ラウンド23
学園祭初日が終了。学校に泊まる生徒も多い中、俺はそんなことに興味もなく、一度家に帰ることにした。湊も帰ると思い探したのだが、どうやら先に帰ってしまったらしい。休憩時間以降口も聞いてないので謝りたかったのだが……。まあ、同じアパートだし帰ってから謝ればいいか。
学校を後にし、家路を急いだ。
帰路の途中スマホを見ると、大和さんからメッセージが届いていることに気づいた。
『うう。片思いの人に断られてしまいました』
「まじですか……」
『相手に勘違いされていたようで……』
「勘違い?」
『はい。私の想い人は別の人だって思ってるらしくて。その人を誘えばいいと……』
ん? なんだかどこかで聞いたような。というより、休憩時間に湊とやり取りした内容とまったく同じ……、だよな? でも、いや、そんなまさか。大和さんが湊? たまたま一緒なだけだよな? だが、話し続ける大和さんのメッセージを見るに、あの時会話した内容が重なる。
『勇気を出したのに、まったく伝わらなくて。私はこんなに好きで、あの人と一緒に巡りたいのに。せっかくクラスでメイド喫茶の催し物をしたのに可愛いとも言ってくれないし。もう、鈍感すぎ……』
……もし、大和さんが湊だとしたら。俺は俺のことを惚気られている?
ま、まて。それは湊が俺のことを好きだという前提があっての話で。……でも、本当に同一人物だとしたら? どこか嬉しいような気がして、不思議な感情に支配される。
返信するに返信できず。既読を付けたまま悩んでいるとアパートに着いていいた。湊の部屋には電気がついている。
心臓が早鐘を打っていた。自分を想う相手の恋愛相談に乗っていて、しかもそれはずっと犬猿の仲だと思っていた相手で。互いに好きになることなんて絶対にないと思っていたのに、事象が繋がってしまっている。
たまたまの偶然?
それとも真実?
確かめたくなって自分の部屋の前を過ぎ、湊の部屋の前に立つ。
インターホンを押す手が震える。やはりやめようか? 手を引き自分の部屋に戻ろうとしたところで、タイミング悪くスマホが鳴る。こんな時に誰だと着信を見ると凛からだった。
「どうした?」
「明日文化祭終わりに実行委員は職員室に行けって。紗希ちゃんも帰ってたから電話したにゃん」
「メッセで良いだろ」
「送ってるのに気づかないからにゃ。紗季ちゃんにも伝えといてねー」
それだけ言って通話が切れる。通知を見ると確かに凛からメッセージがきていた。湊にも伝えといてって、自分で伝えればいいのに。何で俺が。スマホでメッセージを送ろうにも俺はまだ湊の連絡先を知らない。
つまりは直接伝えるしか手段はなかった。
俺は仕方なく湊の部屋のインターホンを押した。
「はーい。……伊織君」
「お、おう」
「なんだ?」
「昼のこと謝りたくて。あと、実行委員は文化祭終了後に職員室集合って連絡もあったから。……あの時はごめんな」
「いや、いい。私も勝手だった」
お互い顔を逸らし、無言の時間が続く。気まずい。
何を話そうにも先程の思考が頭をよぎる。
「何もないならこれで。勉強の途中だ」
「み、湊」
「ん?」
何故呼び掛けてしまったのだろう?
何故確かめようと思ってしまったのだろう?
「お前、もしかして。大和って名前でSNS、やってたりする?」




