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これは“世界”を救う物語。  作者: 高平めめこ
ヒトトセヤクロトイフモノ
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0-2-59 乙女達との話し合い

 色々な検査が終わり、各自与えられた部屋へ寝泊まりする様に言い付けられている。冬美に力が無い事は検査でも分かったそうだが、ケーニヒ様はそれでも無能の烙印は押さずに巻き込まれた者として扱う事にした。

 巻き添い(・・・・)は何でも出来る様にされている。剣を習うも、魔術を習うも良し。ギルドの受付嬢、魔術協会の案内人、王城での食事付きの引きこもり、本当になんでも許される。

 ケーニヒ様は歴代の中でも優しさが目立つ王であるらしいから、俺としては本当に助かるよ。


 そして夜になった事で王城の外で冬美の事を待つ。

 手紙にて日が沈んだら王城正門にて待つ事を伝えてあり、衛兵の人も俺が魔術協会の人間だからと正門に留まる事を許してくれた。

 日が沈んだら、というアバウトな時間帯と、初日の勇者の集まりだからある程度遅くなるとは思っていたがまさかこんなに夜になるとは思ってなかった、というのは内緒だ。


 漸く王城から制服姿の女性が出てくる。


「夜黒くん……」

「やあ、冬美。ここじゃあなんだから、場所を移そう。衛兵さん、また来るよ」

「お気を付けて」


 正門に転移魔術のマーキングを施す。

 防衛魔術が張られていたが、クローディアさんの執務室と比べるとなんと軟弱なモノなのだろうか。クローディアさんくらいしか分からない様に施せた。


 冬美の手を握り、魔術協会の自室へと転移する。メンヒさんは世界に溶け込んでおり、いつでも好きな場所に顕現出来る状態だ。会話は筒抜けだが、聞かれても問題はない。


「これが、魔術……」

「酔ったりしてないか? こういうのって酔うパターンとかありそうだけど」

「ううん、大丈夫。夜黒くんは、魔術の適性が高いの?」

「まあ、人並みって所だ」


 嘘。

 本当は世界最高クラスの純白適正なんて、さっき無力に等しいと言われた存在にこんな事言える訳がない。魔術を習えば俺の嘘にも気付き始めるだろうが、今は冬美に余計なストレスは与えたくない。

 この優しさは、後で怒られるかもしれないな。嘘吐くと冬美はよく怒る。精々叱られない程度に魔術を披露しますかね。


「私は……普通の人と変わらないって言われた」

「気にする事はないだろ。冬美は菓子作りとか得意だから城で菓子でも作ってみんなを待てばいい。それも、立派な務めだ」


 自分の無力を感じているのだろうか。

 俺としては冬美が危機に晒される事は避けたい。だから良い提案だと思ったんだが、どうやら欲しい答えは違った様だ。


 こんな時は、そうだな。本題を切り出そうか。


「突然だが冬美は、そうだな――生まれつき黒髪黒眼か?」

「えっと……」

「質問を変えよう。黒髪黒眼が基準の世界線から紛れたのか?」

「……うん。起きたらみんな漫画みたいな髪の毛で、それに夜黒くんがトラックに轢かれたって。秋音ちゃんは前日に鮫太くんみたいに突然消えたって言ったのに、次の日にはトラックに轢かれたそうだなんて言って、私にはもうなんだか分かんないよ」


 恐らくこの冬美は俺と同じ世界線の冬美だ。秋音と歩いて消えた黒髪黒眼の世界線、複数あるとは思えない。

 なんらかの不幸でこの冬美はこの世界に引っ張られたんだろう。これはクローディアさんに報告した方がいいかな、取り敢えずメモは取っておこう。


「夜黒くんは、私の知ってる夜黒くんでいいの……?」


 そりゃあそうだ。

 冬美は実質一人ぼっちの状態で、しかも異世界に渡って、一人だけ力がなくて。普通の高校生なら不安になるか取り乱すだろうに。大人しいのは相変わらずなんだな。


「秋音の前で何人も俺が消えるとは思えないからな。貴女の恋人の、春夏秋冬夜黒だよ。もう三十一歳になったけど」

「おじさん?」

「やめてくれ、クローディアさんから結婚しないのかとか言われてるんだから。そっちは俺が消えた翌日みたいだな。世界間で時間の流れはこんなに違うのか」

「クローディアさんて、あの巫女みたいな人だよね。一緒にいるから、私の事忘れたのかと思って――」

「俺が責任を負うのは冬美との付き合いだけだよ。それ以外は考えられない。三十越えたおっさんになった今もそう思ってる」


 どこで確信を得たのか分からないが、冬美は俺に抱きついて来た。恐らく世界線が違った俺にならしない行為だろう。好きな人と触れ合えるなんて、こんなに嬉しい事だったんだ。


