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これは“世界”を救う物語。  作者: 高平めめこ
ヒトトセヤクロトイフモノ
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0-2-7 湿地帯を進む

 アンさんが寝込みを襲うなど全くなく安全に眠れました春夏秋冬夜黒です。……て誰に言ってんだが。

 ポーションの効き目はばっちりだしなんなら窓から見える外は太陽が今から上がろうとしてる――え?


「今何時だ!?」


 待て待て依頼に出発して約五時間しか歩いてないでこんなに眠れるのか? ポーションに睡眠を増強する作用でもあったのか? しっかり寝たとしても夜遅くに起きてもう一度寝るのが王道的なアレなんじゃないでしょうか。

 とにかく落ち着け夜黒くん。お前が慌てちゃ世界が終わる。冷静だ、冷静になるんだ。


 一階に降りると笑顔でアンさんが出迎えてくれる。


「いやぁごめんよ。睡眠促進の丸薬を混ぜたのをすっかり忘れてた。あはは」


 この人は……。


「……今は何時でしょうか」

「五時ってところかな。生憎此処に時計なんてもんはないよ」


 ここが半分だとすれば昼前には着くな。


「わかりました。今から湿地帯に向かいますね」

「うん。いっておいで……っと、お前さんは戦えるかい?」


 戦闘? まるでからっきしだが避ける事なら自信はある。それに人には言えないが二つの異能。フリーみたいに強引な技で――なんてなければ大抵は避けられる。


「回避でしたら自信はあります」

「魔物を殺す事に抵抗は?」

「やってみなければわかりませんね」


 アンさんはその後無言で一本のポーションを渡してくる。変なの混ぜてないよな。


「規格品の治癒のポーションさ。なに、何も混ぜちゃいないよ。規格外には混ざるけどね。行っておいで」

「ありがとうございます」


 休憩所を出て南の湿地帯を目指す。

 ここら辺からはあまり踏み均されておらず、徐々に植物の立ち上がりも良くなってくる。多分だが彼女くらいしか人間では出入りしてないのだろう。


 奥へ奥へと、進むよー。


 これまた五時間くらい歩いて、既に太陽も真上より若干東よりの好位置についた頃に、木や植物の密集しない広場に出る。

 何時間か前から感じていたが、地面が柔らかい。泥とまではいかないが中々動きにくい。


「これが、南の湿地帯……」


 ようやく依頼のスタート地点だ。

 アンさんがいうには中央にあるらしい。このまま真っ直ぐいけば生えてると見ていいんだろうか。

 いやでもポーションに丸薬混ぜちゃう系うっかり美人の言葉を鵜呑みにしていいものなのだろうか。


 とりあえず、リザードマンにだけ注意して進みますかね。群れで暮らしてるらしく非好戦的。それくらいしか分からなかった。

 太陽があの位置ならアンさんからリザードマンのいる地点とかも聞いておけばよかったな。それに気になるのは戦えるか聞いてきた事。リザードマンは非好戦的じゃなかったりするんですかね。


 とりあえず進むが、地球に良くある湿地帯とは違い冠水はしてない。ぬかるみが酷く足跡がつく程度だが、これが中々動き辛い。


「ふーむ。ここら辺に人はいないよな」


 その場に立ち集中する。

 日頃使い慣れてる過去回避なら一瞬で処理できるが、あまり使い道のない未来固定はそこそこ集中しないと発動しない。

 それに固定できるのは直近一時間まで。平和な日本ではまず使わない異能だが、此処でなら大活躍だ。


 リザードマンに会わないという未来を固定した。


 これで少なくとも一時間はリザードマンに会うことはない。例え集落が目の前にあっても今から大移動を始めるだろう。

 それだけこの異能には強制力がある。物理的に不可能なこと――例えば一時間で北海道から沖縄に行くなどはできないが、リザードマンに会わないだけならきちんと働いてくれるはずだ。


「さぁて、進みますかー」


 気持ち新たにいざ黄金の魔力草へ。


 しかし中央ってどこなんだろうか。

 およそアンさんが作ったと見ていい道を通ってきたが、足跡はない。

 これだけしっかり足跡がつく湿地帯なら残っていてもいいんだが、アンさんは足跡を残さない術でも持っているんだろうか。それか沈む前に歩いてるとか? そんな馬鹿な。


 しかしこのまま進んでいるが、いいんだろうか。若干逸れてるとか嫌だぞ。こりゃあ大変な依頼になりそうだ。

 視界は来る時と違って開けてるし、見渡せばなんとなく集落の様なモノが奥に見える。あれを避ける形で動けばリザードマンとは鉢合わせしなそうだな。


 流石に自分から突っ込んではいくら未来固定でも矛盾が生まれて破綻する。

 さっき思ったみたいに一族総移動とかしてれば話は別だが、そういう能力ではない。


 あくまでリザードマンに合わないだけ。


 この能力は矛盾が弱点になる。それに物理的に不可能な事はどうしようもない。彼処にリザードマンがいては会う事になる。

 本能で生きているであろう魔物が何の予兆もなく大移動するとは到底思えない。


「とりあえず真っ直ぐよりの斜めに動いてみますか」


 波に流された時も斜めに、なんて聞いた様な事があるし真っ直ぐよりは良さそうだな。

 液剤に丸薬混ぜちゃう系女子はきっと真っ直ぐ進まないだろうし。これは吉と出るに違いない。


「さて、黄金に輝くとはいえ――」


 視界の奥に若干日の出みたいなポイントが出てくる。もしかしてあそこ……結構遠いなぁ。


 さて邪魔者もいないし水平線までは確か四キロとちょいだった気がするからこのペースであるけば昼ちょい過ぎって頃につきそうだな。

 しかし歩きづらい。


「靴を買えばよかったか? その辺の装備も今度あの先輩に聞いてみるかぁ」


 現状冒険者らしい装備は革製のコートとナイフにポーチ。正直防御は自分の回避に自信がある。最早異能と同じレベルで信じられるのが自分の回避。

 その為にも靴は検討すべきだな。どこでも使える万能靴があればいいんだが、魔術の補助とかあると高かったりするのかね。


 さて、そんな事を考えてる間にあと半分。


 うーむ、戦闘のない依頼は楽で良いですな。といっても初依頼なんだが。

 まさか此処でリザードマン以外の存在と戦うなんて事はないだろうな? なんか今嫌な予感が(よぎ)った。こういう時の予感は良く当たる。


 まったく、何が起きるやら。

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誤字脱字とかも報告してもらえると助かります。一応書いてる時に意識はしてますが、出るものは出てしまうので……。

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