0-2-4 冒険者ギルドへの登録
此処から頑張る……のか?
小屋を吹っ飛ばしたせいでちょっとずつ食べてた食糧も吹き飛んだ。遠くに微かに見える都市につく頃には日が暮れているだろう。
幸い季節は日本で言うところの春に近く、昼夜共に過ごしやすいが、野宿は勘弁だ。その前にどこか落ち着ける場所はないだろうか。
魔術を一通り試した際に生活を補助する――謂わば生活魔術を身につけている。これによって身体を清潔にする事もできるし、簡単な料理だって作れた。
まあ実際は果物一個で済ませてた訳だけども。
「ん、こうやって考えると魔力は栄養に依存しないのか」
また魔力に対して新たな気づきを得た。気づきを得るということはそれだけ知識が増え、力となる。
都市の方向に歩みを進めつつどこか落ち着けそうな、理想としては岩場を探していると滝が見つかった。滝でもいいかと思い石を適当な集め服の置き場を作り全裸になる。
水はそこまで冷たくもなく、また緩くもない。適温だ。
折角なので滝シャワーを浴びて沐浴する。生活魔術を用いて石鹸のような物を作り出して全身泡々にして綺麗さっぱりにする。
その後も生活魔術で温風を作り出してドライヤー代わりで全身の水気を飛ばす。さっぱりしたところで、服の洗濯だが、これも似たような方法で洗って乾燥させる。
「うーん、お日様の香り……はしないがさっぱりだ」
服を着直す。
そういえばこの服、日本だと一般的な物だけどこの世界だとどうだ? なんか民族的な服装が一般的なら浮くよなぁ。
なんて事を考えながら体感五時間。
休みつつ歩いたお陰でようやく都市の入り口に着いた。異世界モノにありがちな門番とかいなくて、通行料も特になく通れそうだ。
既に日は傾いており、寝床を確保したい。
都市に入ると視界が暗転する。
「やっほー」
この声、目を開くと予想通りあの神だった。
「これは録画しといたもので一方通行。残された数少ない時間で作った君への餞別。あの小屋を出たって事はそこそこ魔術を磨けたと思う」
最後は記憶にないがな。
「そしてこれは君が文明ある土地へ足を踏み込んだら流すようにしておいた」
時間がないとか言いつつ色々やってるな。
「君のポケットに金貨を一枚入れておいたからそれで冒険者登録、当面の寝床の確保をするといい。君なら生きていけるさ!」
その言葉と同時に右ポケットに重さを感じた。
試しに取り出すと金色の硬貨が入っており、あの神が嘘を言っていない事がわかる。
まぁ、嘘でもどうにかなるが。
「それじゃ、楽しい異世界ライフを送ってくれたまえ! あ、このメッセージは現実世界じゃ時間が経ってないから、君を変人に思う人はいない。服装は……まあ大丈夫だよ」
なぜ服装について溜めがあったのか疑問だが、視界がもう一度暗転すると、元の異世界へと戻る。
大人しく言われた通りにしますかね。
えーと、冒険者登録? をすればいいんだな。冒険者とか荒くれ者のイメージしかないし、なんか絡まれそうだな。出来るだけ目立たず行動するに限るって所かね。
冒険者、冒険者……。組合の建物でもあるのか?
