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これは“世界”を救う物語。  作者: 高平めめこ
ヒトトセヤクロトイフモノ
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0-2-53 再来した黒の魔人

 クローディアさんの凍結案件を解決する生活を始めて七年が経った。猫は飽きずに俺に着いて来ており、最早この世界での相棒とも言える。


 そんな俺は今非常に困っていた。


「夜黒さん、黒の魔人が再び目撃される様になりました。かつての特徴よりも成長しており、その行動は賛否が別れるものとなっています」


 あの子が西大陸から戻ってきたのだ。


「救われた村もあれば、滅ぼされた村もある。魔術協会としては再び忌み名を広めるのか、非常に悩んでいます」


 これには流石の俺もお手上げだ。

 昔はあの子の悪名を広げない様にフォローしようとしたが、今再び戻ってきて規則性の無い行動を取られてはどうしようもない。


「夜黒さんは生きて黒の魔人に触れた貴重な参考人です。今再び忌み名を広めるか、それに値しないか、是非一言貰いたいのです」


 クローディアさんが机を挟んで此方を見てくる。

 普段の優しげな眼差しとは違い、真剣なものだ。


 俺としてはこれにどうこう言える権利は無いと思ってるし、クローディアさんの中では既に答えが決まっているとも思える。この人は一度決めたら曲げない節があるのはこの十数年の付き合いで分かった事だ。


「俺としては、未だ見定めるべきかと」

「十二の村が襲われ、生き残りは発狂していました。私の魔眼がなければ彼女だとは確定出来なかったでしょう」

「手口が以前と変わっている……救った村もあるはずですが」

「其処が難しい所をなのです。救われた五つの村は魔物による被害を完全に無くされています」


 ああ、ダメだ。


 クローディアさんはきっと忌み名を広めるんだろう。でも俺があの子を気に掛けているのを知っているからこんな茶番をしている。


 ならば、言おう。


「救われた村を考えると忍びないですが、忌み名を広めるべきかと。それだけの事は、してしまっている」

「……いいんですね」

「そうするべきと貴女も思ってる筈だ」


 目を見て答えれば、クローディアさんは居住まいを正し、手を右に薙ぎ払う。


「『伝播』」


 クローディアさんの眼前に青白い横長の長方形が映し出される。


「黒の魔人を再び忌み名とします。以前と同一固体です。それぞれかつての資料及び新規の資料に目を通す様に」


 全魔術協会及び冒険者ギルドの長に通達が降る。

 必要な事項だけを述べた後にその長方形は閉ざされ、クローディアさんは一つ息を吐く。深く大きなため息だった。


 仕方ない。流石に俺もこの判断を止めるのは憚れる。

 救われた村からしたら英雄の拒絶なのかもしれないが、あの子が村々を壊滅させたのは事実なんだから。


「夜黒さんはもう少し、あの子供に対して情のようなモノがあると思っていたのですが」

「さっき言った通りで、そうすべきとクローディアさんも思ってるだろうし、俺も擁護できない事実がある。忌み名を見送っていた事に驚きだ」


 クローディアさんは椅子に深く座り、魔眼を発動させて此方を見てくる。この数年で魔眼とか、不意打ちの悪意とかに敏感になった。これも成長と言っていいのだろうか。

 クローディアさんの魔眼は蓄積解読。きっと俺の思いを解読しようとしてるんだろうが、俺個人としてあの子に思い入れがあるのはあの子との出会い方にあるだけで、実際はそこまで思いやりがあるわけではない。


「それでは、緊急依頼を出します」


 ああ、そうか。

 確かにこれは凍結案件よりも難度の高い依頼で、それでも一度生還した俺が適任なんだろう。


「黒の魔人について調査せよ、これは他の依頼と重なっても構いません。ですが、出来得る限り迅速に解決して下さい」


 クローディアさんから最新の資料を貰って、退室する。


「はぁ」

「にゃー、どしたの?」

「いや、荷が重いなぁってな」

「にゃはは、その辺歩いてればいつか見つかるよ」


 猫の言葉の通りだ。

 歩いて探してればその内見つかる。あの子がどんな成長をしたのか分からないが、こっちも成長はしている。前までは見えなかった猫の魔力も見える様になってるし、俺を基準にその輝きとかも見れるから、今や大抵の魔物は相手にならない。

 今や竜の群れでさえ、俺一人で対処出来るくらいにはなった。今やおれも29歳と肉体の全盛期は過ぎているが、この世界のお陰だろうか、今が全盛期の様だ。


 部屋にたどり着いて扉を開ける。

 なんだかんだでこの部屋に戻るのも三年ぶりくらいだろうか。最後に入ったのは王都の地下水道の掃除の時か。あの時はスライムの厄介さを味わったなぁ。


「暫くあけてたから、埃っぽいな『清潔な空間』『業火』」


 魔術で室内の埃を一箇所に集めて灰すら残さずに全てを燃やす。“魔法”を使えばもっと手っ取り早く綺麗に出来るが、初代クローディアの因子は有限。いつ大量に必要になるか分からないから取っておくに越した事はない。


 この七年で必要になったかと問われると微妙なところだが、念の為、というのは非常に大事だ。

 それに、微妙と言ったが極東の鬼ヶ島での鬼狩りに於いては非常に“魔法”が役に立った。あの鬼どもは現状の世界に不満を抱いていたらしく、魔術を無効化する術を持っていた。単純な力では鬼は一線を画す。故に魔術を無効化してきたわけだが、“魔法”までは無効化できなかったらしい。


 “魔法”については、クローディアさんは魔術に何かが入るという情報以上の事は得られなかったが、ソレを阻止する術を編み出して、見事に“魔法”が発動しない状況が作られた。

 クローディアさん自身何か思うところがあるのか最近は封印術の開発に勤しんでおり、“魔法”対策と併せて行われている。


「にゃー、ただいまー」

「はい、おかえり」

「にゃはは、やっぱり此処は落ち着くねぇ」


 今やるべき事はあの子――黒の魔人に対する対策だが、正直俺では“魔法”を無効化する理論なんてちんぷんかんぷんだからそっちはもう投げ捨てた。

 と、なると、出来るのはあの子に殺されない対策である。もし今が戦う時だと判断されたら堪ったもんじゃあない。


「なぁにが出来ますかねー」

「にゃー、行き当たりばったりも良いかも」

「そうだなぁ」


 正直それしか思い付かない。


「にゃはは、取り敢えず探さないとどうにもならないし、クローディアも期限は言わなかったから旅行気分で世界を回らない?」

「そうだなぁ、それに、この世界について俺は未だに知ってる事が少ない。見て回るのも悪い話じゃないな」


 猫と二人で世界を回る。

 目的は忘れないでのんびり『飛翔』で世界を回れば情報も集められるし、悪い事は少なくともないだろうな。


 取り敢えず、必要な物を買って旅の支度をしますかね。

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