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これは“世界”を救う物語。  作者: 高平めめこ
ヒトトセヤクロトイフモノ
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0-2-38 木陰との戦い

 攻撃は視認していなくても可能らしい。

 俺も猫もお互い魔力は常に『隠匿』で感じられない様にしている。それを木の裏から正確に射抜けるって事は、何かしらの力で感知しているんだろう。

 感知系の独特な魔力の重みは感じないから魔力による感知ではないと思うが、どうやっているのか分からない技術に目を奪わらていてはいけない。


 あの時の光景が想起される。


 やっぱりあの子、なんだな。


 せめて会えたら何かしら動揺を誘えるかもしれないと思ったが、木の裏から伸びている以上会いたくないという事が伺える。なんとかして近寄れないものかと画策するが、正面から近寄る以外に選択肢が見えてこない。


 漸く――といってもほぼ一瞬の出来事だったが――猫も態勢を整えて次の一撃に備えた時、黒い物質は蠢いた。先程と同じ速度で俺達に襲いかかる。

 何とかしてあの木まで近寄りたいが、黒い物質は棘を伸ばす様に此方へ襲いかかるから中々近寄れない、どころか距離を遠ざけられる一方だ。


「にゃー! あれ、見て!」


 猫に言われて黒い物質が刺さっていた場所を見ると腐食していた。腐食の属性なんて聞いた事もない。アレは俺の知る魔術という範疇から逸脱した攻撃と見るしかない。

 そして、触れてはならないっていう事項が追加された。単に腐食するだけなら一撃くらいは被弾を覚悟したが、離れた今も周囲を蝕んでいる。冒険者達が生き絶えたのはコレが原因と見て良さそうだ。ゲームの毒状態みたいになって体力が尽きてゲームオーバーか、笑えないね。


「距離を詰めるには少し頑張らないとだな」

「にゃはは! 僕も本気出しちゃおうかな!」


 猫が腰に差していたサファイアよりも美しい青のサーベルを抜く。ソレを使っている姿は今まで一度も見た事はないが、抜いたという事はアレに対抗できるという確信があっての事だろう。


 左手に白の短杖、右手に青のサーベル。


 猫は魔力を滾らせ、その全てを武器に注ぎ込む。藍色の髪の毛は漆黒に染まり、猫からも漆黒の魔力が溢れ出る。

 今はツッコミなしだが、後で聞かせてもらおう。この数年の付き合いで一度も見せなかったって事は理由があるはずだ。もし、拒むなら無理には聞かない。


「にゃー、聞かないんだ」

「心を読むな。頼りにしてるぞ」

「にゃはは! 僕に任せてよ!」


 猫を前に置いて一列に並ぶ。

 飛んでくる黒の斬撃は30メートル分展開した『魔力障壁』で威力を減衰させながら迎え、猫に斬ってもらい霧散させる。

 どうやら黒の魔力同士では衝突すると霧散するらしい。猫の魔力も霧散しているが、直ぐに補填されている。再生を上回られない限りは大丈夫だろうか。


『にゃはは、あんまり保たないから一気に行くよ』

『了解』


 猫の今の状態は確かに長持ちするとは思えない。

 魔力を滾らせ、その全てを武具に回した状態が永遠に続くとは思えない。

 距離を詰める毎に襲撃の頻度が高まり、攻撃が激化していく。俺の『魔力障壁』なんて無いものとしている様に突き破って、猫の短杖かサーベルに当たると霧散する。だがその霧散するのは触れた箇所のみのごく一部、全て消し去るにはかなり時間を必要とするだろう。


 だが、俺も何もしていない訳ではない。


 黒い物質の発生源が30メートルに入れば其処を直接叩くのだが、いかんせん距離がある。

 地面に突き刺さら無くなったからなのか、襲撃の回数が更に増す。時折猫に当たりそうになる時は周囲の『魔力障壁』を解除して圧縮発動する事でなんとか逸らせているが、魔術の圧縮発動は魔力を多く消費する。


 向こうが激化した今は猫も俺も疲労困憊になった。


 背後(うしろ)に居るから分かるが、猫の髪色が徐々に藍色に戻ってきている。まだ30メートル範囲には入っていない。届くかを考えたら、微妙なラインだ。猫が無力化されたら俺たちはアレに刺し殺されるだろう。

 猫も普段は見せる事のない汗をかいた姿を晒しており、俺も魔力の運用で汗が垂れる。


「にゃはは! 僕は! 猫人の王様だよ! まだまだこれからさー!」

「俺も、魔力には余裕があるからな。頑張れよ」

「にゃん!」


 虚勢だ。

 俺にも猫にも余裕なんて一つもない。

 だがそう言わなくては今にも勢いに呑まれてしまいそうで、怖くて仕方がなかった。俺でさえこれなんだ、野生に身を置く猫なんか逃げ出したいだろうに。俺なんかに関わらなければ、こんな事に巻き込まれなかった。


「にゃはは、クロといるのは、楽しい、からね!」


 黒い物質が大きく削がれる。

 ここにきて猫は武具に回す魔力の量を上げた。ソレは勝てるという確信からのモノなのか。だが、頼もしい事に変わりはない。

 相変わらず当たりそうな棘状の部分は『切断』や『魔力障壁』でなんとか対処して猫を死なせない様にする。


「にゃー、こんな、経験も、悪くない」


 白の短杖を掲げて猫も黒い物質を展開する。


「にゃはは、溜めてないと使えなくてね。漸く溜まったよ」


 向こうから放たれる黒い物質は目に見えて減っていき、猫が展開した黒い物質は傘の様に俺達の事を守る。一撃が重い事に変わりはないのか進む速度は襲い。

 先程よりは歩けているが、その一歩は限りなく小さい。良く見れば傘の様に開いた黒い物質は端から薄れていっている。


 だが、漸く辿り着いた。


「悪いな、撃ち抜かせてもらうぞ!」


 俺の距離。

 半径30メートルにその発生源を捉えた。


 こんな戦闘になるとは思っていなかったが、猫が耐えている間は一つの魔力を圧縮させていた。魔術学園であの神が言っていた魔法とやらを発動するには黒い魔力が必要らしい。

 だから、圧縮した魔力に更に魔力を与えて可能な限り圧縮したら、今回も上手くいったのか黒い魔力塊が出来ている。本当、こんな時に運がいいというか、都合が良いというか。


 後はコレを放つだけ。


 あの時はそのまま神にねじ込んで爆発させたが、コイツに指向性を持たせて魔術を発動させれば、それがきっと魔法とやらなんだろう。

 俺も猫もまだ死にたくはない。あの子には悪いが、神をも畏怖させるその魔法を放たせてもらおう。


 こうなった時点で対話の段階は過ぎている。


「“魔力砲”」


 なんだかいつもと違う感じがした。


 そして、森の一帯をただの魔力砲が消しとばした。奥に見える山も穴が空いているのが軌道から見える。俺の魔術は30メートルが限度のはずだが、魔法だからか?

 あの子は消し飛んだのか、黒い物質は飛んで来なかった。

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