0-3-3 適正検査
謁見の間と呼ばれる場所まで案内されるとそこには奥の豪華な椅子に座る白い髭を生やしたおじさんが座っていた。エドワードさんの言う通りなら、きっとあの人が国王様で、この国で一番偉い人。なんだか優しげな顔立ちだなぁ。
「十三人……よくぞ召喚に応じてくれた。心より感謝する。既にエドワードから聞いているかもしれんが、君達を呼んだ理由は黒の魔人を討滅するため。今代のクローディアが危険視したからに他ならない」
夜黒くんと巫女服の少女はまだ上がってこない。何してるのかな。
「そこで君達の魔術適正を測って、魔術師となるか騎士となるかを選別したく思う。これは私も行く末を見守ろう」
「執務は――」
「既に今日分は終わらせてある」
エドワードさんの予想は外れて魔術適正なるものの行く末を王様が見届けるみたいです。魔術師になるか騎士になるかの二択しかないのかな。私としては後方支援が良いなって思ってるのだけど……王様に話しかけたりは出来ないし、ちょっと困ったな。
夜黒くんと巫女服の少女が遅れて部屋に入って来た。夜黒くんは王様がまだいる事に少し驚いた顔をしてたけど、特に気にする事なく淡々と準備を進めている。その間に巫女服の少女が私達の方へとやってきた。
「こんにちは。夜黒さんとお知り合いの方々らしく少し話していたら遅れてしまいました。私は23代目クローディア、貴方方をこの世界に招いた本人とも言えます。そして明日から始まる魔術訓練の指導者にもなりますので、よろしくお願いします。参加は自由なので同時に始まる戦闘訓練に行っても良いですよ」
ある程度準備を終えたのか夜黒くんは綺麗な所作で部屋を出て行った。見守ってくれるものだと思ってたから、少しだけ不安になる。
「今から勇者様方には魔術適正を測ってもらいます。魔術適正についての知識はありますか?」
「色や輝きで見る、程度の認識です」
ここでも須藤くんが活躍。
咄嗟に受け答え出来るなんて凄いなぁ。
「それで結構です。それでは自己紹介も兼ねて、適当な順番でこのオーブに魔力を通していって下さい。魔力の動かし方がわからない人は私が補助しますので」
「いや、なんとなく分かります。みんなも、大丈夫だよな?」
その言葉にみんなが頷く。勿論私も知識としてソレは入ってるけど、きちんと出来るかは不安だ。
「それじゃあお好きな方からどうぞ」
「それじゃあ俺から行かせてもらおうかな。俺は須藤正義。よろしく、クローディアさん」
須藤くんは赤朽葉色の頭髪と瞳をしている。
短い髪に整った顔立ちで他クラスからの人気も高く、名前の通り正義感に溢れた好青年だ。
魔力を込めるとオーブの輝きは強くなり、色も赤に染まる。オーブの色はそこまで細分化されてないみたい。
須藤くんは魔術適正が高いみたいで、クローディアさんが褒めてた。須藤くんなら魔術も騎士も目指せるかもしれない。
「じゃあ次いかせもらおうか。俺は本城尊だ。よろしくお願いしますね」
本城くんは藍色の頭髪と瞳をしている。
逆立った髪の毛が特徴的で、須藤くんに負けない顔立ちをしている。漢という字が似合う人だ。
魔力を込めるとうっすらとだけ輝き、藍色が灯るけれど、黒の魔人を倒す魔術師には向いてないみたい。
「なら次、齋藤誠だ」
齋藤くんは鶯色の頭髪と瞳をしている。
細い身体から想像も付かない力を持っていて、荷物運びなんかは得意だそう。剣道部の次期キャプテンさん。
魔力を込めるとオーブは緑色に輝く。齋藤くんは魔術師って感じじゃないけど……あんまり見た目は関係無いみたい。
「男から先に測る感じになったな。俺は紋土金翔。よろしくなクローディアさん」
紋土くんは名前にもある通り金色の頭髪だけど、瞳は黒い。近くで見せてもらえば純粋な黒ではなさそうだけど、ヤンキーみたいだから私は少し苦手だったりする。優しい所も知ってるけれど、見た目が怖くてなんだか近寄り難い。
