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これは“世界”を救う物語。  作者: 高平めめこ
ヒトトセヤクロトイフモノ
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0-2-40 資料の価値

 一夜を明かして朝のルーティン、と言っても『洗浄』で全身を清めただけを済まして猫が起きるのを待つ。昨日は余程疲れたのか猫は死んだ様に眠っている。魔力の一番の回復は睡眠と云われるくらいだから、仕方ないのかもしれない。


 その間は昨日の漆黒の魔力について調査する。


 あの子が放った攻撃跡に向かう事を書き置きして猫が起きるまで調査だ。クローディアさんも知らない漆黒の魔力はもしかしたら世紀の発見かもしれない。

 まあ、猫が使える時点で既出の内容ではあるが知っておくのと知らないでおくのとでは大きな違いがある。俺も一応黒い魔力は使えるが、必ず使える訳ではない。


 命の危機に瀕した時。

 それが俺の黒い魔力の発動条件かもしれないが、今のところそういう奇跡的な状況でしか発動していない。


 昨日の攻撃跡は腐食が進んでおり、大木は朽ち果てているが、それは未だに魔力が活発に作用しているとも取れる。絶好のサンプルだ。

 クローディアさんにも見てもらう為に『保存』しておく。この魔術は時間の流れを穏やかにするため食料によく使われるが、こういう使い方もある。


 取れる物はさっさと取ってポーチにしまう。

 そういえばポーチに『穏やかな時間の流れ』をかけたら『保存』の効果も強まるのだろうか。とりあえず試しておこう。

 魔術は無事に定着したから問題はない。別に効果は無くても『保存』出来ていれば良い訳で。


「それにしても、苛烈な攻撃だ」


 漆黒の魔力、それも質量を伴った一撃は想像よりも遥かに高い威力なのが窺える。それに腐食効果の持続が長い。一晩置いても効果が薄れないのは魔術の範疇を超えている。

 研究者ではないが、解明してみたい気持ちはある。コレがいつ俺に牙を剥くか分からないし、何より昨日は死にかけた。黒色の魔力を自由に扱える様になれば30メートルの制限も無くなる事は昨日発覚している。俺にはこの技術が必要だ。


 魔眼越しに映る景色全てを『念写』していき少しでも黒色の魔力についての情報を集める。あの子は西の大陸に飛んだだろうから、戻ってくる前に解析しなくてはならない。

 森生活の次は研究生活か。悪くない。

 俺には圧倒的に力が足りていない。クローディアさんや七騎士なんかなら自力で突破出来るだろうに、異世界人としては弱い部類の俺は知恵を絞らなくてはならない。


 その為には、猫を使わなくてはならない。


 あいつが頷いてくれるかは分からないが俺が生きる為に何としても協力してもらう必要がある。


「魚でもあげれば喜ぶかね」

「にゃはは、ぼくに?」

「いつの間に」

「にゃー、忘れた? 僕はシュレディンガーまたはケット・シーあるいはバステトやリンクスだよ? 名前に由来して、僕には色んな力があるのさ」


 そんなに力があるなら昨日の戦闘でも使えば良かっただろうに。それか、使うには周りに影響を及ぼし過ぎる可能性もあるな。バステトなんてなんだったか、ラーの目だったか? 大量虐殺なんてされてはこっちが困る。

 シュレディンガーの能力を使ってここまで来たのかもしれない。あれは確か箱の中の猫が生きているかしんでいるかは分からないといった内容だった筈だ。転移魔術で此方に来てないって事はどうなっているか(・・・・・・・・)分からないってのを利用した可能性が高いな。


「にゃー、クロも名前は大事にしなよ? 面白い力が見つかるかもしれないしね」

「そうだな」


 確かに『闇夜の眼』なんかは俺の名前に近いものを感じる。夜や黒といった力について研究するのは大いにありかもしれないな。

 色々考えているのが伝わったのか、猫は笑いながら此方を見ていた。


「にゃはは、クロは真面目だねぇ」

「死にたくないからな」

「にゃー、不老不死は碌な死に方しないよ?」

「そういう意味じゃない。俺は寿命で死にたいんだ」

「にゃはは、そっか」


 この猫は分かってるのか分かってないのか微妙な所がたまにムカつくが、それでも嫌いになれないんだから不思議なもんだ。クローディアさんとは違う親しみを覚えて、なんだか友達とも違う何かを俺は確かに感じてる。

