0-2-46 オブジェクトの解体
無事魔力溜まりの前へとやってきた。
特筆すべき事もなく辿り着けた。飛行魔術を習得していたから黄金の魔力草の時とは違いすぐに依頼の地点まで来れた。まさか六年の成長をこんな形で実感するとは思わなかったな。
「にゃー、これは濃いねぇ」
魔力が色を伴って、煙の様にその場に留まっている。
外から見た限りでは森の中に出来た魔力溜まりという感想だな。無事に終わればいいんだが……どうなることやら。
「普通の人は近づけないな。魔力の発生源さえ叩ければいずれ落ち着くだろうし、一周して中央がどの辺なのか確認しますかね」
「にゃはは、手っ取り早い方法だね」
『測量』を用いて魔力溜まりの外郭を測り歩く。この魔術も遠距離不適正が適応されないモノで、目や自身の身体を使って測量する事で、欲しい情報を正確に頭に入れてくれる便利な魔術だ。
カテゴリーとしては家庭魔術と呼ばれるモノらしく、家の間取りを測ったりして重宝される魔術らしいが、俺としては狙撃に向いている魔術だと感じた。
目測でも正確な値が取れるなら風や相手の動きを見てから遠距離で撃ち抜けば凶悪な運用法だと告げたらクローディアさんは瞳を輝かせて聞いてきたのは良い思い出だ。
この世界の魔術は応用性に溢れている様に思える。
それか、初代クローディアが意図的にこれはこうと教えたとしか思えない。あの人はきっと魔術なんか気にも留めてないんだろうな。きっと誰も魔法が使えないから魔術を広めたとか、そんな感じじゃないだろうか。
猫と適当に雑談している間に一周し終わり外郭が測り終わり適当な値が得られる。大体この辺が中央なんじゃないかとアタリを付けて魔力溜まりへと侵入する。1メートル先も見えない紫の濃霧だが、中央付近まで来ると何かの組まれたモノが目に留まる。
「これは、骨か?」
「にゃー、竜の骨だねぇ。意図的に此処を作った誰かがいる、って感じかな」
「竜の骨か……実物は初めて見るな」
触れようとするとバチンッと手が弾かれる。
「こりゃあ、相当高度な魔術師の仕業か?」
それかあの子が意図して――そんな事するメリットあるか? それに死因の傷に腐食はなかった。ダメだな、あの子を意識し過ぎてる。
思考を修正してこの組み立てられたオブジェクト? に張られた結界を解除しようとした時、いきなりオークが現れる。これは――
「にゃ!」
最悪だ。
「クロ! この魔力溜まり、ダンジョンに繋がってるよ!」
一番考えたくなかったパターンだ。
それに魔物が溢れてるって事は、ダンジョン内の魔物は飽和状態だ。ダンジョンに繋がってるだけじゃあ魔物は外に出てこれない。ダンジョン産の魔物はダンジョン内でなくては生きていられない縛りがこの世界にはある。
「にゃー! 魔物は僕がやるから、クロはそっちお願い!」
「言われなくてもだ」
こういう時の猫の判断は速い。俺ならワンテンポ遅れるが、場数がモノを言うとはこの事だ。
猫一人に負担を負わせる訳にはいかないから全力でこの像の解体に取り掛かる。
表面の結界は幾何学模様。
古典的な結界魔術だな。今風なら立体魔法陣みたいなヤツだ。それが一番魔術を扱うに適しているらしい。
触れただけで軽い衝撃を発するって事は力のベクトルを倍増させて反転させているのか、雷撃仕込みの感応型なのか。触った感じは前者だな。
爆弾の解体なんてやった事はないがそんな感じだ。
幾何学結界の解除用の魔力を練ってから、込められた魔力と同質同量の反する模様を重ねて相殺させる。
表層の解除が終わった際にオーガの棍棒が迫るが、猫のサーベルに細切れにされていた。
次はなんだろうか。
こういうのは触ってみないと分からないのが難点だが、俺には魔眼がある。見てみると苔の様な緑色をしていた。
触れたら毒、もしくは腐食するとか嫌らしい付与結界だ。
これはどういう結界だろうか。魔力の流れを見るためにポーチから準備していた魔力を霧散させる鉄製の棒を突き刺してみる。
これも幾何学結界か。
生憎棒は腐食して使い物にならなくなったから適当に魔物に投げつけて腐食させた。持続性のある腐食な辺りやっぱりあの子なんじゃないかと思うが、今の所無視だ。
使われてるのは基本的に古式なんだな。中層に来てもコレなら見えてるもう一枚の結界も幾何学結界と見ていいかな。
さっきと同様の方法で、今回は炎の属性を混ぜて相殺する。毒やら腐食やら、緑は赤に弱い。
ひっぺがした結界が消え去る前に俺に向かってきたゴブリンに巻き付かせる事で燃えながら腐食させた。
さて、最後の結界は何かな――なんだこれ。
立体魔法陣でも幾何学結界でもない。綺麗な球状の結界だ。初心者がやる結界だが、何かしらの意図があるのか?
込められた魔力も無属性でただの結界でしかない。解除方法はこれより多めの魔力を持った魔術をぶつければ良いだけだが、何かあるのか。
「『魔力砲』」
放たれたら魔術はそのまま結界を破壊すると思っていたが、結界に吸い込まれてしまう。すると幾何学模様が浮かび上がり、コレが放たらた魔術を吸収して完成するタイプの魔術だと理解した。
「ありか、そんなの。でもこれ、魔力溜めてまた撃てば壊れるな。完成してるし、変更は効かないだろうし」
再び魔力を展開して『魔力砲』を放ち破壊する。
これで全て解除完了だ。後はコレを崩すだけだが、念の為魔眼で確認したが、竜の骨にはなんの仕掛けもない。
「えいやっ」
蹴っ飛ばして崩してから『廃れる焔』で骨を焼き尽くす。爆裂系統でも良いんだが確実に欠片すら残さないで破壊するならこの方法に尽きる。
「終わったぞー」
「にゃー……こっちも終わったかなぁ」
「後は魔力散らすだけだから、そこにいろ」
「にゃーい」
先程お釈迦にしたのと同じ鉄の棒をまず真下に突き刺して、残りを適当に投擲して周囲の魔力を散らす。西大陸の開拓をする為の道具だが、量産されてるし、型が古いから本部の人が譲ってくれた。
最新式のは傘みたいに開くらしい。見てみたいが、魔大陸とか呼ばれてる西大陸には行きたくない。それに今はあの子がいるから尚更行きたくない。
「さすが西大陸用だな。残留魔力がもうないぞ」
ものの五分で散らし切った事で視界が晴れ、一つの山が目に入る。土を押し固めて作られた簡易的な祠の様だが、魔眼で見ると転移系統の色が見え、刻印がされている。
「にゃはは、ダンジョン出来てるねぇ」
「入ったら出られない系か?」
「にゃー、転移はものに寄るかなぁ」
「一旦戻ろうか。コレは後から俺たちがどうにかすれば良い」
「にゃー、そうだね」
祠の前に転移魔術のマーキングをしてから、猫の手を握って転移魔術で魔術協会ヘレナ王国辺境都市の支部の借りている部屋に飛んだ。
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