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これは“世界”を救う物語。  作者: 高平めめこ
ヒトトセヤクロトイフモノ
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0-2-31 隠れ里を探して

 猫とメンヒさんを連れてエルフの隠れ里を目指す。多分だが、此処に居たエルフとは別のエルフの隠れ里である事を説明した。『闇夜の眼』はどこに何があるのかを夜間の間だけ認知できる魔術であって、足跡を辿れる訳ではない。

 その点については問題ないという返答を二人から受けて歩いているが、いかんせん視界が悪い。夜という事もあるが、ここら辺の植物は高く伸びており、夜の暗さ云々の前に物理的に視界が悪い。


「エルフに気付かれたくはないが、焼き払いたくなるな」

「あまり植物を虐めてはいけないよ」


 日本ならいざ知らず、この世界で植物を無闇に虐めるのは良くない。この世界には宗教とは別に精霊信仰があり、精霊は実在する。その顕著な例が自然。

 故に自然――植物を無闇かつ広大に焼いたりすると精霊の怒りを買うが、精霊には時間を見る力があるのか、正当な理由によるモノであれば許される。今の俺みたいな場合はやり過ぎると罰が当たる。


「メンヒさんは精霊に会った事があるのか?」

「そうだね、あれは私がまだ小さな頃だったかな。土の精霊に手を引いて貰ったよ」

「にゃー、僕も色んな精霊に会ったことあるよー」


 精霊は見た目で区別は出来ないと文献にあったが、自ら名乗ったのだろうか。いや、精霊には精霊の言葉がある。幾らメンヒさんが清らかな人間でもその言葉を理解するのは不可能だろう。


 この人については謎が深まるばかりだな。


 名前は偽名。放蕩者と称して世界を巡る修験者。人間離れした澄んだ魔力。そして精霊への理解。挙げられるだけでこんなにも謎がある人物をエルフの隠れ里に連れて行って良いものかとなやんでしまうが、俺よりもこの人の方がエルフ受けは良さそうだ。


「そろそろ半分だと思うので、近くの岩場で仮眠を取りましょうか」

「はは、そろそろ、私が疲れてきたよ」


 どうやらメンヒさんはあまり体力が無い……訳でもないな。こんな視界不良の中スイスイ進める俺と猫がおかしいだけで。それに日が沈みかけていた頃にこの人と会ったんだ。それまで何をしていたか知らないが、歩き通しなら疲れるだろう。

 近くにあった岩場には運良く岩清水までついている。魔力で見ても透明度の高い綺麗な飲み水だと分かり、飲んでみせる。猫は本能で分かるそうだが、メンヒさんは今のところ普通の人間扱いだ。飲めるアピールは大事だろう。


「ヤクロ殿、幾ら岩清水とて汚染されていないとも――」

「俺、ある程度その物の状態分かるんですよ。それでこの水は飲めるって分かったので。メンヒさんも良かったら」


 ポーチの中から適当な器を取り出し水を勧める。ありがとう、と小さく呟かれたのが聞こえたが無視して猫に食べれそうな木の実を取ってくる様に言うと快く引き受けてくれた。

 気分屋なところは猫そっくりだが、なんだかんだ俺の言う事は聞いてくれるんだよな、とか考えていたらメンヒさんが話しかけてくる。


「ヤクロ殿は凄いな」

「へ?」

「私にはこういった真似は出来ない。今の私には、ヤクロ殿の力になれる事など何もない……」


 微妙な空気が流れる。

 こういう時なんて言えば良いのか分からないから友達少なかったんだろうなとか思ったが、メンヒさんに言いたい事があったし、ついでに言う事にした。


「足手纏いなら俺も猫も置いていきましたよ。それでも付いてきた貴方を労わない理由がありますか?」

「……」

「もっと物事を分かりやすく捉えましょうよ。メンヒさんならそれが出来ると俺は思ってる。少なくとも俺よりも長く生きてそうな貴方なら、人との縁や絆についてもっと信頼して良いはずだ」

「絆……」

「まあ、これから夜間はメンヒさんはしっかり寝て貰って良いですよ。俺と猫のいつも通りの割り振りの方が動きやすいし」

「……ありがとう」


 年下にこういう話されるの嫌いな人間は多いが、メンヒさんは寛大にも許してくれた。だから言わなくていい方まで喋ったが、これは俺の本心だ。メンヒさんみたいな人ならきっと、良い方向に噛み砕けるだろうな。


 魔力は偽れない。


 これだけ清らかに澄んだ魔力を放てる人間が他に居るだろうか。俺やクローディアさんも魔力には濁りというか、汚れというか、癖の様なモノが染み付いている。きっとそれはその人の生き様で、変える事の難しい部分を表しているんだと俺は解釈している。

 だからこの人の魔力がこんなに綺麗ならば――そう思ってしまう。それだけこの人が凄いって事だ。


「にゃはは! 美味しい果物いっぱい!」

「今日はやけに力が入ってるな」

「にゃー、お客さんいるしね〜」


 猫もこの調子だ。是非機会があればクローディアさんと会ってもらって旅の同行者に欲しい程の人だ。

 猫が持ってきた沢山の果物を三人で適当に分けて食べ尽くした。意外にもメンヒさんが一番食べてた。まあ、この中で一番でかいしな。







「にゃー、寝ちゃったね」

「あまり騒ぐなよ。初対面の人間を前にこんだけ爆睡できるんだ、相当疲れてたんだろうな」

「にゃ、しー」

「そうだ、しー」


 枯れ木を組んで作った焚き火に照らされるメンヒさんは、相変わらず笠で顔が見えない。見せようとしないなら見る気はないし、隠す理由があるならそれを聞こうとも思わない。

 今は猫が休憩する時間だが、今日はおきているらひくずっとメンヒさんの事を見ていた。


「面識あるのか?」

「にゃー、こんな魔力の人は一回会ったら忘れないよ」


 それもそうだな。俺だってこの人の事は、例え忘れていたとしてももう一度顔を合わせれば思い出す自信がある。それだけ、色んな意味で特徴的な人だ。


 猫が追加で取ってきた果物を食べながら焚き火の温度を調整する為に枯れ木を加える。この辺は枯れ木というか、折れた枝が多い。エルフの隠れ里に向かうには絶好の条件だな。

 そうして時間が経ち、日が昇る。木々と植物の隙間から陽光が差し込み、朝を告げる。


 メンヒさんを起こす前に岩清水で口を濯いでから『洗浄』の魔術で身体を一通り綺麗にし、メンヒさんにも『洗浄』を掛けておく。猫は自分でやってたから、後はメンヒさんを起こすだけだ。


「メンヒさん、朝ですよ」

「む、あ、朝か……この身体は眠気に弱くて、夜は面倒をかけたね」

「大した労力も掛かってませんよ」

「にゃはは、心配しなくていーよー」


 あともう少しでエルフの隠れ里だと伝え、朝一番に森を歩き始めた。メンヒさんは身体と衣服の汚れが落ちている事にびっくりしていたが、猫は笑って、俺は前だけを見てスルーした。

 この人、きっと恩を返そうと思っちゃうタイプの人間なんだろうなって感じたから。それは猫と念話で話した。猫もそう思ってたそうだ。

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