 初めて会った時前のご主人様に似てるって言ってたし、昨日の青白い人がそうなのだろうか。あの人は確かに俺と姿が良く似ていた。魂までは分からないが、なんとなくあの人が前のご主人様で「に」とかいう存在なんだろう。猫のリアクションを見逃す程鈍感ではない。


 研究資料の採取に猫も加わった事で速度が増して昼前には終える事が出来た。

 あとはコレをクローディアさんの所にもってくだけだな。一応『念話』してから今大丈夫か聞いてみるか。


『やあクローディアさん、今いいかな』

『夜黒さんですか。大丈夫ですよ』

『依頼が終わったからそっちに行っても?』

『もうおわったんですか? 別に構いませんけど』


 猫に転移するからと告げ、いつも通り手を繋ぐ。猫は普段暖かい手をしているが、今日は冷たい。魔力が足りなくなるとそういう事も起こるのかね。


「やあ、クローディアさん。報告は『録画』を流すからそれを見て欲しい」


 クローディアさんは頷き部屋を暗くする。この魔術は日本の映画館と同様、暗いところの方が見やすい。理由は定かではないが、この魔術を作った際にそうなったのだろう。

 録画しているのは会話はじめからあの子が飛び去るまで。きっちり撮ってあるから漏れはない。


 昨日の映像に合わせて資料として魔力の残滓が残る物を出していき、俺の眼で捉えた内容の写真も出していく。


 録画の放送が終わりクローディアさんは何かを考えているようだったが、直ぐにいつもの調子に戻った。クローディアとしての知識を総動員して見ていたみたいだから、何かしらは得られたのだろうか。


「夜黒さんの魂をもう一度見させて貰います」

「俺? 別に構わないが……」

「恐らく初代様について深く知らなくてはならないかと」

「使えるモンは使ってくれて構わない」


 執務室から地下室へ移動し、以前同様魂を抜き取られる。以前とは違い、何か喪失感の様なモノを感じる。俺も魂に関して知識を得たからなのか、この世界に馴染んだからなのか。


「やはり……」

「何かわかったのか?」

「ええ。『録画』で見たあの青白い存在は初代様でした」

「は?」

「初代クローディアが、あの女子に宿っています」


 俺の魂を軽く見ただけのクローディアさんからとんでもない発言が飛んでくる。


「は? 確かに俺は初代の因子があるってのはかなり前に聞きましたけど……」

「今回見てみたらその因子が活性化及び増大していました。魂の因子は元の所有者と相対すると活性化します。なのであの子から出たあの青白い存在が初代クローディアと見て間違いないかと」


 てことはあの化け物みたいな、平伏したくなる圧を放つ存在が初代クローディアなのか?


「にゃー、でもあれは“ⅱ”だったよ」

「その『に』ってのが分からんのよな」

「恐らく初代様のクローディアとなる前の名前か、シュレディンガーさんを騙していたのではないでしょうか」

「にゃーん、つまり初代と“ⅱ”は同じでいいのね」

「その認識で良いと思います」


 この猫も完全な記憶を持っている訳ではないし、クローディアさんも完全に口伝されている訳ではない。初代と『に』が同じという事しか俺にはわからなかったが、とりあえず前には進んだ、のかな。


「そうだ、クローディアさん。出来れば研究室借りたいんだけど。黒い魔力について調べたい」

「はい。私も知りたいので一緒に調べましょう」


 許可を貰えたどころか、クローディアさんも参加するとなれば大掛かりな実験になりそうだ。

 例の如く隅っこから地下室を出てクローディアさんと猫の三人で五階にある研究室にむかった。

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