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これは“世界”を救う物語。  作者: 高平めめこ
召喚された十三人の勇者
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0-3-7 七騎士との語らい

 王城のお仕事、というか厨房を借りてのお菓子作りは割と好評で、訓練を終えたみんなに配ったりしてこの五日を過ごしました。魔術訓練に顔を出して魔術のコツとかを教えに来たらしい夜黒くんが私の事を秋音ちゃんに聞いたそうで、お菓子作りをしていると伝えたそうです。会いたかったなぁ。


 今現在私は厨房から離れて体術訓練を行う修練場に来ています。体術訓練ではその名の通り体術と武器の扱い方を学びます。今日はクラスの、行方くんを除く男子全員が参加している奇跡的な一日です。須藤くんは魔術適正が高いから器用貧乏にならない様に訓練終了後も誰よりも長く自主トレをしているのをこの前見てからお菓子とか飲み物の差し入れをする様になりました。

 須藤くんはこの世界を善くしたいらしく、黒の魔人討滅後の事も考えている節があります。確かに元の世界に戻れない一方通行だとコバルトさんは言っていた。

 だけど、今それを考えるのはなんだか、余りにも簡単に討滅出来てしまうと考えているのではないかと不安にもなる。


「敵は待ってくれないぞ! 武器を構えろ! 地に臥す事しか出来ないのか!! 更に速度を上げるぞ!!」

「――ッ! はい!!」


 七騎士と呼ばれる世界最強の騎士の一人に五人の男子全員が襲い掛かっている。七騎士はそれぞれの鎧を纏った騎士様で、扱う武器は人によって近距離の剣、中距離の大鎌、遠距離の弓などと異なる。中には魔術を織り交ぜる騎士様も居て須藤くんはその騎士様――白騎士さんを目標にしている。

 今は青騎士さんを相手にしていて、青騎士さんは斧槍と呼ばれる近、中距離の武器を得意とする人だ。


「フユミちゃんも参加しないかい?」

「私はああいうの苦手なので……」


 そんな私は今赤騎士さんと訓練を眺めています。七騎士のリーダーの様な存在で、人間に友好的なエルフ、熱血、大らかな性格の人。七騎士最強とも称される程ですが、クローディアさんには勝てないと公言している人です。


「いつか役に立つ時が来ると思うから、おじさんが相手してもいいんだよ?」

「……戦闘は多分、しません」

「……そっか。まぁ、無理強いはしないけど、フユミちゃんはいずれ戦いに身を投じそうでね。娘がいたら君くらいだと思うと、つい、お世話をしたくなるんだ」


 この人は未来の流れというモノが若干分かるらしい。だから戦争の起きないこの世界で、戦争の種になりそうなモノは排除しているそうです。

 エルフという種族が全員そうなのかは分からないけれど、遥か昔から魔術に秀でていたエルフの言葉は当たる時もあるそう。当たらない時は当たらないらしい、けれど私が戦う未来なんて想像がつかない。


 だけど、なんだか寒気がした。


「赤騎士さん、やっぱり少し動いてもいいですか?」

「勿論。どこからでも掛かっておいで」


 立ち上がったのは私だけ。赤騎士さんは座っている。これなら私でも一撃位は叩き込めそう。けれど、きっとそれは叶わないんでしょうね。下に見てるというよりは、余裕があってそうしている様に見える。


「『発火』!」


 ここ最近は魔術の発動も少しだけ早くなったから発火の魔術で赤騎士さんを攻撃する。


「おいおい……」


 赤騎士さんは目に見えない速度でその場を回避して私の背後に回り込む。


「魔術適正低いって聞いてたけど、この威力はとんでもないじゃないの。オーブの測定ミスかな?」

「……お世辞は要らないです。『火球』!」


 手に作り出した『火球』を振りかぶって投げつける。コントロールは自分次第なこの魔術は狙いが外れたらあらぬ方向へ飛んで行ってしまう。


「これは、少し力入れちゃおうかな」


 赤騎士さんが剣を抜いて私の火球よりも遥かに熱量のある炎を生み出す。刀身に絡み付く炎はそれだけで圧倒される。


「スタタ・マテル!」


 炎が女性の形を象ると私の放った火球を飲み込んで炎が消え去る。やっぱり私なんかの魔術じゃあこの人達と肩を並べる事は出来そうにないと思い知らされる。


「いや〜まさか基礎魔術にも満たない魔術にこの技使うとは思わなかったよ。フユミちゃん、今からでも魔術訓練入ったら?」

「発動に時間がかかり過ぎですので、やっぱりこうやってみんなのサポートをしますよ」

「うーん、勿体ない」


 再び二人して縁側みたいな造りの場所に腰掛け、みんなの戦闘訓練を見守る。赤騎士さんはどうやら私が戦闘要員になると思ってるみたいだけど、そういうのは夜黒くんとか他のクラスメイトがどうにかしてくれると思ってる。だからそんなに考えなくてもいいと思うのだけれど。