 名残惜しいが、今の俺達は魔術協会の一職員と勇者。

 そろそろ離れないと、国王の小言が飛んで来そうだ。あの王様は割と失言とか許してくれるけど、転移初日の勇者が外で寝泊まりはいかんだろ。


「さて、あんまり勇者を拘束するのも外聞が悪い。さっきみたいに送るよ」

「また会える……?」

「勿論」


 冬美の手を握り、転移魔術で王城正門に飛ぶ。

 さっきの衛兵さんが突然現れても表情を変える事なく出迎えてくれる。此処から先は許された者のみが立ち入れる。今の俺にその資格はない。


「ヤクロ殿、お早いですね」

「お互い知らない仲じゃないからな。聞きたい事は今の所一つだったし」

「成る程、それでは私は勇者様を案内しますので」


 手を振り見送る。

 これからすべき事は幾らかあるが、先ずはクローディアさんに連絡しないと始まらない。国王の判断でもあるから、あの人も分かってはくれると思うが、一応だ。


『クローディアさんは、今どこ?』

『執務室に戻りましたよ。今日は顔合わせ程度ですので』

『それじゃあ今から行くよ』

『お待ちしてます』


 再び転移魔術で、今度はクローディアさんの執務室に飛ぶ。冬美を危険に晒す訳にはいかない。

 異世界人だが、冬美の魔術適正は一般人並み、家庭仕事に魔術を用いるのが関の山。剣なんて扱えないだろうし、なんとしてでも前線から外して貰わなくてはならない。


「四季冬美について――」

「勿論前線から外します。アレで戦えとは言えないでしょう」

「そうか‥……良かった」


 クローディアさんが紅茶を魔術で入れて、差し出してくる。この香りは焦りや緊張を解すハーブだっただろうか。

 終始上司に気を遣ってもらって、本当に頭が上がらないな。この人の察する力は魔眼含めて見ても、かなり高い。クローディアの責務にのみ没頭しては得られないモノを持ってると思う。


「明日は私は魔術の講師として呼び出されています。アルマ様がお手隙となるので、夜黒さんはアルマ様と顔合わせしておいて下さい。黒の魔人を滅するに必要なお方です」


 二十歳の英雄。

 俺は関わりがないから深くは知らないがあらゆる祝福をその身に受けた努力を怠らない天才。その剣技は七騎士と複数対一でも引けを取らない程だそうだ。

 七騎士にも会った事は未だにないが、単純にクローディアさんの剣士バージョンだと思えばかなり凄いとは思う。だけど、だ。


「新しい英雄様ねぇ……信じて良いのか?」

「実力だけ見れば私より上かと」

「人格は?」

「まだまだ子供ですよ。もちろん貴方も」

「ははは、そりゃあそうですよ。クローディアさんと較べたら――」

「『鞭打』」

「――ッ、痛い!」

「女性の年齢は、考えない事です」


 全くこの人も子供じゃないか?

 万年とは言わないが数千は生きてるんだろうし、年齢イジリに耐性がないのは可愛いんだか、なんなんだか。


「もう一発欲しいみたいですね」

「さらっと心読むの止めてくれよ」


 クローディアさんが静かに紅茶を一口含む。


「夜黒さんにも講師の補助を頼みたかったのですが、貴方の適正と彼等の適正には余りにも差がありますので。そういう理由で、明日はアルマ様とお会いして下さいね」

「わかった。場所は?」

「此処の四階会議室です。一番奥の広い部屋を確保したおいたので、()()()()お使い下さい。時間は朝の九時からです」

「……なるほどね、了解した。それじゃあおやすみクローディアさん。明日は頑張ってな」


 転移魔術で自分の借りてる部屋に転移する。

 誰もいない事を確認したのか、澄んだ透明な魔力が集まり、形を成していく。メンヒさんは随分人間のタイミングを理解した精霊の様だ。


「あの子はフユミというんだね。子供達にも少し優しくしてあげる様に言っておこう。シュレディンガー殿とは違う、ヤクロ殿の大切な存在なのだろう?」

「ははは、お気遣いどーも」

「友の為だ。私にはそれくらいしか出来ない。それでは今夜ももう遅い。人間には睡眠が必要なのだろう。おやすみ、ヤクロ殿」


 そう言うとメンヒさんは魔力を散らしてその場から消える。未だ残滓が残ってるからいつでも駆け付けられる態勢だが、あの人も過保護なもんだ。、


 明日も用事はある。今日はもう寝よう。

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