そんな紋土くんのオーブの輝きは若干の黄色。魔術師としてもやっていけそうな最低限のレベルらしい。
「じゃあ次行かせてもらおうかな。米俵千石だよ。よろしくね」
米俵くんは黄唐茶色。
ツーブロックと呼ばれる髪型をしている優しげな顔立ちで、良く落とし物を見つけては誰かに届けている気の利いた人だ。
込められたオーブも黄色を示しており、さっきの紋土くんよりも輝きが強い。きっと魔術師になるんだろうなぁ。
「男子最後は僕だね。よろしく、行方行方です」
行方くんは黒紅梅色の頭髪で碧眼だ。オーブには目の色が反映されたのか青色が灯され、須藤くんと同じくらいの魔術適正だった。
クローディアさんは青色は便利だと評していた。行方くんは大人しいけど、飄々としてる所もあるから、空みたいな青色は合ってるかもしれない。でも私の見間違いじゃなければ中央が黒かった気がするけど、クローディアさんはソレには触れないのかな。
これまで頭髪や瞳の色と関係があるみたいだけど、私の場合は黒く輝くのかな。あんまり回復役のイメージとなる色じゃないけど、どうなるんだろうか。
「じゃあ女子のトップバッターは私が貰おうかな! クローディアさん、私は吉良々咲菜、よろしくね!」
吉良々ちゃんは金糸雀色の子だ。
ツインテールが良く似合う天真爛漫な子だけど、ここではまだ大人しい方だと思う。
魔術適正も黄色というか金色に近い輝きを見せていて、クローディアさんが珍しいと言っていた。金色は攻守に富んだ珍しい色らしくまた一人魔術師候補が増えた。
「じゃ、次私ね。恵方真紀」
真紀ちゃんは白と赤が混じった様なカラーリングで、蟹みたい。瞳は発色の良い黄色で見た目と名前がとても縁起良さそうだ。読書友達の一人で夜黒くんとも仲が良いけど、この二人が揃っても何とも思わないのは何故だろうか。
クローディアさんと夜黒くんが二人で内緒話してたら心が騒ついたのに、なんだか不思議。
真紀ちゃんのオーブの輝きは二色。紅白に輝いていてクローディアさんもよくわからないと言っている。二色に輝く事はあるらしいけれど、白があるのに紅を示すのはなんでなのかと独り言を言っていた。
「じゃあ次いきまーす。魚沼麻衣でーす」
魚沼さんは紺藤色の女の子。
ロングが似合う綺麗な女子。濃松さんと仲が良く、ロング仲間としてお互いの髪を梳かしたりしている。
魔術適正は紫色で、輝きが薄いから騎士候補だそう。でも紋土くんよりは強く輝いていたから魔術師も悪くはなさそうだけど、紫だと問題があるのかな。
「濃松千彌です……」
濃松さんは老緑色をしたロングヘアーな綺麗な人。スタイルも良いから女子の間では密かな人気があるけど、あんまり自信は持ってないのかいつも静かな人。
オーブは緑色に強く輝き、今まで見た中で一番強い光を放っていた。運動系じゃない身としては同じ様になりたいな。
「私は加祝夏。よろしくお願いします」
加祝さんは緋色の可愛い子で、吉良々ちゃんと仲良くしているりいつもはもっとテンションが高いけど、やっぱり緊張してるのかどこか硬い様子がある。
オーブの輝きは赤色で、須藤くんよりは弱いけどそれでも強い輝きだ。充分魔術師としてやっていけるそうで、クローディアさんは魔術適正の高い人が多くてやる気が出ますと言っていた。
「じゃあふゆみん、先にやらしてもらうね」
「いってらっしゃい」
秋音ちゃんを見送ると加祝さんと同じく赤色の輝きだったけれど、橙色の輝きも内側から漏れ出てくる。非常に強い魔術に対して高い適正を持っている証拠だとクローディアさんは言っていた。
そんな感じでみんなの魔術適正が測られていった。比較的女子の方が魔術適正か高い印象だ。