「ま、訓練は暫く続くし、このペースならあと一週間くらいで簡単なダンジョンに行って実践経験を積む感じかなぁ。フユミちゃんは、それからでも遅くないと思うし。今の生活でも良いのかな」

「そうならない事を願いますよ」


 青騎士さんが一旦休憩としたのか五人の男子がその場に崩れ落ちる。命は賭けていないけれどソレに近い程極限まで追い込むのが騎士様達の訓練方法だ。この優しげな赤騎士さんも訓練となると性格が変わってみんなの事を追い込む。

 その様を見ているからこの人が優しく私と一戦交えたのが不思議で仕方がない。本来あんなに受け身な姿勢ではなく、私の要望を叶えてくれるだけの存在ではない。


 とりあえず私は五人分の飲み物を用意して男子達の下へ歩み寄る。赤騎士さんも一緒に歩いている。


「ぜぇ……ぜぇ……」

「はぁ〜やっぱまだまだだなぁ〜」

「お疲れ様。スポーツドリンクとはいかないけれど、水分は大事だからね」

「ありがとう四季さん」


 みんなかなり疲れているのが分かる。紋土くんとか本城くんくらいしか喋る余裕がない。

 側から見ていていても目で追えない攻撃に対処している訳だからそうなるのも頷けるし、それに順応できる様になってきた男子も凄いと思う。


「フユミちゃんは誰かと付き合ってるの?」


 五人に渡し終わり再び縁側に戻ろうとした時赤騎士さんから思わぬ発言が飛んでくる。


「えーと、付き合ってますけど此処には居ませんね」

「というとナメガタくんとかな?」

「えっと、魔術協会に勤めてる人です」


 あんまり夜黒くんの名前は出したくないのだけど、これで伝わってくれると嬉しい。夜黒くんはこういうので目立つのはかなり嫌うから、学校でも夜黒くんと付き合ってるって知らない人から告白される時は説明が大変だった。


「あー、確か異世界の子が居たねぇ。そっかそっか、人間は早く子供作らないといけないから大変だねぇ」


 どうやら該当してくれたみたい。

 それにしても人によってはセクハラな発言だけどこの人はそれを認知してるのだろうか。長生きし過ぎてその辺が曖昧になってるのかもしれない。


「エルフが子作りに積極なイメージはありませんね」

「とんでもなく永く生きるからね。クローディアくらいだよ、自分から短命に生きてるのは」

「どのくらい生きてるんですか?」

「僕は真ん中くらいの方だよ。まだ一万年くらいかな」


 エルフの時間感覚がおかしい理由を此処で知るとは思わなかった。この人で真ん中くらいという事は初代クローディアの偉業というモノを知ってるエルフもいるのだろうか。


「初代クローディアについて知ってる人達は子を残して絶命してるから、誰も本当に分からないんだ」

「顔に出てましたか」

「フユミちゃんは分かりやすいかな。もう癖みたいなモノだからね。あんまり人間には好まれないとは知ってるけど、人類種は言葉にしない人が多過ぎるから」


 七騎士として生きてきた彼だから身に付いた技術なのかもしれない。少なくとも他の七騎士はそんな芸当は出来ていない筈だ。軽く関わったからなんとなく分かるだけで、実際は全員出来るのかもしれないけれど。

 それにしても考えている事が分かりやすい顔でしょうか。夜黒くんも私がしたい事を先に感じ取って行動していた節があるから、もしかしたら私は本当に分かりやすい人間なのかもしれない。


「フユミちゃんはそのまま生きればいいんだよ。無駄に考えても辛くなるだけだから。恋人に会いに行くのも悪いことじゃあない。確かに一協会職員と勇者だと釣り合わないかもしれないけど、君の自由はケーニヒ様が保証してる。もっと好きに生きなさいな」


 私の我儘で夜黒くんと会ってもいいのだろうか。夜黒くんにもこの世界での生活がある。勇者とも呼べない私がそんな勝手をして許されるとは到底思えない。

 あんまりこっちばかりに話題が寄っても面白くないから此処で適当に赤騎士さんに話題を返そうかな。


「好きに生きてますよ。赤騎士さんこそ一万年も生きてるなら恋人とか居ないんですか?」

「あはは、中々良いエルフはいないもんだよ。それに人間社会に生きてくれる子なんて滅多に見つからない。人間と付き合っても先立たれるのは目に見えてる。長命種の辛いところだね」

「クローディアさんはダメなんですか?」

「あんな気狂いの一種とはお断りだね」


 クローディアさんの事をそんな風に言えるのは貴方だけですよと心の中で思いながら再開された青騎士さんによる訓練を眺めていた。コレが終わったらバスケットに入れたフィナンシェでも振る舞おう。

 私は、そういうので構わないし、それでいいと思った。

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