0-2-18 学園へのお誘い
学園モノ……?
転移魔術でクローディアさんの執務室に到着した途端猫が短杖で突いてきた。玉葱みたいなソレは地味に刺さって痛い。いきなり飛んだ事は素直に謝ったが、それでも納得がいかないのか不貞腐れており、ソファを見つけたのか勢い良く飛び込んで我が物顔で横になっていた。
「其方の方は?」
「ああ、成り行きで同行してるんだ。別に敵とかでも無さそうだから連れて来ちゃったけど、ダメだったよな」
「いえ、構いませんよ。其方の方は猫人なので。猫人は自分を中心に生きてますから間者でもないですしね。それに、面白い出会い方をしましたね」
あの出会い方を面白いの一言で纏められるクローディアさんってもしかして危機感無い系の人? 祠の扉飛んで来てかなり危なかった記憶あるけど。
そんな事を思っているとクローディアさんが一枚の紙を取り出す。
紙質から冒険者ギルドの依頼表と変わらない感じで、魔術協会の長が持つには随分と、似合わない。
「夜黒さんにはこの依頼を受けて貰いたくて」
「依頼? 一応冒険者登録はしてるが最低ランクだぞ。クローディアさんの仕事を手伝えるとは思えないが」
「あ、言い忘れてましたね。一応魔術協会の職員はCランクに自動的になります」
へー、最低ランクがGだった事を考えると大幅出世だな。4段階も上がるとか魔術協会すごいな。というか職員は最低でも冒険者として中堅じゃないと採用されないって感じだろうか。
でもそれだと此処の職員てかなり年齢いってる人が多いのかな。受付の人は若そうに見えたけど。もしかして事務方は別方の募集でもあるんだろうか。
「若手が不足してて、夜黒さんは今何歳ですか?」
「16だが、この世界の成年が分からないが一応元の世界だと未成年だな」
16という言葉にクローディアさんの瞳がキラキラと輝く。適任だって感じの顔をされるが俺はエルフ探しで特別推薦なんだろう? 良いのかそれで。
「ならこれ受けて下さい」
「え、エルフ探しは――」
「受けて下さい」
「分かりました協会長」
ダメだ。
逆らってはいけないオーラを感じた。人ってそういう時あるよね。猫や、俺を慰めておくれ。マメネコ出すだけでいいから。
「其方の方も――」
「僕のことはシュレディンガーまたはケット・シーあるいはバステトやリンクス、とりあえず自由に呼んでよ」
その紹介毎回するのか。
どれか一つに固定しないんだろうか。俺なんて猫呼びが定着してるぞ。長いんだよ、全部。
「ではシュレディンガーさん、夜黒さんと依頼を受けてくれますか?」
「にゃはは! クロと一緒なら勿論受けようじゃないか!」
『気に入られたんですね』
『まぁ、悪い奴じゃないんで』
「二人だけで話さないでよ。魔力の流れで大体分かるけど」
『念話』にはそんな弱点があったのか。魔力を読める奴の前ではあんまりクローディアさんに念話しない方が良さそうだな。
クローディアさんの足を引っ張るのはごめんだ。この人には命を救って貰ってるしね。この依頼も、不本意だが受けようかな。
「で、どんな依頼なんですか?」
「魔術学園高等部に潜入して欲しいんです。シュレディンガーさんは……初等部に」
「にゃ! 別行動? 嫌だなー」
「お前がマメネコに成れたら良かったんだがな」
「にゃー、仕方ない」
それにしても魔術学園なんてのもあるのか。魔術協会に置いてある魔術書は全部読んだからそういう知識面での不安はないが、この世界の歴史とか出ると困るなぁ。
それよりこの猫が初等部――日本で言えば小学生か? に適応できるかだな。俺より強いのは確実だからかなり暇になりそうだぞ。
「にゃふふ、クロのことちょっと驚かせようかな」
「ん?」
「『眷属召喚マメネコ』更に“憑依”」
見間違いでなければ猫の髪色が黒になったか? 光の加減だろうか。
猫は意識を失ったのかソファに沈んでいる。だが憑依と言ったんなら、つまりそういう事だろうな。
「にゃ、これで僕もマメネコ! 本体ほど強くはないけど、これでも子供相手なら勝てるかな」
「クローディアさん、眷属は持ち込んでもいいのか?」
「勿論。魔術の発展こそが魔術学園の掲げるものですから」
これなら猫とも行動出来るな。
なんだか猫と行動出来て嬉しいと思ってる自分がいるな。こいつ、魅了の魔術とか使ってたりするのか? なんだかこの世界に来てから感情のぶれ幅が大きくなったり、こんなに人に懐いたり、魔力のせいで変化が起きたのだろうか。
「それで潜入ってのは随分手のかかりそうな任務だ。具体的にはどういったものなんだ?」
「実は高等部で禁術の不正使用が疑われています。その調査をして欲しいのです」
高等部――高校生が禁術ねぇ。一体どんな方法で身に付けたかは知らないが、良からぬ組織とかが関与してそうで大変面倒な依頼になりそうだ。
「禁術……死者蘇生とかか?」
「いえ、魂関連です」
「そりゃまた面倒な依頼だ。力を付けた子供がどういう訳か禁術の知識を得てそれを試したら成功したとかかね」
「私もそう思ってますが、問題は誰が使ったのか分からないんですよ。人一人分の魂を得たはずなのに目立った行動を起こさない。犠牲者が増えれば手は付けられません」
とりあえず必要な情報を紙にまとめて自室で読む事にした。クローディアさんもクローディアさんなりにこの問題の解決をする為に動くんだろう。魂関連は普通の人間には刺激的すぎる。
あまり細かくは分からないが、魂は取り込めば純粋にその分強化されるらしい。つまり人間二人分の力を持った奴が高等部に潜んでいる。これは厄介だな。
犯人は馬鹿じゃないそうだ。
力をひけらかす馬鹿だったら楽だが、犯人は潜伏を選んだ。考えられるパターンとして有力なのは力を蓄えるだろうな。
学園で深刻なイジメでもあったのか、それとも他国に相当な恨みがあるのか、理由は検討も付かないが、人一人が犠牲になってるんだ。放置はまずい。
「あ、そういえばこの猫の身体置いたままでいいのか? それとも部屋に持ってくか」
「置いといて構いませんよ。此方で保管させてもらいますね。魂の状態がどうなってるのか非常に気になりますし」
「にゃはは、読み取れるかなー?」
そんなこんなで部屋を後にして魔術協会内にある自室へと久し振りに戻った。
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