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これは“世界”を救う物語。  作者: 高平めめこ
ヒトトセヤクロトイフモノ
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0-2-27 暴かれた黒幕

 ロイドに呼ばれた俺はロイドの部屋に入る。男子と女子は階層が違うだけで、監視も緩い。圧倒的に女子の方が多いから殆どは女子の部屋で、中には男子と同じ階層の女子もいたりする。

 よくこんなんで間違いが起こらないな。例え日本でも色々と起こりそうだが、この世界の子達はしっかりしている様だ。


「ユ、ユフィさん、これ、良かったら」


 差し出されたのは睡眠薬入りのコーヒー。魔眼で見れば一発で分かる。この世界の薬は殆どが魔術協会によって製作されており、魔力が込められている。そのため魔眼で見ればコーヒーが輝くという現象が起こる。

 なるほど、こうやって眠らせている間に魂を取る訳だ。飲んでもいいが、此処はこいつを驚かせてみるか。


「これ、なんか入ってない?」

「え!? そ、そんな、ことは、な、ないけど……」


 おいおいしっかりしてくれよ。そんな慌てられたらもっと虐めたくなるだろう。だが、ここは大人しく飲んでやろう。勿論解毒用に魔術を組んでからだが。


「美味しいね」

「そ、そうかな……」


 しかしこいつの不安定さというか、臆病さというか、何でこんなにビクビクしてるのか気になるな。クラスメイトは気にならないみたいだが、俺にはこいつが不安定である様にしか見えない。魔力の流れには何もないが、なんとなく、勘だが。

 それは猫も感じているみたいで、魂は馴染んでいるのにこの臆病さは不思議だねと漏らしているし、クローディアさんは何も言わないが観察している様だ。


『魔力の色的にそろそろ眠くなる演技するんで、二人とも後は頼んだ』

『にゃはは、寝てもいいよー? こんなのちょちょいのちょいだよ』

『何か不安定さはありますが、私達で対処しますので夜黒さんは何もしなくていいですよ』


 なんだか戦力外通告みたいだな。

 実際この二人が相手をするなら、余程の豹変がない限りはどうにかなるだろう。隠し玉もないみたいだし、クローディアさんの魔眼で見ても変な仕掛けはないらしいし。


 それじゃあ、遠慮なく。


「ユフィさーん、ね、寝たかな……」


 寝息を立てる俺に対してロイドは優しく毛布を掛ける。その隙にクローディアさんは俺の身体から飛び降り、いつでも捕らえられる様に構えていた。猫も俺の頭から迎撃出来る様に魔力を集めていた。


 その時俺は魔術が展開されて魂を取られるか、吸血鬼みたいに直に魂を吸い取られると思っていた。魔術でなんでもありだが、自分の魔力量や魔術の威力に自信を持っていた。

 だから対処に遅れた。クローディアさんも巻き込まれた。この不思議な力に。


「擬似神域展開」


 臆病なロイドは居なくなっていた。

 その声は自身に溢れており、突っ掛かる事なく、別人の声で発せられた。


「強制信仰吸魂ノ儀」


 その瞬間、俺は自身を魔力で覆った。なんでかは分からないが、覆わなくては危険だと判断し、猫もクローディアさんもその身を魔力で覆っている。

 擬似神域展開とはなんだ。そんな技術は聞いた事もないし、声も変わっている。文字通り意味を受け取るなら擬似的な神の領域を広げた事になる。


 ロイドから急ぎ距離を取り、魔力を固めて展開する。訳の分からないこの空間から出る方法は後から探るにせよ、今はこの急変したロイドをどうにかしなくてはならない。


「お前ロイドじゃないな」

「にゃー、別人の魂……すっごく強いね」

「魔力で探ってみましたが、完璧な亜空間ですね」


 ロイドは姿を変えていた。

 背中からは三対の翼を生やし、捻じ曲がった角を側頭部から生やした異形の姿となっていた。見た目はロイド・マクスウェルそのものだが、その異形な姿は以前の彼とは到底思えない。