どんなに適性が薄い人でもそこそこの輝きは見せており、コバルトさんはかなり頑張ってくれたんだと思いながら、最後の私の番になる。
「四季冬美です。よろしくお願いします」
「……気落ちしない様に」
「え?」
魔力を流し込んで見ると、全く輝かなかった。オーブの中心に黒っぽいモノが見えるけど明らかに他の人達より輝きが薄い。それに、私は前衛なんて出来ないから魔術適正を高くしてと思ったのに……。
「今回使用したのは私用に作られたオーブですので、冬美さんは普通の人と変わらないくらいですね」
クローディアさんも輝きは見えたのかそう言ってくれる。
「ふむ……これで全員かな?」
「陛下、次は騎士としての適性があるのかを見ていきます。目についた武器を取って、人形に振るってもらうだけですけどね」
「なるほど」
ここでも須藤くん達三人は高い適正を見せた。
初めて武器を持った筈なのに、まるで昔から使ってるみたいな身のこなしで自動で再生される人形を攻撃していく。三人曰く、目についた武器以外では同じ様にはいかない、との事。
他の人達も得意な武器はあるみたで、用意された様々な武器を振るっては人形を撃破していくが、自分には未だに目につく武器がない。被らないなんて事はなく、剣が得意な人は複数人いたし、私は神様から何も貰えなかったのだろうか。
「すみません。目に付く武器がないのですけど――」
「分かってはいましたが、まさか勇者の召喚に巻き込まれた者がいるとは……完全に此方の落ち度ですね」
巻き込まれた者とは、つまり、何の力も無い人のことなのだろうか。私は確かにみんなと少し違うかもしれないけど、私の意思で此処に来たのに、巻き込まれた――無能の存在という烙印を押されたのだろうか。
「ふむ、フユミとやら、君には巻き添いの者として自由に暮らす権利を与えよう。君の自由は我、ケーニヒ・アテナが保証する」
そんな事を保証されても、嬉しくない。
「君はやりたい事をやりたい様にするといい。さて、勇者諸君には部屋を与えなくてはな。使用人を呼ぼう」
王様が立ち上がるとスタンバイしてたのか十三人の使用人さんが入ってくる。男には執事が、女には女中があてがわれ、部屋に案内される。
その時、夜黒くんから貰った手紙を思い出した。
「フユミ様は此方の部屋となります。何か御用がある際はそちらの呼び鈴を鳴らして下さいませ」
「は、はい、ありがとうございます」
「失礼します」
豪華な内装だけど、今は夜黒くんからの手紙を読もう。
『やあ冬美。適正検査が終わったら城の正門に来てほしい。二人で話したい事がある。日が暮れたら出て来て欲しい。冬美の立場なら外出も許される筈だ』
これは、私の事を知っていて書いたのかな? でも夜黒くんは準備を終えたら出て行ったから未来が見えなきゃこんな事は書けない、と思う。
とりあえず外出許可を貰おう。
呼び鈴を鳴らすと、さっきの女中さんがやって来る。
「何かありましたか?」
早速呼ばれるとは思ってなかったのか若干不安そうな顔をしているが、私はただ外出許可が欲しいだけです。お城に仕える人は些細な失敗も許されないのだろうか。
「外に出たいのですけど、案内してもらえますか?」
「外、というと」
「お城の正門に少し用事があって……」
「それなら大丈夫だと思います! 案内しますね」
自分の失敗じゃないと知るとこの女中さん、かなり元気になったなぁ。なんだかこの人とは仲良くなれそうな気がする。
「女中さん、お名前はなんて言うんですか?」
「私ですか? 私はメイナードです。気軽にメイと呼んで下さい」
「よろしくお願いします、メイさん」
「はい!」
とっても仲良くなれそうで、安心しました。
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