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これは“世界”を救う物語。  作者: 高平めめこ
ヒトトセヤクロトイフモノ
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0-2-41 思い掛けない再戦

 研究室に着くとすぐにクローディアさんが部屋の改築を魔術で行い、その間に俺は黒い魔力の付いた資料をテーブルに並べていく。現在研究室の利用者は二人だけであり、そのどれもが真ん中の廊下を挟んだ向かい側。クローディアさんは対面全部の部屋を緊急用として抑えた。其々の部屋の壁は魔術で構成されているらしく、一気に巨大な部屋が完成した。

 若干職権濫用な気もするが、俺だってこの黒い魔力については早く解明したい。クローディアさんも未知の魔術領域だと興奮している。


「このぐらいの広さに私達が多重防衛結界でも張れば防げるかと。黒い魔力の爆発力は分かりませんが――」

「あ、それなんだけど黒い魔力だと俺の射程とか関係ないみたい。一応『念写』で見せたと思うけど、あの穴は俺があけた」


 込めた魔力量とか圧縮具合も伝えるとクローディアさんが結界を指でなぞる様に数え始める。


「ならかなりの爆発力ですね。結界足りますかね」

「当たって砕けろって言うじゃん?」

「協会が砕けたらこまるんですけどね……」


 クローディアさんは念の為にと空間拡張の魔術と結界を何層か追加して強度を確かめるような動作をすると納得したのか俺の並べた資料に向かう。

 一つ一つ手にとってじっくりと眺めている事から蓄積解読の魔眼で見ているのかもしれない。どこまで適応されるのか分からないけど、クローディアさんだから何かしらの情報を得ているのだろう。


 木の欠片、黒い物質の刺さった土、持って帰れる物は全て持ってきた。


 検分にかなり時間を使っているし、若干汗をかいている気がする。研究なんてまともにやった事がないから部屋に設置されている水道から飲み水を汲んでクローディアさんの近くにおいておく。


 この部屋の時計は秒針が進むとチクタクと音がなるんだな。随分前の事だけど、魔術学園の編入試験の時は無音だった気がする。

 クローディアさんの水がなくなったのを確認して追加する。俺もそういう解析系の力があれば良かったんだが、生憎色と輝きを見るだけの眼だからなぁ。


「大体は解りました」

「大体」


 時間にして五時間て所でクローディアさんが声を上げた。室内の明かりは自動で付くらしい。外はもう夕方だった。


「大体です。だからどうしても一つだけ解りませんね」

「解読できない技術なんてあるのか? 成り立ちまで読めそうな力だと思ったんだがなぁ」

「私の蓄積解読は確かにそれもできますが、それでも読み取れない要素がたった一つだけあるんです」

「というと?」

「黒色の魔力にするには、何か外部の要素が必要です。それは魔力でもなく、所謂信仰でもなく。もっと別の大きな力です」


 この世界に来て大分時間が経つが、そんな不思議な力は皆目見当も付かないな。大体そういった力は既に歴代のクローディアが見つけていそうだが、それでも分からないとなると、これは本当に世紀の発見だな。


「そういえば猫は黒色の魔力使えたよな。どうやって使ってるんだ?」

「にゃはは、多分僕のは違うと思うよ。僕は僕の魂の欠片を魔力に混ぜてあの力を発揮してるんだ。普通の人類種がそんな事したら大問題だよ」

「猫には九つの魂があるとは言うが、まさか本当なのか?」

「にゃー、よく知ってるねぇ。クロは博識だなぁ」


 クローディアさんが咳払いをする。


「とりあえず魔力に何がしかの力を注ぐと黒い――黒色魔力になるのは確定です。夜黒さんは何か意識した事はありますか?」

「俺の場合は死に直結する場合にしか起きてないなぁ。クローディアさんも神との戦いの時に見たのと、今回の一件でしか発生してないよ」

「死に直結……」


 瞬間、景色が変わる。

 身体が鉛の様に重くなり、猫も視界から消える。クローディアさんもいないが、目の前にはあの忌まわしき泥竜が咆哮を上げて立っていた。


「は?」


 理解が追いつかない。

 走馬灯は未来を見せるとでも?