「人間の身に宿るのも大変なんだよ」

「何者だ」

「我は古き神々の一柱――名をエスグリミスタ」

「神様ってのは人間の魂を奪うのか」

「我と人類種を秤に掛ければ、当然我が優先される。人類種には悪いが、あの存在を狩る為に我の礎となってもらう」


 ロイド、いやエスグリミスタが虚空から剣を取り出し斬りかかってくる。それは猫の魔力障壁で阻まれ、衝突の際に閃光が奔る。

 続く剣戟も猫の魔力障壁で防ぐが、クローディアさんは自分を『隠匿』し、その存在を見つめ弱点を解読してそうだから俺が動く事にした。


「悪いがあんたの思惑には乗ってやれないね。人を一人殺してるんだ。信仰なんて誰がするかって話だ」


 幸いにもこの空間は寮とは別らしい。限界まで圧縮した魔力を解放して『魔力砲』を放つ。

 だが神を名乗るだけあって素手で魔力砲が弾かれる。完璧に決まったと思っていたから油断した。


 猫の魔力障壁すら斬り裂く一撃が振るわれた。


 猫も想定外だったのか貼り直しているが、その悉くが斬られ、何とか回避したが右腕に軽く切り傷が出来る。完璧に躱した筈だが、何か秘密があるのか、考えてる暇はなくエスグリミスタから無数の剣戟が飛んでくる。

 猫も自分の魔力障壁では意味がないと分かり俺の身体を強化する魔術を使っている。自身で掛けた分に加算されいつもより遥かに身体が軽く感じる。


「夜黒さん!」


 その一言で俺は大きく距離を取る。


 クローディアさんからは『魔力の奔流』が放たれる。魔力砲の上位互換魔術であり、圧縮した魔力を前面に押し出すだけの魔術に変わりはないが、その威力は魔力砲の二乗。

 込められた魔力の多さに流石の神も剣を構えて迎え撃つ形になったが、クローディアさんは『魔力の奔流』を強引に曲げて背後から直撃させる。どんな技術だか皆目見当も付かない。


「これでも倒れませんか」

「神様なだけはあるな」

「にゃ、ロイドの魂は内側にあるからこの神とは融合してないみたい。もしかしたら助けられるかも?」

「融合してしまう前に倒しましょうか」


 地面に倒れていたエスグリミスタはゆっくりと立ち上がり、剣を構える。隙の少ない中段の構えはあの神とやらが本気を出したと見ていいだろう。

 しかし厄介な事になった。まさか魂を奪った存在がロイドを乗っ取りつつある自称神様とは考えもしなかった。それに、クローディアさんの魔術を受けても息一つ乱れず構え直せる強靭さ。


 亜空間で良かったよ。


 だがこれは未だに謎だが、今俺たち三人は本能で魔力を展開して身を覆っている。これを解いたらどうなるか分からないが、強制信仰とかいうぐらいだから奴に盲目的な存在になる可能性が高い。

 これで魂を微量吸い取っていたんだから気付けない筈だ。こういうやり方をされては、流石のマメネコ魔力感知でも限度ってもんがある。


「クローディアさん、俺に当てない様に魔術放てますか?」

「勿論です。私は、クローディアですから」

「なら前衛といきますか!」


 所謂回避盾というヤツだ。俺の魔術は30メートルが限界。この亜空間がどれだけ広がっているか分からないが、そういう制限の無いクローディアさんに任せるのが適任だろう。

 猫からも身体強化を掛けてもらい回避に徹し、クローディアさんの最大火力をぶち込む。それだけの話だ。クローディアさんも何度も放てるって訳じゃないから回数に限度はあるだろうが、最低でも一日は全力戦闘出来るだろう。


「我に立ち向かうか!」

「勿論さぁ、近付かなきゃ、役目を果たせないんでな」


 さて、どれだけ回避できるか。

 頼むから早く終わってくれ。

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