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これは“世界”を救う物語。  作者: 高平めめこ
ヒトトセヤクロトイフモノ
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0-2-28 神との戦い

 エスグリミスタから放たれる連撃には癖がある。癖というか、呼吸というか。五合放つと奴は距離を取る。例えどれだけ有利な形になっていても奴は一呼吸置く。

 この法則を見つけたのは避け始めてから直ぐの事だ。あの神とやらにも呼吸を整えるという概念が存在するらしい。尤も、俺は武道家でもなんでもないから本当に呼吸を整えているかは分からないが。

 それでも分かりやすい程に奴は攻撃回数を遵守している。それが当たり前であり、守らなくてはならない事の様に。


「我の攻撃をここまで避けるとは、中々やる女子(おなご)よ」


 こいつにも『夢現』効いてるっていうか、解除し忘れたな。今更解除するのも面倒だからこのまま行くが、女だから手加減してるとかそんな感じか? だったら儲けもんだ。

 六撃目を入れられていたら危ない場面が何回かあった。危ないだけで回避は出来るが、次に繋げられない。


「避けるのは得意なんでね」


 今もそうだ。

 五撃目で距離を取る。

 神であれば、いや神であるからこそ制約が生まれているのか? 神については生憎あの自由な神しか知らんから何とも言えないが、こいつは至って真面目に俺に攻撃して、真面目に距離を取っている。


 六撃目を誘発させたらどうなるか、見てみたいな。


 そうなれば話は簡単だ。

 こいつの感覚を『夢現』で狂わせればいい。五撃目を四撃目だと誤認させればいい。それでこいつがどうなるのかは分からないが、やらない損よりやる損だ。

 後はタイミングを合わせるだけ。余裕が生まれたら『夢現』を発動させる。


 とは、言ったもののコイツも神なんだ。中々その機会はやってこないし、クローディアさんがらしくない弱めな魔術を時折放つだけで時間が過ぎていく。


「魔術など、我には通じぬ!」

「魔法ってやつならどうだ?」

「――ッ!?」


 試した事はないが、回避しながら魔力を限界まで圧縮し、それを一旦放置し、後から魔力を加えて圧縮する。

 そうして出来たのは漆黒の球体。クローディアさんもびっくりしてるのが伝わってくる。何にも染まる事のない純白こそが魔力の頂きだと思っていた矢先にコレだ。そりゃ驚きもする。

 だけど俺はあんまり驚いてない。だって魔力の適正は髪色とか眼に現れる。黒髪黒眼な俺が純白適正はおかしいって思ってた。


「馬鹿なっ! 人間如きに“魔法”が使える筈が――」

「成る程、これが魔法ってやつか」

「貴様ッ!!」


 斬りかかるエスグリミスタの一撃目を回避し、この時奴に『夢現』を発動。自分は今から斬りかかると誤認させる。

 現時点で俺を女子――ユフィ・サザランドに見えているから効果は通ると見ていい。


 二撃目を躱し、三撃目も躱し、続く四、五撃目も躱し、奴が誤認した六撃目を放つ。


「放ったな、六撃目」


 その言葉で奴の身体がほつれる。解けた訳ではないが、身体が弛み、如何にも「今弱ってます」という風貌になる。

 その身体に右手に溜めた漆黒の魔力をぶち込む。使い方は分からないが、放つよりも中で爆散させた方が効きそうだと思ったからだが、それが失敗だった。


「ふは、は……掴んだぞ、その右腕!」

「しま――」


 辺りに響く爆音。

 その発生源は勿論目の前の神の身体から。そしてその爆発に俺は巻き込まれた、様に思われた。


「危なかったですね」


 神の右腕と共にクローディアさんの側に転移させられていた。マーキングした相手を転移させられるなんて話聞いてないが、また命を救われたなぁ。


「夜黒さん、まだ終わってませんよ」


 その言葉の通り、エスグリミスタは身体を再構築してその場に再臨する。魔術じゃなくて魔法で攻撃したが、殺すには至ってないらしい。


「にゃー、魂が一つ減っただけだね」

「まさかそういう使い方をするとは」

「夜黒さん、もう一度さっきの黒い魔力使えますか?」

「今試してるけど、さっきのが偶然だったぽい」

「なら、私が別のやり方をしましょうかね」


 再臨したエスグリミスタは先程と構えが違い、脇に剣を置き、刺突する様な構えを取る。さっきまでの中段の構えの方が隙が少ないが、どういった変化だろうか。

 先ずは様子見とクローディアさんと距離をとり『誘導』の魔術でエスグリミスタの興味を此方へ誘導する。やはり魔術も効くらしく、莫大な魔力を溜めるクローディアさんを放置して俺の方へと向かってくるが、『誘導』しなくてもこれは来てたな。


「貴様を斬らねばならない。アレの器だとは思わなかったぞ」

「何言いたいのかわかんねぇよ。日本語しゃべれや」


 エスグリミスタから放たれるのは先程までとは明らかに違う速度に重きを置いた連撃。刺突による初動から斬り上げや斬り払いなどを組み合わせて此方への距離を縮める。

 五撃目に構え直すのは変わらないが、その時間は短くなっている。さっきまでとは本当に違う。


 参ったな。

 長期戦は苦手、というか此方の魔力が尽きる方が早い。幾ら多く魔力を持っててもこの擬似神域展開とやらの防御と身体強化に魔力を回せば流石に底をつく。


 このままジリ貧かと思った時、クローディアさんが遂に動いた。


「『魔力の波動』」


 クローディアさんを中心に魔力が波打つ。それだけでこの亜空間に亀裂が奔る。

 魔眼で見たら、込められた魔力の多さに瞠目してしまう。それ以上にこの神はありえないという表情をしている。

 クローディアさんを倒すべき敵と認識したみたいだが、『夢現』の魔術下にある以上クローディアさんに刃は届かない。本物は隠してある。溜め(・・)が必要そうだから事前に本物には距離を取って貰っている。


「擬似とはいえ、神域だぞ!? それをただの魔術如きが中和ならいざ知らず、破壊などありえん!!」

「私の魔眼には幾つか効果がありましてね。その事象に蓄積された物すら読み解けば、簡単ですよ」


 クローディアさんはこの擬似神域展開とやらに蓄積された情報を解読して相反する魔力で亜空間を破壊しているらしい。言われてもよく分からんが、そういう事らしい。どういう事だよ。


「崩れるっ! 私の神域がっ!!」


 流石にこれは予想してなかったから誤認させるのは無理だったが、俺から気を逸らしたな?


「ゼロレンジ『魔力の暴走』!」

「こ、これは――ッ!!」


 幾ら神とはいえ、人間に憑依したんなら弱点も人間基準になる筈だ。ロイドに悪気があったんならロイド毎爆裂させていたが、生憎悪さをしてたのはこの神だ、と思う。ロイドの皮を被って悪さをしてたんなら、報いを受けるべきはお前だ。

 すまんな、ロイド・マクスウェル。完全にお前の事を悪者だと思ってたよ。だから、せめてその償いにこの神をお前から引き剥がそう。

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