0-2-12 魔術適正
これからの二章は朝一話、夜二話で行こうかと思います。
オーブに魔力を流した結果は純白に強い輝きだった。若干オーブから軋む音が聞こえたからコレのギリギリが俺の魔力量なんだろうな。クローディアさんも軋むのは想定していらしいが、純白は想定外らしい。
「魔力に色が無いという事は、それだけあらゆる魔術に変換できる事を表します。夜黒さんが遠距離不適正でなくエルフだったら後継者にしてたんですけどねぇ」
「それだけ凄いって見ていいんだな?」
「魔力の届く範囲なら私よりも魔術適正高いですよ。やっぱりニッポンジンは強いんですね」
「いや、俺の場合はズルというか……」
「ズルでもいいんですよ。詳しくは聞きませんけど異世界人にも種類はあるそうですしね」
「助かる」
神から適正を貰ったなんて言ったら笑い話になるだろう。詳しく聞いてこない辺り、この人の良さというものが見えてくる。
魔術協会の長はきっと色々顔色を伺う事もあるんだろうな。なんとなく今の一言でそう思った。
そう考えると俺も気を付けないとな。先輩冒険者が黒髪黒眼は嫌われるって言ってたよな。あーやだなぁ。絡まれ無い様に心がけよう。
「とりあえず夜黒さんの魔術の知識はないって見ていいですかね?」
「それでいい。なんでも願えばその通りになる程度の認識かな」
「こんな適正ならそうなりますよねぇ」
実際はもっと厳しいらしい。ここまで混じり気のない適正は珍しいらしく教えるのが楽しみだそうだ。
クローディアさんの魔術適正も見せてもらったが若干灰色がかった白色だった。クローディアとなるとこうなるらしい。元は青色だったそうだ。
「クローディアってのはそんなに影響するのか」
「初代様と二代目様が歴代最高の魔術適正だそうで、それに初代様を除いて歴代の魂含む全てを受け継ぐので代を重ねる毎に強くなるのがクローディアという存在です」
なんか偉く物騒な話だ。クローディアさんも前クローディアから全てを受け継いだらしく変質した。魂も受け継いでたら人格変わりそうだけど、そんな事はないらしい。
魂は禁忌の一つであり、それを専門にし、公的に許される存在はただ一人。どうやら魂についての研究はタブーだそうで、死者の活用など倫理を問われるそうだ。
そしてその公的に許された魂の専門家が「黄泉比良坂の巫女」らしい。詳しくは教えてくれなかったが、まあ今の関係ならそれが普通だろう。クローディアについてはかなり聞けたけど。
「さて、夜黒さんの魔術訓練の方向性ですが……」
目を合わせてタメる。
なんだ、そんな事されたら気になるじゃないか。
年始にある某格付け番組みたいなタメに雰囲気が呑まれる。ドキドキするな。
「方向性は……」
なんなんだこのタメは。
なんだか触発されて生唾を飲み込んでしまう。ゴクリと鳴った喉が室内に響く。
クローディアさんと合った目は逸らされず、言葉を待つ。
「ありません!」
「いやないんかーい! じゃなくて、えぇ? ないのか?」
「あはは、夜黒さんはノリがいいですね。魔術を学ぶのに感情は大事ですよ〜」
なんだかこの人も砕けてきたな。最初はしっかりした口調だった気がするけどなんだか今は若干間延びした、様なきがする。あくまで気がするだけだが。
それにこの人とは仲良くなりたい。世界最強の一角と仲良くなれたら、それはどんなに心強いことか。
あと方向性がないだけでやる事がない訳ではないそうだ。先ずは基礎的な魔術を学んでそこから発展させてくのが適正白色の人がやるべき事らしい。
とりあえずはクローディアさんの下で基礎魔術を一通り習う。クローディアとしての責務の自己研鑽のついでに出来るそうだ。今一度基礎を見直すのも良いとは彼女の言葉。
しかし付きっきりで、という訳にはいかないそうだ。そりゃあそうだ。クローディアという存在の自己研鑽を見せる訳にはいかないらしく、最初は魔術学園でも使う教科書で基礎を学ぶ。
それで時間のある時にクローディアさんが直接見てくれるそうだ。宿も手配すると言っていたが、魔術協会の一室を貸してくれるそうだ。
その部屋に案内すると、クローディアさんが執務室の扉を開ける。執務室は最上階にあるらしく、俺が借りる部屋は二階下にあるそうだ。
因みに魔術協会は十階建てらしく、アテナ王国の王都に虚を構えるそうだ。隣には冒険者ギルドの本部もあるらしい。
「冒険者ギルドと魔術協会の関係についてはクローディアしか詳細に――その成り立ちを記憶してないので後で教えますね」
「別に其処は知らなくても問題ない気がするが」
「歴史を知るのと知らないのとでは見えてくる景色も変わりますよ。それに夜黒さんは知っておいても損は無いと思います」
歩きながらそんな話をしていると俺に貸してくれる部屋の前につき、クローディアさんが此処で一旦別れる旨を話す。
そして部屋に入る前に一言掛けられる。
「兎に角基礎ですよ。夜黒さんはこの世界の基礎魔術を学べば化けると思います。それに渡した教科書は特別版で、遠距離不適正の人の魔術有効範囲を伸ばす方法も載せてますので」
「わざわざ、ありがとう」
「それじゃ私はこれで。あ、三階の食堂はご自由にお使い下さい。これ、職員用のなんで好き物食べていいですよ」
そう言ってクローディアさんは去っていった。
部屋に入ると机と椅子、ベッドが目に入る。収納もしっかりしており、中にはハンガーもあった。机に複数の教科書を置き、ハンガーに革のコートをかけ洗浄の魔術で雑に綺麗にする。
はぁ、勉強か……いや、やらねば死ぬ。ついさっき泥竜に殺されかけたんだ。集められる知識は集めよう。それに何事も基礎は大事だ。俺だって回避の為に基礎的な運動は欠かしてない。
とりあえず読もうと思うが、もう明かりを灯さなくては暗い時間になっている。それに、依頼を達成したばかりだ。
休むことは許されるだろう。
クローディアさんが来ても許してくれる筈だ。それに、俺はあんまり疲れを翌日に持ち込みたくない性質だ。寝るのも好きだし、寝落ちする気持ちで教科書を開きますかね。
活字は眠気を程良く与えてくれる。
教科書を開くと魔術についての説明が載っていた。魔術とはなんなのか、どうやって生まれたのか、その危険性と利便性、開祖、そしてこの本を開く魔術師の卵へのエール。
ありがちな教科書だなぁと思いながら、俺の意識は暗転していた。
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