0-2-10 依頼達成の報告
朝の何かしらの合間に読んでやって下さい
竜の解体を終えたクローディアさんは一つ輝く宝石みたいなやつを手にしていた。
それは魔力結晶と呼ばれる物体らしく長い年月を生きた魔物には通常備わっているものらしい。泥竜がまともな生物なのかはクローディアさんが疑問を呈していたが、あるって事は一応魔物にカテゴライズされるんだろう。
「これを出せば私の任務も片付きますので。夜黒さんはなんの依頼だったんですか? リザードマンの殲滅ですか?」
「いや、黄金の魔力草を収めるだけの採取依頼ですよ。異世界人ってそんな好戦的なんですかね」
「いやー、数代前のクローディアの言い伝えでは魔術勝負を挑まれたり竜の巣窟を殲滅したり世界からゴブリンの半分を討滅したりと色々あったので」
「絶対そいつがおかしいだけですよ」
なんだそいつは。どんな奴なんだ。
世界で最も魔術に秀でた存在に喧嘩売って竜の巣窟を殲滅? ゴブリンの人口を半減させるとか何者だ。平和な日本で育った身としては信じられない奴だ。
どんな世紀末からやってきたんだか。
「ニッポンジンはおかしいのですか」
「いやそいつだけです!」
よりによって日本人かよ! どんなチート貰ったんだか知らんがそいつは地下闘技場が実在する世界線から来た可能性が高い。
漫画の主人公が来ちゃったんだな。少なくとも魔術に自信はあるが、そんな真似出来ないし、するつもりもない。俺は平和に暮らしたい。
「夜黒さんは何処から来たんですか?」
「俺も日本人ですよ。多分世界線が違うんでしょうね」
「ニッポンジン! 先代はニッポンジンと高めあったと聞きます。夜黒さんも強くなりますよ!」
「あはは……」
「あと敬語外して大丈夫ですよ。私は生まれつきこうなのでお気になさらず」
「では、失礼して。その日本人がおかしいだけだよクローディアさん」
その後も時の日本人について語るクローディアさんはなんだか自分の憧れを自慢する子供みたいで可愛いかった。不覚にも、可愛いと思ってしまった。
あとやっぱりその日本人はおかしかった。昇龍拳やら波動拳やら果てにはガメバメ波を撃ったとか、それも魔術ではなく自らの研鑽の末。魔術の方も高域殲滅魔術を連続で放ちながら駆け回っていたらしい。とんだ迷惑野郎である。
そんな話をしている間に獣道をそこそこ歩いた時、クローディアさんが思い出した様に此方に振り返る。
「飛行魔術を忘れてました。遠距離不適正の夜黒さんでも使えて、魔力が多ければ速く飛べますよ。燃費もいい魔術です」
「考えもしなかったな。えーっと、こうかな」
とりあえず自分が浮かぶイメージをすると魔力はそれに応じて俺の身体を持ち上げた。
「そうです! 夜黒さんは魔術適正高そうですね〜。あとで測りましょうか」
魔術適正なんてのもあるのか。
とりあえず思った魔術は全部使えるから最大ランクなんじゃないかな。少なくとも神様のお墨付きの魔術だ。悪くはないだろう。
そうして二人で飛び上がり都市へ向けて飛行する。クローディアさんが前、俺が後ろだ。なんとなく並走するのは遠慮させてもらった。魔眼で視た限りじゃあ魔力量的には多分最高速度は同じか、俺の方がちょい速いって所だな。
遠距離不適正な事を恨むばかりだ。これじゃなかったらどんなに上手く立ち回れた事か。クローディアさんみたいに竜を……あれ? 有効射程までだったら俺も出来るじゃん。ダメだな、爆裂と雷撃の魔術しか頭になかった。やっぱ魔術は習うべき。折角の機会だし、此方から提供できる物はないがクローディア先生に習おう。
しかしタダで習えるのだろうか。
「クローディアさん、魔術を教えてくれるって言ったけど対価は?」
「要らないですよー。そのたまし――夜黒さんの身体検査が出来れば充分です!」
聞き間違いでなければ今魂って言おうとしたよな。もしかしてマッドな感じだったりするのだろうか。クローディアさんは終始ニコニコしており、掴み所がない。
疑問はあるが、無償で受けてくれるそうだ。
