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これは“世界”を救う物語。  作者: 高平めめこ
ヒトトセヤクロトイフモノ
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0-2-16 奇襲

 この猫と過ごして早くも数日が経っていた。どうやら飽きてはいないらしく、日々楽しそうに過ごしている。なんだかんだ俺もこの猫の事は嫌いではないと思い始めており、二人の時間を楽しんでいた。


「んにゃー、中々釣れないねぇ」

「簡単に釣れそうなんだがな」


 今は休暇を兼ねてエルフの集落に流れていた川で釣りをしている。釣り道具は運良くエルフの残していった物を使い、餌はこの猫に見つけてもらった適当な肉。

 生憎俺は虫嫌いだから虫を餌にする案は却下した。


「にゃ! 食いつきそう!」

「静かにしてろ」

「にゃはー、食いついたー!」

「だぁー揺らすな、網、網用意して」


 確か網じゃなくてタモだったか? まあこいつには網で通じるだろうしいいだろ。それにしても大物が掛かったな。

 かなり重い。二人で食べるにはちょっと多いかもしれないが、内臓とか除いたら丁度良いのかもしれない。


「にゃはは、今日はご馳走だねぇ」

「人の携帯食に文句を言うなら明日連れてかないぞ」

「にゃーん、文句は言ってないよー」


 さて、どう捌いたものか。


「んにゃ、これは生でも食べられるお魚だね。毒もないし、内臓は苦いから捨てちゃおうか」

「なんで分かるんだ?」

「にゃふふ、猫人としの本能、かな」


 まあ猫は魚食べるイメージあるし、こいつが言うなら間違いはないんだろう。ここ数日の行動でこの猫には大分世話になった。

 食べられる木の実、毒がある草、魔力回復に役立つ生薬もどき。挙げればキリがないが、こいつは博識で、そのどれもが当たっていた。魔眼で見れば毒の有無は分かる。まるで警戒色みたいな色をだしてるから。


「にゃー、クロは良いナイフ持ってるから半分に割っちゃおうよ! なんだっけ、カブトワリだったかな?」

「してもいいんだが魚って苦玉ってのがあってそれを傷つけると台無しになるみたいな事をどっかで聞いてな」

「ふにゃー、僕は別に食べなくても生きていけるから知らなかったけど、そんなのあるんだねぇ」

「俺も料理なんてしないから詳しくは分からないがな」

「にゃーん、ちょっと待っててね」

「ん?」


 そういうと猫は魚を持ち上げ手を添える。


「『解体』」


 これは確かクローディアさんが泥竜にやった魔術か? 若干の魔力の流れに不自然さはあるが、同じ魔術と見ていいだろう。

 この世界には色々な魔術があるが、効果が同じなら新規のものではないっていうのが魔術協会の見解らひい。


 そうして解体された魚は見事に頭と皮、骨、内臓が分離され、するりと地面に落ちていく。


「にゃはは、美味しく食べられる部分だけにしてみたよ。後はクロが切ってねー」

「まぁこうなれば初心者でもある程度はできるかな」


 魔眼で見た限り寄生虫とか病気はないらしい。

 適当に切り分け、一切れだけ生で食べてみる。醤油がほしくなるが、噛み続ければ旨みも出てくる。スルメイカ的な感じだ。味は全然違うけど。

 その様子を見てた猫が口を開けて待機してるので適当に放り込む。すぐに飲み込んだのかもう一切れ要求してきたからちゃんと噛む様に伝えてまた入れる。


「にゃ、本当だ。噛んでれば美味しい」

「醤油があればもっと美味いんだかな」

「んにゃ? しょーゆ? たしかどこかの辺境で聞いた覚えがある気がするね。これとしょーゆは合うの?」

「魚と言えば醤油だな。塩って人もいるかもしれんが」


 その後適当に切り分け空中で火に炙ったりして美味しく頂いた。鍋とかあれば骨から出汁を取ってとかも考えたが、料理初心者はそんな器用な事は出来ないので諦めた。


 今日も一日が終わろうとしていた。そろそろ魔術協会にも顔出しして――などと考えていたら背後から猛烈な気配を感じて即座にその場を離れる。

 猫も気づいたのか木の上に跳躍すると、その木に槍よりも大きな矢が突き刺さる。その一撃で木に穴を開け、木は倒れていく。


 猫は体操選手ばりの空中回転を決めて俺の横に立つ。


「にゃはは、僕には効かないなぁ!!」

「敵襲か?」


 魔眼で視るが、近くに敵らしき姿は見えない。クローディアさんの『透明化』を看破出来た程の魔眼だから単純に遠くにいるって感じだな。


「にゃ……暫くここに居たのが祟ったね。クロの魔力でエルフと勘違いされたって感じかな」

「奴隷にはなりたくないな」

「にゃは、逃げる?」

「いや、このまま接近してくるなら返り討ちだ」

「にゃ、了解」


 ここ数日で分かったことは、俺とこの猫の相性はそこそこ良い事、そしてコイツは俺より経験が豊富であること。

 あまり自分について語らないらしいが、元飼い主に似てるからついつい話してしまうとは猫の言葉。


 開けた場所でなら直ぐに敵を見つけられるが、生憎と魔力に満ちた森の中での戦闘は経験ゼロだ。ここは前衛をかって出てくれる猫に任せるしかない。

 しかしどれだけ遠くにいるんだか。レンジの内側に居てくれれば奴隷商人なぞ幾らでも処分できるんだが。


 斥候役の猫は相手に気付かれる事なく正確な情報を伝えてくれる。マメネコにはなれないが、半獣化というやつで野生動物にも気付かれない隠密性を誇り、俺の魔眼でも見えない魔力の持ち主。

 相手が此方を正確に捉えてない限り猫は捕捉されないだろう。なによりさっきの位置関係だと猫は見えてないだろう。俺と木の間に居たからな。


 そんな事を考えていたら猫が戻ってきた。


「にゃー、真っ直ぐ一キロ先に一人。弓を地面に刺して二射目の準備中」

「オーケー。相手は鷹の目ってやつだな」


 スコープとか発展してないだろうから、魔眼持ちって事でいいかな。それにしても一キロ先にいてこの精度とは、怖いね。

 さて、此方のレンジはちょっと伸びて三十メートルが目一杯だ。近づけなきゃ反撃どころかカウンターも出来ない。どうやって反撃と行きますかね。


 こんな森の中、普通に見えてる訳じゃあないだろう? 敵さんは魔力を見てるに違いない。だったらその性質を逆手に取って魔力の塊をズラした位置に置いて接近するのがいい感じかもしれんな。


「にゃふふ、クロなら魔力の分身とか作れるんじゃない?」

「丁度そう思ってたところだ。だが生憎俺は遠距離不適正って奴でな、数メートル離した位置に分身を置いて接近する」

「にゃはは、それはいいね〜」


 さぁて、二射目にこんだけ時間がかかるって事は今まで一発で仕留めてきたんだろう? 反撃される事を想定してないんだろう? 分かるよ、最悪は常に自分の想定の上を行く。

 敵さんには申し訳ないが、此処で終わりにさせてもらおうかね。

ブックマーク、感想、評価の方よろしくお願いします。

朝でも読んでる人は読んでるんだなと思いました。

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