 今まで俺が見ていたのは未来? とも思えるあの時の再来。迫り来る泥竜の顎を回避して状況を分析する。足元の感覚は魔術協会の硬質なゆかではなく、まるで湿地帯の様な泥を思わせる感覚だ。


(俺の魔力に乱れはないが、まるでデバフ喰らったみたいな身体の重さだ。あの時――いや今の身体能力と思えばこうなるのか? とりあえず魔術で牽制するしかない)

「何年付き合って来たと思ってんだ!」


 『魔力砲』を放ち泥竜に風穴を開ける。

 すると、やはり再生が始まる。クローディアさんみたいに穴を開けたが、それでも再生するならクローディアさんはあの時どんな魔術を使ったんだ? 不可能はないはずだ、落ち着いて、距離を取って、考えろ。


 泥が噴出される。

 わざわざ当たる気はないが、防げる範囲は全て感応型爆破装甲を付与した『魔力障壁』で拡散させる。


「グォオオオオ!!!」

「うるさっ」


 音まで再現されるとか、最悪だ。


 俺の射程だと身体の半分を吹き飛ばすのがやっとだが、黒色魔力さえ使えればそんな事はない。あの力を発揮するには――


「グォオオオオ!!!」


 ――そうだ。圧縮。俺はとてつもない魔力を強引に圧縮していた。その筈だ。魔力圧縮の限界は白い輝きだけど、何かが混ざれば黒い輝きに変じる。なら、圧縮を続ければ良い。

 幸い、回避には自信があるし、この数年も無駄じゃないのか未来固定の力も動きながら使える。


「グォオオオオ!!!」


 喧しいんだよこの腐れドラゴン。


 強い魔術には感情も必要だ。

 俺は死にたくないのに加えて、こいつへの怒りを露わにする。それはきっと正しい。俺の直感がそう囁く。


「出来やがれ! 黒色魔力!」


 もう執念だ。

 時間が延びる独特の感覚を味わうが、変化は起こらない。泥竜は迫って来ており、俺は死を覚悟する。


『あきらめるのか』


 何処からか()の声がした。

 いやあの時の青白い存在の声にも聞こえる。俺とアレが似ているなら、何かしらの共鳴が起きているのだろうか。


「クローディアさん……死んだら恨むぜ」


 泥竜に食い殺される。そう思って圧縮をやめたその時、不意に魔力が渦を巻いて圧縮される。展開されていた魔力の全てが掌に集められ、何か別の力とも感情とも違う何かによって黒い魔力が出来上がる。


 あとはこいつを、放つだけだ。


 その瞬間、景色が変わる。


 身体の調子も戻り、いきなり魔術協会の研究室へと景色が変わる。俺ですら認知出来ない速度で魔術展開するなんて本当化け物ってのはあんたみたいな奴の為にある言葉だな。


「一応泥竜は私が演じてましたが、上手く騙せましたか?」

「あの時に戻った気分だよ……」

「『夢現』という面白い魔術をお作りになっていたので、私なりにアレンジして使わせてもらいました。それで、その手の平に浮いてるのが黒色魔力ですか〜」


 綺麗ですねぇ、と言っているがコレに指向性持たせると山を撃ち抜く威力あるの忘れてるんだろうか。あと、触って大丈夫なのかと思うくらい突いてくる。あ、やばい。


「クローディアさん、やばい!」

「あ、離れますね」


 瞬間、大爆発。

 掌を上に向けていたから全て天井に威力が吸い込まれ、よく見ると表面にヒビが入っている。クローディアさんの多重防衛結界割ってるとかどんな威力よ。


「込められた魔力の累乗かそれ以上の爆発ですね。もしやこれが――」


 クローディアさんが何か言っているが、その間にまた魔力を過密さけ、死にたくないや怒りを混ぜてみるが、白い輝きから一向に変わる気配はない。

 ぶつくさ言うのを辞めたクローディアさんも俺の行動を観察していたらしく、ただの想いだけでは到達しないと悟る。


「この技術の研究は明日続きをやりましょう。夜黒さんの時間感覚も狂わせたのですっかり夜中です」

「うわっ、クローディアさん大丈夫なのか?」

「魔術の研鑽こそ、なによりも優先すべきことです。私は執務室に戻りますね。おやすみなさい」


 クローディアさんが転移魔術で消える。


「何してたんだ?」

「にゃはは、助けようと思ったけど拘束魔術掛けられてた。クローディアは強いね」

「そりゃあ、二万五千年の研鑽があるからなぁ。俺たちも部屋に帰るか、ここで寝るか? 簡易的なベッドあるし、お前抱えれば丁度だしな」

「にゃ!? ぼ、僕は部屋に戻るよ、クロはここで寝れば!? おやすみ!!」


 なんだったんだ……?

 とりあえず簡易ベッドを用意して眠りに付いた。

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