ラウンド7
翌日の土曜日。青空を眺めながら家でごろごろしていると大和さんからメッセージがきていることに気づいた。
『イオさん聞いてくださいぃ、また素直になれませんでしたぁ!!』
泣き顔の顔文字が付いていることから、どうやら大和さんはまた想い人と喧嘩したらしい。この人も存外素直じゃない気がする。
『どうしたらいいですかね?』
素直になればいい、と言うのはアドバイスにならないか。先ずは何が原因で喧嘩しているのか聞かないと。
『何が原因で喧嘩してるんですか?』
『多分、立場の違いだと思います。私は皆に姫って呼ばれてるから……』
全然話が見えない。姫って呼ばれる女子高生がこの世にいるのだろうか? あ、知り合いに一人だけいた。もしかして、同じ部類か?
『大変なんですね』
『はい、私はさながら王子に恋する姫と言ったところですね』
こいつ、何言ってんだろう? しかしながら本人は真面目なようで話を続けてくる。
『イオさんは男性として女性に何をされたら嬉しいですか?』
『そうですね、僕の場合は悩みとかを聞いてくれる人が良いかな』
『悩み、ですか?』
『ええ、自分の悩みを聞いて一緒に悩んでくれたり、力になってくれる人が好みかもしれません』
そういう優しくて、清楚な感じの女の子が俺は好みだ。間違っても湊や凛のような女は願い下げである。あいつらこっちの話なんて聞きもしないからな。
大和さんからの返信が途切れたので、一度画面を閉じた。コンビニに甘いものでも買いに行くか。着替えて家を出ると、隣の女も一緒に出てきた。
「同じタイミングで出てくるな」
「たまたま同じタイミングになっただけだ」
湊は負けじと言い返すと、どこかへ行ってしまった。
あいつも本当に素直じゃない。どこに行くかは知らないが、今日はもう顔を合わせることはないだろう。
と思ったのだが。
コンビニに入店すると、なぜか湊が買い物をしていた。
「何でいるんだよ……」
「それはこっちの台詞だ。まさか、山村君は私のストーカーなのか? 昨日も覗きに来ていたし」
「違うわ! お前こそ俺のストーカーなんじゃないのか?」
「そんなわけないだろ! ありえん!」
互いに顔を背け、バラバラに店内を回る。
新発売のお菓子や炭酸飲料を適当に棚から取りレジに向かうと、湊が先に並んでいた。
湊の持つカゴには筆記用具とまさかの俺と同じお菓子が入っている。どこまで俺と被るんだ、こいつ。湊は何も言わずに会計を済ませるとさっさと店を出ていった。
「ありがとうございましたぁ」
俺も会計を済ませ店を出る。すると先に帰ったはずの湊が何故か店先にいた。
「何してんだ」
「なあ、山村君」
「なんだ?」
「君、何かに悩んでいないか?」
「は?」
「悩んでいるだろう? どうだ、私に話して楽にならないか?」
こいつ、いきなり何を言ってやがる。気味が悪い。
もしかして宗教の勧誘か? 前からおかしな奴だとは思っていたが……。関わらないよう後ずさるが、湊は前のめりに追及してくる。
「ほら、私に言うんだ。言って楽になろう!」
「お、お断りだ!」
俺は走って逃げだす。湊は追いかけてくることもなく立ち尽くしていた。