身体検査が怖いが、まあ安い買い物だろう。
「細かくは魔術協会についてから……。あ、クローディアは魔術協会の協会長も兼任するんですよ」
「え、忙しいんじゃないか?」
「暇ですよ。クローディアの最優先は自己研鑽ですから」
世界で最も魔術に秀でた存在の最優先事項が自己研鑽ねぇ。しなくてもいいんじゃないか、と言いかけたがその言葉には自分を奮い立たせるだけのモノがあるのか、クローディアさんの魔力は強く輝いた。
魔眼で視なくても、その言葉に込められた意気を感じる。クローディアって存在はきっと特別なんだろうな。
そうこうしてる内に都市の外壁近くまで来たため、着陸する。外壁を越えないのは間違って防衛魔術に引っかからない為らしい。
だから門番いないのね。
どうやら何層にも渡る防衛魔術の結界が展開されており、魔術協会はその維持や細々とした魔術の問題解決や家電と云っていいのかそういう物の開発をしてるらしい。詳しくは魔術協会についてからだそうだ。
「あんまり此処で話してもピンと来ないと思うので後回しです。本当は支部じゃなくて本部がいいんですけど、最速でいきますか? 夜黒さんなら問題無さそうですし」
「俺はどっちでも。本部が良いなら本部で」
「じゃあ本部に行きましょう。宿も手配しますね。それと依頼達成の報告してる間に私は湿地帯で今後黄金の魔力草が取れないかもしれないって事を伝えにいきますね」
「了解」
と、いう訳で早速別行動だ。
依頼達成の報告と宿にもう来ないって言わないとな。帰って来なくて死んだと思われるのもなんだかあれだし。
身体強化解いてないから移動速度上がってた。街中で魔術禁止とかないよな? クローディアさんも何も言ってないし、とりあえずこのままでいいか。
なのでもう着きました、冒険者ギルド。
「受付は……」
並んでないな。
というよりギルド内部が伽藍堂だ。
珍しいな、大抵昼前から飲んでる人も居そうなイメージだったんだが、アニメの見過ぎか? ま、いいや。
「依頼達成の報告です」
「承ります」
「えーと、黄金の魔力草のやつです。これ、そのまま渡していいんですかね」
「はい。特に容器の指定もないのでこのままで結構ですよ」
聞いてみるか。
「今日は人が少ないんですね」
「南の湿地帯に竜が出たからその対応ですね。比較的この都市とも近いので、手の空いてる人員は其方に」
「……クローディアさんが倒しましたよ」
「魔力反応の消失でソレは承知しています。ですが竜の魔力に充てられてリザードマンが暴走しないとも限らないので」
「なるほど」
竜の魔力は特別なのかな? 後でクローディアさんに聞いてみよう。
伽藍堂のギルドを出て黄金の蜂蜜亭を目指す。身体強化してるから本当にあっという間につくな。ギルドの人も何も言わなかったし、大丈夫なんだろうな。気にしすぎかね?
中に入ると女将さんが出迎えてくれる。
「新人冒険者が一日かかる依頼はあまりお勧めしないよ夜黒さん。心配してたんだよ?」
「あぁ、それはすいません。まさか南の湿地帯が結構遠くにあるとは思わなくて」
「うちの娘達も心配してたよ。今は休憩入ってるけど後で顔だしてあげて」
「それなんですが、魔術協会の本部に行って向こうの宿に泊まる事になったってのを伝えに来ました」
「ありゃ、じゃあ銀貨の払い戻しだね。えーと、一泊に食事、あと昨日の分で――銀貨八十五枚の返却ね」
「すいませんね、暫く泊まるって言ったのに」
「いーのいーの。冒険者は自由に生きるのが楽なんだし、それを踏まえて私らは仕事してるんだから」
「ありがとうございました」
「気を付けるんだよー」
さて、やるべき事はやった。後はクローディアさんを待つだけなんだが、魔術協会に向かいますかね。確か北の方にあったはずだ。
身体強化を解いてクローディアさんに合流すべくゆっくりと歩き出した。今日はもう疲れたよ。
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