ラウンド17
駐車場に着くと、三人の男たちが湊を囲んでいた。
「湊!」
「伊織君!」
湊は俺に気づいたらしく、手を振っている。
一方で男たちは俺の方に目をやると一斉に顔を強張らせた。見るにナンパとかをしそうな感じではない。どちらかと言うと普通の高校生と言った感じだ。
「おい、なにしてる?」
「べ、別に……」
一人が目線を逸らしながら言うが、明らかに何か隠している。他の連中も同様だ。とりあえず湊に危害を加えるような気はしない。俺は湊の方へ歩み寄る。
「大丈夫か?」
「うん」
「何があった?」
「ええっと。飲み物を買い終えて戻ろうとしたら声を掛けられたんだ」
「それで?」
「わからない」
「は?」
「この人たちは、さっきからずっと無言だ」
もう一度男たちの方を見ると目線を逸らしたままである。こいつら一体何がしたいんだ? 詰め寄ると男の一人が口を開いた。
「ぼ、僕たち湊さんに告白しようとしてる友達を手伝おうとして」
「はぁ?」
「ひ、ひぃぃ。僕ら君たちと同じ藤和高校の二年生です!」
そう言って後ずさりする三人。ああ、なんとなくわかった。つまりはこの中の誰かが湊に告白しようとしたけど勇気が出ないからダチに手伝ってもらったって感じだろう。だが、直前になって言い出せなくなった。
なんとも迷惑な話である。
「あのな。告白するのは勝手だが湊を困らせるな」
「そ、そうだよね。ごめん」
「謝るのは俺じゃなくて湊だろ?」
諭すように言うと、三人は顔を合わせた後に湊の方へ向き合って深々と頭を下げた。
「「ごめんなさい、湊さん!」」
そして、困惑している湊を置き去りに逃げ去っていった。
「お、おい。なんとも人騒がせな連中だ」
「ありがとう、伊織君」
「おう。にしても、案外モテるのな。お前」
「よ、余計なお世話だ。行くぞ」
颯爽と歩いていく湊。俺は頭を掻きながらその後を追い掛ける。
「なあ」
「なんだ」
「もし告白されてたら、湊はどうしたんだ?」
何気ない質問だったが、湊は足を立ち止まる。
「どうした?」
「勿論断っていたさ」
「だよな。お前恋愛とか興味なさそうだし」
「いや、興味はある」
意外だった。もしかして、真面目風紀委員として知られている湊も恋をしたりするのだろうか? 茶化すように気になっている人でも聞こうとしたとき、湊は俺の方に振り向くと胸に手を上げながら笑いかけた。
「だって、私は今、絶賛片思い中だからな」
一瞬、湊の笑顔に見とれていた。その笑顔に胸を高鳴らせる自分がいる。
「さあ、買い物に戻ろう。……伊織君?」
「お、おう」




