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これは“世界”を救う物語。  作者: 高平めめこ
ヒトトセヤクロトイフモノ
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0-2-56 戦う王様

 猫人の国に滞在すること一週間と少し、猫人の文化も知れてそろそろ場所を移動しようとした時に、猫がビクリと震えた。


「にゃ、誰かが無理矢理入ってきた」

「位置は分かるか?」

「にゃー、結界の名残を身体に付けてるから……一直線に此処に向かってきてるね」


 邪な存在であれば迎撃する。他の人達も何事かと表に出てくる。俺と猫を見て、何かが起きていると察して森を眺めている。

 魔力の塊を幾つか展開して国の中心に立つと、かつて見た黒い物質が正確に一人の人間を貫く。腐食ではないのか、貫かれた人は肉体が消え去る。


「にゃ……黒の魔人……」

「なんでここに……」


 飛来する黒の物質を防ぎながらその存在の到着を待つ。恐らくこれは“魔法”だろうが、魔力だけで何とか防ぐ。未だ“魔法”を切る訳にはいかない。今が、戦う時なのかもしれない。


 森の奥からかつて俺が来ていたコートを羽織る彼女が出てくる。その周囲には黒い物質が球状に浮いており、今も人間に向けて鋭い鎌となって襲いかかる。


「にゃー! もう誰も殺させない!」

「私も手を貸そう」


 猫がサーベルでその一撃を逸らし、メンヒさんが高密度の魔力で、再び襲いかかろうとしたソレを消滅させる。


「……人が減らない理由はあんたらの所為か。一人は知らな――精霊王? 強そうだな」


 身長も伸びており、かつては地面スレスレだったコートも幾らか余裕がある様だ。成長した姿は、冷たいという言葉が良く似合う美しい女性となっていた。


「夜黒、あんたはまだ戦う相手じゃない。その猫の力を貰いに来ただけで。あんたはそこでじっとしていてくれると助かるんだが――」

「生憎この世界での数少ない友人が襲われるのを黙って見ているつもりはない」

「私も協力しよう。シュレディンガー殿を襲う輩は成敗しなくてはな」


 猫を守るように俺とメンヒさんが前衛となって態勢を整える。あの子の狙いは猫、そして俺と戦うつもりない、ならば本気で当たる事は無いはずだ。

 もし、ここで戦うのであれば“魔法”を使ってあの子を殺す事も視野に入れなくてはならない。あの子はもう忌み名の広まった罪人なのだから。


「“逃れ得ぬ人魔の束縛”」

「――ッ!?」


 俺の周囲の空間から鎖が伸び、肉体を貫き固定される。貫かれた痛みはなく、違和感がただあるのみ。加えて身体に鎖が巻かれ、魔力を一切展開出来なくなる。


「ヤクロ殿! 今解放――」

「あんたは後回しだ。今は散ってくれ」


 メンヒさんの肉体が崩壊していく。魔眼で見るに、顕現する為の魔力が霧散しているが、その魔力は消えていない。集まろうとしているが集まれない、そんな状態だろうか。とにかく俺達は呆気なく無力化された。

 このままではいけないと、過去回避を試みたが何故か発動しない。未来固定も発動しない。何かしらの“魔法”による先手を打たれたのだろう。

 “魔法”による拘束だと分かっていても、踠いてみたがどうにもならない。踠く程鎖が増え、最早全身が鎖に巻かれる。殺すのであれば口にも巻き付けるだろうが、顔には不思議と巻かれない。本当に俺と戦うつもりはないらしい。


「にゃー、何が狙いで、“ⅱ”は何を望んでる」

「……お前の力を手にしたいだけだよ。シュレディンガー、その力は実に私の復讐を遂げるに相応しい力だ。“ⅱ”の望みは知らない、これは私の意志だ」


 虚空から巨大な漆黒の大剣を二振り取り出す。それは黒鉄による彼女の身長を越える大剣だった。黒鉄はこの世界で最も硬度の高い金属であり、重量もあり加工の難しい物質だ。余りにも魔力を通さない事から魔術師に嫌われているソレが大剣として存在しているのはヘレナ王国の護国卿が有していた二振りの物しか存在しない。

