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これは“世界”を救う物語。  作者: 高平めめこ
ヒトトセヤクロトイフモノ
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0-2-42 議論あれこれ

 目を覚ますとクローディアさんと猫が話していた。時計を見ると朝の五時だが、あの二人、そんなに仲良かっただろうか。とりあえず壁面に設置されてる水面台で歯磨きをして二人に合流する。


「おはようございます」

「にゃー、おはよ」

「おはよう、二人とも。いつの間にそんなに仲良くなったんだ?」


 二人は顔を見合わせて首を傾げる。可愛いな。


「にゃはは、元々嫌いじゃないしね」

「話す機会が少なかった所為ですかねぇ」


 そういうもんなのか。

 まあ猫はあの子以外には敵対心らしい敵対心はそう剥き出しにしないしな。クローディアさんも物腰が柔らかいからお互いの波長が合うのかもしれないな。


 しかしこの世界の魔術について謎が生まれたな。純白こそが最適性だと思ったらその上に漆黒があるなんてどんな仕組みなんだか。

 適当に属性の色を混ぜても黒にはならない事は既に学んでいるし、それが分かっているから漆黒適正なんて考えられない。


 黒色魔力を使った際に聞こえた声と、何か不思議なモノ。あれがトリガーなのか? いや、それなら今まであんな声は聞こえなかった。


「私なりの『夢現』はもう夜黒さんは対策してるみたいなのと、あの光景を出してもう一度使えらとも限らないので夜黒さんが体感した事を教えて下さい」


 昨日の事について、か。


「今までの黒色魔力とは違って俺の『あきらめるのか』って声がきこえたのと、力とか感情とかじゃない何かが魔力に入ってった」

「私もあの時を『観測』していましが、確かに何かが入っていましたね」

「にゃー、魂に関連する気配な気がしたけどねぇ」


 魂に近い、力でも感情でもない何か。

 益々分からなくなってきたな。メンヒさんなら何か分かるのだろうか。いや、此処にいない精霊王を頼っても仕方がないな。

 あの人は何を目的としていたのだろうか。悟りを開いた人間がいるのは知っているが、メンヒさんはそれを目的としていたならいつの間に終わらせた?


 いかんな、変な方向に思考がズレていた。


 今は黒色魔力についてだ。

 余計な思考は邪魔になる。俺はこの力を自由に引き出せるようにならないと少なくともあの子に殺される。

 「まだ戦う時ではない」あの子はそう言った。つまりあの子とは戦う未来がまるで固定されているみたいじゃないか。


「その何かを解析していきましょうか。夜黒さんの魂も一応確認させてもらいますね。もし魂を削っていたらという可能性もあるので」


 了承してクローディアさんに魂を抜いてもらい魂を見てもらう。様々な角度から見ているが、問題は無かったのか笑顔で魂を戻して「大丈夫です」と告げられる。

 猫もそれは確信していたのか興味なさそうにしていた。まあ、この猫の全てを信じられるかと言われたらイエスとは言えないから見てもらうに越した事はない。


「さて、何かは何でしょうかねぇ」

「にゃー、未来の寄せ集めとか? こうなりたくないっていう力の集まり」

「それだと時間の属性に傾くはずです。黒ではありませんね」


 あれこれと議論を交わしていると職員の人が入ってくる。白を基調とした服は食堂の人の証だ。ちなみに俺もここの制服を着ているが色はクローディアさんと同じ黒色。

 研究室使用者は徹夜とか普通らしいから定時に食事が運ばれてくるそうだ。外でエルフ探ししてた俺だからこの協会についてもまだ分からない事があるな。こんなサービスあるなんて知らなかった。


 三人で適当に食事を済ませて外に待機していた食堂の人に食器類をカートに乗せて渡すと帰っていった。余計な事はしない様に徹底してるみたいだが、余計な一言が発見にも繋がると思う俺はまだまだ素人なんだろうな。


「そもそも魔術に黒色は存在しないって定義を壊さないとだな」

「それに関してなんですが、黒色魔力は魔術ではないと思います」

「というと?」

「夜黒さんの遠距離不適正が無視されてる時点で魔術ではないと思いました。遠距離不適正は魔術に充てられる言葉ですから、魔術ではない魔力による技術、それが黒色魔力の持つ力と考えました」

「まるで魔法みたいだな」

「それです。初代様や二代目様が到達したとされる魔法。それが黒色魔力なのだと私は思いました。偶然の産物を必然に変える方法はある筈なんです」


 クローディアさんは俺の手を握ったり引っ張ったりしながら体構造にも何かあるのかと『解析』しながら触れてくる。

 猫は暇だったのか空いた片方の手を掴んでくるしで身動きが取れなくなった。この姿勢キープするのは構わないが俺の自由は考慮されていないそうだ。誰か助けてくれ。


「夜黒さんの構造は私達と同じですねぇ」

「にゃー、クロは普通の人間なのかー」


 なんでそこで落胆するんだ。

 俺は一般人の枠を逸脱した覚えはない。確かに他の人と違って固有の能力はあるが、それは関係してないだろうし。話す機会もないし、この力は黙っておかないと悪用されそうで怖い。

 俺は臆病ななんだよ。こんな力、欲しくて産まれた訳じゃない。お母さんもおとつはんも、妹も持ってないこんな力、運命、こんなのいらない。


 まただ。

 変な方向に思考がズレる。


「この世界に来たからって人間を辞めた訳じゃないからな」

「にゃ? クロは異世界の人だったんだ?」

「言ってなかったか?」

「にゃはは、忘れたや」


 猫と話して少し落ち着けた。クローディアさんは『剥離』の魔術で俺の掌の細胞を取るとどっかに行ってしまった。確かに黒色魔力の一番近かった場所だしな。何かの痕跡もあるかもしれない。

 これは時間がかかりそうだなぁと思って、ベッドに横になろうとしたら彼女は速攻で戻ってきた。それも十三冊の本を持って。


「何してたんだ?」

「ああ、夜黒さんには言ってませんでしたね。『時間停止』で色々と調べてたんですよ。一応禁術指定なので口外しないで下さいね?」

「そんな魔術もあるのか。俺も試してみようか――」

「下手に扱うと自分の寿命だけ縮めてその場でお亡くなりになるので夜黒さんはやらないで下さい」

「あ、はい」


 静止されてはやれないし、自分の寿命だけ使われて時間停止するとか怖すぎてやる気も起きない。


「その本は?」

「歴代クローディアが記した十二の魔術――というより魔導書と呼ぶべき存在です。残りの一冊は何も記されていないのですが、やはり特別な冊子になります」


 何やらとんでもない一品を持って戻ってきた様だ。魔術書ではなくわざわざ魔導書と言うくらいだから記された内容を読むだけでどうにかなってしまいそうな予感がする。

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