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ラウンド21

 学園祭を翌日に控えた前日、実行委員である俺と湊は最後まで教室に残っていた。それぞれ見回りや書類を整理し、職員室にいる薫先生に報告したところでようやく解放。時刻は七時を回っており、辺りは暗くなっていた。


「明日、楽しみだな」

「ああ」


 同じアパートに住んでいることもあり、最近は二人で帰ることが多くなった。最初は喧嘩ばかりだったが、今では世間話が出来るまでに落ち着いている。さすがに毎日争っていたら疲れるしな。


「湊は学園祭どうするんだ?」

「私か? 特に何も決めていない」

「同じだな。俺も特にやることはない。適当に出し物手伝って終わりかな」

「そ、そうか……。なあ、伊織君」

「ん?」

「あ、えっと……。や、やっぱり何でもない。明日のメイド喫茶、一緒に頑張ろうな!」


 おー、とガッツポーズをする湊。案外子供らしい。

 その後も適当に話をして、アパートについた俺たちはそれぞれの部屋に分かれた。風呂やら食事を済ませてベッドに横になると、大和さんからメッセージが届いている。


『明日は学園祭です! いよいよ行動に移ろうと思います!』

「行動?」

『はい! 好きな人を誘います! 断られたら、悲しいですけど……』

「応援してます。大和さんなら大丈夫ですよ」

『ホントですか!? 私、頑張ります!』


 送られてくる大量の絵文字。どうやら明日は大和さんの勝負の日らしい。しかし、大和さんとはよく日程が被る気がする。もしかして、意外と同じ学校の生徒だったりするのだろうか? 

 思えば、大和さんと話すようになったのって二年生になってからだ。もう長いこと話しているような気がする。


 片思い、か。大和さんも湊も恋してるんだなあ。

 湊の想い人、誰なんだろう? 気にしたこともなかった。一年生の頃から中悪かったし、お互いを知ろうともしてなかった。でも、近頃は気づけば湊のことを考えている気がする。別に好きとかじゃなく、気になるというか。

 ……これじゃ、まるで俺があいつのこと好きみたいだ。


 気分を変えるため近くのコンビニにアイスを買いに行こうと部屋を出ると、アパートの入口にいる湊を見つけた。


「よう。お前も買い物か?」

「へ? あ、伊織君。ま、まあな」

「一緒に行くか。夜道危ないし」

「いいのか?」

「今更気にすんなって」


 前まではこんなことを言うことさえありえなかったのに、今ではこいつと二人でいることが苦痛ではなくなった。むしろ友達のような居心地のよささえ感じる。不思議だった、あれだけ苦手だったはずなのに。湊を知ってからは、興味を持ち始めている自分がいる。


 数分歩いてコンビニにつくと、湊は適当な甘いものを選んでいた。


「お前前もこれ買ってなった?」

「い、いいだろ別に」

「以外と可愛いとこあるのな」

「は、はあ!?」


 傍から見たら俺たちはカップルに見えるのだろうか?

 妙に意識してしまうのは、依然と関係性が変わったからだろうか?

 それとも、湊紗季という人物に惹かれている自分がいるからだろうか?

 よくわからなかった。

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