ラウンド14
昼休み。適当に朝食を食べ終えた俺は校庭の芝生に寝転びながらスマホをいじっていた。適当にSNSで皆の呟きを見ていると、大和さんのテンション高そうな呟きが流れてきた。
『好きな人にいいところを見せるチャンス!!』
良かった良かった。恋愛相談を受けている立場からすると、大和さんの恋が早く成就することを祈るばかりだ。呟きにいいねをすると、秒でメッセージが飛んできた。
『私、学園祭で好きな人にいいところを見せられそうです!』
反応早いな、この人。メッセージには笑顔の絵文字が大量に並んでいる。
大和さんの学校も学園祭か。この時期はどこもそんな感じなのだろうか?
良かったですね、と返信するとすぐに返ってきた。
『しかも、私が好きかもって言ってくれたんです! かっこよかったなあ。録音しておけば良かった』
大和さんは相当その人に恋しているようだ。恋する乙女、そんな言葉がよく似合う。
『イオさんにも聞かせたかったです! あんなにかっこいい人この世にいませんから』
『そんなにかっこいいんですか?』
『はい! 顔も声も全部私のタイプです!』
べた惚れだなあ。聞いてるこっちが恥ずかしくなってくる。
大和さんがどういう女の子なのかは知らないが、一人の女性に愛されているのは羨ましい。俺だって男だし、そういう人がいたらな、と思う。
だが、周りにいるのは堅物真面目風紀委員とあざとい幼馴染のみ。恋に落ちそうな気がしない。
ああ、どこかに出会いでも落ちてねえかな。
「よっと」
芝生から起き上がり、教室に戻ろうかとすると一輪車で肥料を運んでいる女子の先輩が目に入った。重たそうだが大丈夫だろうか?
「進まない……」
どうやら段差に車輪が引っかかって動かないらしい。
周りには人もいないし、見過ごすわけにもいかねえよなあ。
「手伝いますよ」
先輩に歩み寄り声を掛ける。
「あ、ありがと……」
笑顔で振り向いたかと思うと、先輩は俺の顔を見て、一瞬、目を丸くした。
「ん? 俺の顔になんかついてます?」
「い、いえ? なんでもないよ?」
何かをごまかすように笑う先輩。ポニーテールにまとめた長い亜麻音色の髪が印象的で、大人っぽい美しさのある人だ。……どこかで見たような気がする。
「もしかして、どこで会いました?」
「え? 同じ学校だし、すれ違ったことくらいあるんじゃない?」
明らかに慌てている先輩。確実に俺の顔を見てから挙動がおかしい。
俺は俺で、どこかで先輩を見た既視感が拭えずにいる。
「な、なに? どうしたの?」
聞けば聞くほど聞き覚えのある声。顔立ちも似ている。
まさか、いや、でも。あの人がこんな清楚になってるわけがない。……一つ試してみるか。
「おい、ゴリラ女」
「あぁ!? 誰がゴリラ女だごるぁ!? ……あ」
「やっぱり」
低く唸るような声に、凄みのある睨み。
間違いない、髪色も性格も話し方も変わっているがあの人だ。
「こんなとこで何してんんすか? ユウキ先輩?」