都市を回ってたら既に日暮れが近いのに真夜中になってしまう。それはいけない。
確かあの神言語適正とか言ってたから言語は通じるよな? 生憎俺は英語はできん。ディスイズアペンが限界だ。
「すみません、道を尋ねたいのですが」
なんとなく悪意の少なそうな法衣を纏った少女に話かける。
「はい、なんでしょうか?」
「実は冒険者登録がしたいのですが場所がわからなくて」
「まあ! 私も冒険者ギルドに用があるのでご一緒しましょう」
「それは助かります」
この人、俺より強いぞ。多分普通に腕相撲しても勝てない。直感がそう言ってくる。
「その格好、もしかして異世界の人ですか?」
「あー、そうです」
早速バレるし。
「ふふっ、『異世界人は皆強い。そして最初はこの世界とは違う格好をしている』。まさか直にお目にかかれるとは思ってませんでした」
「俺はそこまで強かないですけどね」
「どうでしょうか? 私でも苦労しそうです」
なんて話をしているうちに冒険者ギルドとやらに着いたらしい。入り口で、恐らくこの少女を待っていた存在が出迎える。
「お待ちしておりました二十三代目クローディア様。其方の少年は?」
「彼は異世界人で、登録したいそうですよ」
「なんと異世界人! 我がギルドでは久しぶりの登録ですな」
異世界人てのは結構この世界に来てるのだろうか。そこそこ受け入れてもらえるようで、先人達のマナーの良さが窺える。
「登録はあっちで済ませたまえ。それではクローディア様は奥へどうぞ」
「それじゃあさようなら。異世界の人」
「案内ありがとうございました」
あっちね。
どこよ。
「すみません、登録はどこですれば……」
「登録ならあそこだよ。あの暇そうにしてる人のところ。登録料払えば終わりだからねー」
得意魔術とか書いたりしないのか。なんだか残念だな。でも得意魔術聞かれても困るから、まぁ、いいか。
そして件の暇そうにしてる人の下へ。本当に暇そうだし、暇ですって態度にすごい出てる。給料とかどうなんだろうか。
「登録した――」
「登録ですね!? それでは銀貨一枚になります!」
途端に元気になったな。
しかし困ったぞ。この世界の貨幣の価値が分からない上に金貨しかない。
「あーっと、生憎金貨一枚しかなくて……」
「それでは同時にギルドに預金しましょう! ポーチの空きは?」
「あの、異世界人とやらで勝手が分からないので……」
「なんと異世界人! それならご説明しましょう。冒険者ギルドとは――」
どうやら冒険者ギルドは魔物を狩ったり特定の物を採ってきたりする組織らしく、依頼難度に応じて報奨金が変わるらしい。
ギルドで発行している依頼が殆どだが、中には自費で依頼を頼む例もあるらしく、それは基本的に報奨金を安くするために嘘が多いらしい。
また冒険者にはランクが存在しており、ランクに応じて受けられる依頼も変わってくるそうだ。
これは安全対策らしく、例としては新人が間違って竜種に挑まない様にするためのものらしい。いきなり竜に挑む奴の気がしれないが、異世界人は案外成し遂げるらしい。先達はすごいな。
そして冒険者は基本的にポーチと呼ばれるモノを持っており、そこに小物――金やナイフやらをしまっておくそうだ。そして標準的なポーチを一個買わされた。銀貨九枚で。本来なら十枚らしいが、異世界人ということで今後の活躍を期待して一割引きだそうだ。
ちなみに金貨は銀貨百枚の価値があるそう。
「――という組織です。何か質問はありますか?」
「ふむ、じゃあクローディアって人はどんな人なんだ?」
なんか偉そうな人に敬語で話されてたし、もしかして最高ランクの冒険者だったりして。
「クローディア様の事をご存知なんですか――そう言えば今日来訪予定でしたか。もしかしてその時に?」
「道案内をしてもらいました」
「クローディア様に道案内!? 無知って凄い……。ゴホン、クローディア様は一言で言えば最強の人類種です」
「人類種」
「人型の存在の総称です。その中でクローディア様は最も魔力が多く、最も魔術に長けたお方です。今代のクローディア様はちょっと訳ありで、六十一代目黄泉比良坂の巫女様でもあるのです」
なるほどね。
最も魔術の強い人ってことか。黄泉比良坂の巫女についてはこの人もよく分からないらしくあまり語ってはくれなかった。
「他にはありますか?」
「じゃあこの辺で比較的安全に、暫く寝泊まりできる場所はありますか?」
「うーん、この辺だとぉ〜……黄金の蜂蜜亭がおすすめですかね。安いし美味しいご飯もついてますし、可愛い子が一杯居ますから!」
可愛い子がやたらと強調された気もするが、場所を紙に書いてもらってギルドを出た。
思いの外緊張してたらしく、どっと疲れが襲ってきた。早く黄金の蜂蜜亭とやらに行きますかね。歩いて5分とは中々の好立地じゃないか。空いてるかな?
○
空いてました。
暫く寝泊まりはここでする旨を伝えて先に払えるだけ払っておいた。
ギルドの人曰く依頼を受けるのはタダらしい。ドラゴンをハントする某ゲームとはその辺違うらしい。
「さて、明日から頑張りますかねぇ」
そうして俺は眠りについた。
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夜黒くんは此処からどんな成長を見せてくれるのでしょうか。




