ラウンド4
学校が終わり家に帰る途中、SNSを開いて愚痴をこぼす。
『最悪なことが起きてテンションが下がった』
結局湊に勉強を教わることになった。しかも、二人きりで。これ以上最悪なことはない。凛は嬉々として笑いをこらえていたし、湊は俺がひれ伏したとでも思っているのか上機嫌だった。
「明日が来なければいい」
憂鬱な気分だった。カラスも嘲笑うように鳴いている。
気分を変えようとSNSを見るといつも通り大和さんからいいねがきている。
「大和さんか……」
こちらも問題だった。忘れていたが、大和さんから恋愛相談を受けていたんだった。メッセージがきているところを見ると何かの相談だろうか?
恐る恐る開くと、屈強な武士から絵文字付きのメッセージがきていた。
『大丈夫ですか? 心配です』
相談ではなく、単に俺を心配していただけだった。続けてメッセージが送信されてくる。
『良ければ悩み聞きます』
どうやら大和さんなりに俺の力になろうとしているらしい。
こちらも相談に乗るわけだし愚痴くらい聞いてもらっても罰は当たらないだろう。
俺は今日の出来事を簡単に大和さんに話した。
大和さんは思った以上に親身になって話を聞いてくれる。大和さんも学生らしく、同級生と上手くいかないことに共感してくれていた。
『わかります。私も上手くいかないので』
『そうなんですね』
『はい、特に想い人とはいつも喧嘩してしまって。普通に話したいだけなんですが……』
喧嘩と聞いて湊を思い浮かべてしまった。いやいや、今あいつは関係ない。
忘れようと飲み物を口にすると、インターホンが鳴った。
アマズンで何か頼んだっけ? と思いながらドアを開くと思い出したくもない美少女が立っていた。
「隣に引っ越してきた湊です。よろ……、は?」
「は?」
思わず声が重なる。
目の前にいるのは他でもない湊紗季。切れ長の双眼を見開き、口を大きく開いている。
「なんで山村伊織が!」
「それはこっちの台詞だ! まさか付けてきたのか!?」
「違う! 隣に引っ越してきたから挨拶に来ただけだ!」
隣だと? 確かに隣は空き室だったが、そんな急に引っ越してくるか普通? 昨日まで何の動きもなかったのに。だが、隣の部屋には電気がきているし、引っ越しをした形跡もある。
「っていうか、プライベートでも隣かよ!」
「私だって願い下げだ!」
「何だと!?」
「何を!?」
喧嘩が始まる。学校で隣の席なだけでも大変なのに、家まで隣とか勘弁してくれ。