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これは“世界”を救う物語。  作者: 高平めめこ
ヒトトセヤクロトイフモノ
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0-2-44 護衛される側

 クローディアさんからの凍結案件を渡されてから準備に数日をかけた。理由は国を跨ぐからと、最後のクローディアさんが不自然だったから。目を瞑ると言ったな、あれは嘘だ、ってね。流石に黒色魔力の使い手に襲われるなんて事態にはならないだろうが、万全を機すのは当たり前だ。

 どんな依頼でも危険はある。ましてやクローディアさんに回ってくる依頼なんだから戦闘はあると見て良いかもしれないと最近思い始めた。


 そんな俺と猫は現在魔術協会の出している馬車に乗って隣国のヘレナへと向かっている。初代クローディアの発足した魔術協会は全世界に渡って設置された機関であり、小さな国では冒険者ギルドと併設されている事も珍しくないそうだ。

 そんな魔術協会の、本部特別推薦枠の俺の待遇は「触らぬ神に祟りなし」であり、全世界にクローディアさんが周知させたそうだ。変に絡まれるよりはマシだが、なんだか真っ当な方法でキャリアを積んでる方に申し訳なさを感じる。


 そして、魔術協会間では定期便が出ており、出張などで頻繁に利用されるこの馬車は冒険者も護衛として駆り出される割の良い仕事の一つ。

 なんせ乗客は殆ど自衛が出来るし、なんなら冒険者よりも強いなんて事もあるそうだ。なんだか不思議な依頼だ。冒険者はそのチームもしくは個人に合わせた方法で護衛をする。魔術師であれば相席するし、戦士系統であれば並走する。

 馬車の速度はそこまで速くない、というかのんびりだ。これには速く進むと尻が痛いと訴えた時のクローディアが原因らしく、魔術協会の定期便は歩く速度みたいなモノだ。


「にゃー、速くしても快適だと思うけどねぇ」

「そうだな。このクッションとかモフモフだ」


 今回は二人組パーティーの、かつて俺に忠告してくれたあの時の先輩冒険者だった。向こうも黒髪黒眼で印象的だったのか顔合わせの時は手を上げて応えてくれた。

 相変わらず右目には大きな傷跡があり眼帯姿は変わらないが、彼は通常の最高ランクであるA級位の冒険者となっていた。

 自己紹介で彼の名前がヴィルヘルム・ケンプファーであると分かった。戦い方は自己強化をした戦士というもの。呼び方はヴィルで構わないそうだ。相方はシャルロット・フランコティラドールという魔法剣士らしい。フランと呼べと言われた。


 俺が関わらなくても時は流れている。余りにも自分中心な考え方だが、この世界は漫画や小説の世界なんかじゃない。

 俺にも意思があれば、猫にもある。それはこの世界に生きてる人にも言える訳で、六年ほどこの世界にいるが改めて時の流れというモノを感じた。


 馬車はのんびりと進み、お昼の休憩時間に入った。騎手の人は馬に餌を与えており、冒険者の人達も携帯食や水分を補給していた。今回は隣国まで行く様に設定しているが、この馬車はアテナ王国の辺境までしか行かない。

 南の湿地帯を迂回する様なルートで二つの都市を超えて、国境を超える馬車は別にあるそうだ。


 このペースなら一週間もあれば到着してくれそうだ。陸路で夜も疲労回復の魔術で働かされる馬や冒険者は慣れていないとかなり過酷らしい。上手い話には何かあるとは思うが、夜も仮眠なしで働かされるとか冒険者って辛いな。


「にゃー、魔物に襲われないねー」

「襲われたいのか?」

「にゃはは、暇なんだもーん」


 まあ確かに暇だな。

 襲われる可能性の少ない舗装路を行くこの旅路は確かに暇なものかもしれない。森で痕跡を探している時なんかは所謂ゴブリンに猫が襲われたり、森に溶け込んだリザードマンに二人して襲われたりと色々あったからなぁ。


 何かいい暇つぶしはないかと探るが、相席している人もいないし、先輩冒険者に話しかけるのも憚れる。


 昼休憩も終わり再び動き始めた馬車に揺られながら猫と二人、会話もする事なく時間だけが過ぎていき、馬車内の時計が三時頃になった時肩に重みを感じる。

 猫が眠気に負けたらしい。電車とかでも終電だと冬美は俺の肩に頭を乗せて寝ていたな。

 起こした所で何がある訳でもなし、このまま寝せておくのがベストなのかもしれないと思いそのまま車窓の景色を眺めながら時間を流していた。


「お客さん、魔物が近くにいるぜ」

「ヴィルさん達では対処が難しいですか? 生憎相方が眠ってしまって」

「俺たちでどうにか出来るが、念の為の報告さ。知らないのと知ってるのとでは、大分変わるだろ?」

「ご配慮ありがとうございます」

「かーー! そんなに硬くなるな。俺のことは親戚のおっさんとでも思っとけばいい。フランの奴もそれで構わないさ。あんたらは俺達に守られる側だが、もう少しフランクに行こう。気を張るのは疲れるだろ?」


 そう言うと彼は持ち場に戻っていった。


 日本人的には今の対応で間違ってないと思うが、やはりワールドギャップがある気がする。それとも俺が硬いのか? 比較対象がいないから分からないがきっと冬美もこうするだろうし、いやまてよ秋音のやつならもっとフランクに行く気がする……鮫太は俺よりな気もするが言葉遣いとかは多少荒っぽいかもしれないな。


 うーむむむ。


 いきなりフランクにするのも変だから徐々に変えて行こうかな。ヴィルさんとは国境までの関係性だし、あと五日くらいは接すると思うし、うん、それでいいんじゃないかな。


「とりあえず、魔力で遊びますかねぇ」


 魔力の塊を出現させて形を変えたり、片手でお手玉の様にして遊んでいたら馬車が止まる。どうやら接敵したらしい。殆どはフランさんが処分したらしいが、一匹漏らしたとの事。

 相変わらず猫は起きないが、あの二人が負ける様な魔力は感知してないから大丈夫だろうと思った時、すぐに馬車が動き始めた。


 フランさんが尖兵というか遊撃というかのポジションらしい。舗装路に漏れ出たのは偶々らしくヴィルさんが斬り殺したそうだ。その割には刃物に血が付着してないなどと見ながら魔力を動かして遊んでいた。


 武器の形にした時、思いついた魔術が幾つかあったのを記憶して夜の運行となった。


 猫は相変わらず起きないから左手で携帯食を齧って夜ご飯を食べた。

 俺もこんなに乗り物に揺られる経験はなく、疲れが溜まっていたのかもしれないな、なんて思いながら窓に頭を付けて眠りに付いた。

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