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これは“世界”を救う物語。  作者: 高平めめこ
ヒトトセヤクロトイフモノ
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0-2-17 少女が全裸で出てきた

サブタイトルこれでいいのか悩みましたが、夜黒くんならそう名付けると思ってこれにしました。

 猫の案内の下狙撃手の位置まで向かう。一キロ先にいるって事はそろそろ見えてくる筈だし、途中貫通している木々を見ればその威力が如何程の物なのか、もし回避出来て無かったらと思うと怖くなってくるね。


 敵さんの事はマメネコが見張ってるらしく移動はしてないそうだ。二射目を構えており、今放った。物凄い速度で木々を貫通していき、分身がそれを避ける。

 因みに今の俺は魔力を表に出さない様に『隠匿』している。目を細めれば見えるだろうが、隣に膨大な魔力を展開する奴が居ればソレを本体だと思うだろう。


「にゃ、もうすぐだよ」

「了解」


 合図は残り五十メートルの時に。そういう約束をして猫には先導してもらってる。

 さて、そろそろ見えてもいいと思うが、未だに木々が邪魔だな。いっそ破壊しながら進むか? いやそうすると距離を取られるだろうし、このまま進もう。


「にゃーん、逃げないね。近接にも自信あるのかな」

「そん時はお前が頑張れ」

「にゃ!? 幼気な僕にそんな事をさせるの?」

「俺より強いだろうに」

「にゃはは、それ程でも〜」


 なんて会話の内に俺の距離だ。

 そして、敵さんの姿が見えた。


「オーガ?」

「にゃはは、そうみたい。エルフの肉は美味しいみたいだよ」

「なんで知ってんだお前」

「にゃふ、魔物の間では有名な話だからねー」


 良かった。人間なら交渉して辞めて貰おうと思っていたが、魔物なら遠慮なく魔術で殺せる。此処に来て初めての殺しって訳でもない。クローディアさんとの授業では実際に魔物を殺した事なんてザラにある。

 オーガは大変面倒な相手だが、俺の魔力量にモノを言わせた『太い魔力砲』なら一瞬で葬れる。

 オーガに見つかる前に圧縮した魔力を幾つか展開し、臨戦態勢を取る。この時点でほぼ負けの線は消えた。


 猫がワザと物音を立てて三射目の準備に手間取っていたオーガを此方に向かせる。


「グルォオオ!!!」

「魔物ってのは知性が足りないな」


 即座に『太い魔力砲』を使いその上半身を消し飛ばす。残された下半身は未だ立ったままであり、やがて後ろに倒れた。


「にゃ、このオーガは巣穴持ちだね」

「巣穴持ち?」

「んにゃ、集落より規模は小さいけど何匹か集まってる魔物のこと。人間の武器を持ってるって事は相当強かったんだろうね」

「一応その巣穴を探して――」


 直後、爆破音が辺りに木霊する。

 音の位置はここから見て北西。それにこの大きさなら大分近いんじゃないか。とりあえず猫とアイコンタクトを取ってその方向へ向かう。


「にゃー? 距離はそう離れてないから、運良く隠れ里の近くに巣穴を持てたって感じかな」

「面倒な事になりそうだ」


 爆破したと思われる場所に着くと、子供のオーガが逃げるように駆けている。だが、黒く伸びた何かに貫かれ絶命する。

 同じ様に、反対方向に逃げていた幼児を抱えたメスのオーガも黒い何かに貫かれ幼児諸共死亡する。


 魔眼で見てたが、アレは相当魔力が込められてる。下手したら俺より遥かに多い魔力を持ってる奴がいる。


 オーガを狩ってるって事は同業者か? いや、こんな同業者いたらクローディアさんが教えてくれるはずだ。それに、俺はあんな魔術を知らない。

 魔術協会で様々な教科書もとい魔術書を読んだこの俺が知らない魔術。もしかすると禁術とかそういう感じなのだろうか。


「にゃ……仲間って感じはしないね」

「同感だ」


 魔力が感じられない。

 だが漏れている魔力の色が黒い。

 魔力の色はその人の得意な魔術に合わせて変わるが、感情によっても変化する。楽しければ明るい色に、悲しければ暗い色に。その中でも漆黒なんて見た事がない。

 俺はどんな時でも純白らしいが、漆黒の例は聞いた事がない。白ければそれだけ魔術に適正がある。だが黒の例はクローディアさんでも考えた事がないのか、話にすら出てこなかった。


 巣穴から出てきたのは小学生低学年みたいに小さな女の子だった。それも、全裸で。

 見に纏う魔力の濃さから認識が遅れたが、恐らく魔物に囚われていたのだと認識する。猫も唖然としている。


「……そうか、あんたが」

「え?」


 此方を見て納得する様な動作をした少女。

 彼女がなんであれ、全裸はよくないから今着ている革のコートを差し出した。


「……優しいんだな」

「冒険者ギルドま――」

「必要ない。コートは有り難く貰っとくよ」


 あれだけの強さがありながら囚われていた理由が見えてこないが、断られたんだ、無理強いは良くないだろう。それに俺に対して物凄い警戒してる節がある。猫の事は眼中に無いのか無視しているが、俺からは視線を逸らさない。


「誰かに似てるのかな?」

「おい」


 まさかの猫の発言である。

 自分が眼中にないからって不機嫌に、それも年下だろう女の子になんて大人気ない。


「……“ⅱ”よりは人間味がある、そう思っただけだ」

「――ッ!」


 何やら猫が驚いているが、少女は森の奥深くに消えていった。裸足で歩いて痛くないのだろうか。それと、名前聞きそびれたな。


 まるで嵐みたいな子だった。魔力は漆黒、オーガは殲滅出来て、何故か俺を警戒する。不思議な子だ。とりあえずクローディアさんに報告がてら魔術協会本部に戻りますかね。

 その前にクローディアさんに『念話』しておくか。


『クローディアさん今大丈夫?』


 『念話』は転移魔術を習う際に習得した音を転移ささる魔術。遠距離不適正の俺でも簡単に使えて便利な魔術だ。


『大丈夫ですよ〜。何かありましたか?』

『実は漆黒の魔力を持つ女の子に会いましてね。行方不明の人でそんな特徴の人いたかなって』


 どうやらクローディアさんもピンと来ないらしい。それになんとなく感情も読める『念話』だと漆黒の魔力も半信半疑みたいな感じだ。


『漆黒の魔力……とりあえず調べてみますが、多分届けはないと思います。これから帰るんでしたら執務室に直接来ていいですよ』

『わかった』


 念話を終えたのが魔力で感じた猫はマメネコをお手玉していたのを止める。もうちょっと見ていたかったが、マメネコを渡されてはどうしようもない。

 かわいいな、マメネコ。


「転移魔術って手とか繋げば一緒に飛べるのか?」

「んにゃ?」

「いや、こっちの話だ。次の場所に行こうか」


 さんせーっと手を挙げた猫の手を掴む。少々強引かもしれないが、仕方ない。


「にゃ! なにする――」

「舌噛むぞー」

「んむーー!」


 転移魔術中に喋っているとたまに舌を噛む。経験則からこいつは噛むと思って無理矢理『口封じ』の魔術で黙らせる。

 そうして転移した。

 転移ミスもなく、猫がクローディアさんの防衛魔術に引っかかる事もなく執務室に到着した。

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