美味しいの!? 今まで損した気分だぁ〜」


 こんな風に言って貰えると作り甲斐があるというモノだ。これからはもっとみんなにお菓子を配ろうと思った。私に出来る事なんて、それ位しかないから。


 昼休憩後も訓練は続き、その日私は魔力操作を行なった。私だけ早めに訓練を終わらせて、王城の厨房に向かってお菓子作りの仕込みと、新たなメニューを教えて貰う為に料理長の下へと急いで行った。


 厨房に辿り着くと料理長からはカレーの様な料理を仕込んでいて、今日はこの世界の鳥を丸ごと使った蒸し料理を習った。頭の取り方とかが少し大変だったけれど、内臓の取り方は何故かスムーズに出来た。

 これでまた一つ夜黒くんに喜んで貰えるかもしれない事が増えた。喜んでくれるといいな。


 今日一日を振り返ると、久しぶりに色んな人と交流が出来た気がする。

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