 確かにヘレナ王国の村も滅ぼされている。その時手に入れたのだろうか。護国卿が変わったなんて話は聞いていないが、魔力を封じられた今はクローディアさんに確認する事も出来ない。


「……にゃはは、僕はシュレディンガーまたはケット・シーあるいはバステトやリンクス。やられる訳にはいかないね」

「そう言えば名乗って無かったな。私はカルマ、姓は捨てた」


 猫は低く笑った。

 頭髪は漆黒に変わっており、身体強化された猫は低姿勢でカルマと名乗った彼女に肉薄する。


 厚く造られた片方の黒鉄大剣を地面に突き刺し猫のサーベルを防ぐ。猫はその反動で回転し、地を蹴り別の角度から“魔法”による魔力の矢を放つ。

 あの子はソレを最低限の動きで回避し、突き刺した大剣を片手で持って二刀流の姿勢を取る。それは噂に聞いた、腰を落として両手を開く様に構える、ヘレナ王国護国卿の黒鉄大剣二刀流の構えだった。


「にゃ!」


 サーベルに魔力の糸を付け、投げ放つ。速度は高速だが、猫には何か狙いがあるのだろうか。


「ふっ」


 左の黒鉄大剣で弾いたソレは何処かに飛んで行く事はなく、黒鉄大剣に魔力の糸が絡まる。猫はそれを引っ張り、短杖の先に形成した魔力の刃で斬りかかる。左が引っ張られた瞬間にあの子は大剣を放棄して両手で右の黒鉄大剣を握る。

 あの子は今の状況を予見していたのか、僅かに動かした黒鉄大剣でその一撃を防ぐ。魔力を通さない性質が作用したのか猫の魔力の刃を霧散させる。


 猫はサーベルを手元に引き寄せ、短杖に再び刃を発生させる。今度は先程よりも長く、歪曲している。所謂ショーテルの形になる。

 あの子は破棄した黒鉄大剣を魔力で持ち上げ、ソレを地面に突き刺し裏に隠れる。猫は魔力の刃を伸ばし、ガードの裏に刃を届かせるが、もう片方の黒鉄大剣に阻まれる。衝突しても霧散するから弾かれる様子は見られない。

 再び魔力の刃を伸ばし、同じ状態を作るが、先程とは違って猫がガードの裏に回りつつ刃を伸ばしている。


 挟み撃ちの形だ。


 両手を用いた黒鉄大剣による防御で魔力の刃は消滅するが、猫のサーベルはあの子の身に届いたのか、猫の動きが止まる。


「漸く近づいてくれたな」

「にゃ!?」


 左手を薄く輝かせたソレは見慣れた技だった。

 クローディアさんが俺に使った魂を取り出す技。この数年の間魂を観察されていたから猫も見ているはずだから、ソレを触れることなく、身体の柔軟性を利用して仰け反って回避する。

 その際サーベルを振り上げて、あの子の身体を刻む。あの子に傷を付けられたのか猫は笑う。


「にゃはは、あぶないあぶない」

「逃げられたか」


 再び両者が構え直す。これで振り出しに戻った形だが、猫の髪の毛はもう半分ほど元の藍色に戻っている。反対にあの子は周囲に黒色魔力の塊を浮遊させて、余裕そうだ。


 メンヒさんも戻ろうとしてるが、魔力が集まっても形を成せていない。俺の方も踠くが、鎖は一向に解ける気配はない。鎖同士が融合して、細く硬くなっており、見た目では緩んだ様だが、拘束はより堅牢になっている。だが、虚空から伸びる鎖の端が焼き切れていっているから、時間制限はあるらしい。


「早いとこ決めたい所だ」

「にゃはは、それなら、帰ってもらおうかな!」


 猫が魔力を激らせるのに対して、あの子は静かに構えている。だが、両手に持った黒鉄大剣を滑らせ重ねる様にして、一本の武器に変える。

 武器はパズルのピースが嵌る様にくっつく。

 噂通りの合体剣。間違いなくヘレナ王国護国卿の物と見て間違いないだろう。二つ合わさる事で重みが増し、一撃の威力が上がる。


 ソレに呼応したのか鎖も徐々にだが短くなっていく。メンヒさんも薄らと身体を形成出来る様になってきた。


「にゃ!!」

「ふっ!」


 両者の武器がぶつかった。

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