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ラウンド13

 遡ること五分前。一時限目のLHRが始まり、傍観を決め込もうとしていたところまでは良かった。だが、湊が板書役が必要だと言い出し、凛が俺を推薦、そして面白そうだと薫ちゃんに決定されてしまった。


 というわけで何故か板書役になっている。仕方なく板書を始めると教壇に立つ湊が血気盛んにクラスを盛り上げていた。


「学園祭は楽しみか!」

『はい!!』

「他のクラスをなぎ倒していくぞ!!」

『うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』


 いや、何の決起集会だよ。お前らは戦いにでも行くのか?

 クラスに冷ややかな視線を向けていると、湊が口早に出し物決めを始めた。


「さあ、意見のある奴は手を上げろ!」

「はい!」

「はい、高橋君!」

「当然水着喫……」

「却下だ」


 高橋は湊にバッサリと切られた。水着喫茶、男子には眼福だが無理だな。高橋はクラス中の女子から冷たい目で見られている。高橋、そんなに震えて……。


「他にはいないか!」

「はい!」

「佐藤さんどうぞ!」

「クレープ屋さんがいいな」

「うむ、健全だな。採用」

「採用早くない!?」


 思わずツッコんでしまった。いくつか意見を出してから決めるものではなかろうか? しかし湊は満足そうに腕組をしている。


「どうした?」

「いや……」

「クレープ屋さんでいいではないか。健全だぞ?」

「確かにそうだが、もっと皆の意見も聞くべきだろ」

「むぅ。伊織君が言うなら仕方ないな」


 湊は素直に納得すると、再びクラスメイトたちに意見を求め始めた。

 

「他にはないか?」


 ざわざわし出すクラスメイトたち。出し物と言っても出来ることは限られている。一般的には食べ物関連か喫茶店、お化け屋敷などになるだろう。


「因みに私はお化け屋敷が苦手だ。絶対やりたくない」


 湊の一言により、選択肢が一つ減った。黒板にお化け屋敷禁止と書いておく。 

 誰も手を上げない中、一人の英雄が手を上げた。


「はい!」

「なんだ高橋君。先程のような破廉恥な出し物を提案したら許さないぞ」

「問題ない! 俺が提案するはコスプレ喫……」

「却下だ」


 提案虚しく撃沈。湊に睨まれ高橋は震えあがってる。クラスの女子たちは少しずつ高橋から机を離し始めていた。しばらく立ち直れなさそうだ。


「意見が出ないな。伊織君、現段階で上がっているのは?」

「クレープ屋のみだ」

「これ以上意見が出なそうだし、クレープ屋で良いだろうか?」


 クレープ屋で良い。クラスの皆の意見が固まりそうな時、俺はにしし、と笑う凛を見逃さなかった。あ、嫌な予感がする。


「はいはい」

「お、凛君。なんだ?」

「メイド喫茶にしようよ」

「むむ、提案はありがたいが風紀的に……」


 湊は小難しそうに顔をしかめる。凛、お前何を考えてる? じーっと見つめていると、凛は俺に気づいたようでにやりと口角を上げた。


「そっかー。伊織が紗季ちゃんのメイド姿を見たいって言ってたんだけどなー」

「な、なにぃ!?」


 言ってない。思いっきり捏造されてる。

 しかしながら凛の悪戯心は止まらない。


「残念だなぁ。伊織喜ぶのになぁ」

「……そうなのか伊織君?」


 湊は顔を赤らめながら聞いてくる。

 嘘だと訂正しておかねば、変な属性がつけられる前に。


「違……」

「くないよね? 伊織?」


 言うよりも早く、凛に遮られる。なんだよ、と凛の方を見ると俺にだけ見えるようにエッチな本をちらつかせていた。


 あ、あれは俺が一年の頃持ってきたエッチな本!? 誰にもバレないように隠していたのに、あいつどうやって……。冷汗をかいていると凛は口パクで「ば、ら、す」と言ってきた。


 こうなると選択肢は一つしかない。生唾を飲み込む。 


「湊」

「な、なんだ?」

「俺はメイドが好きだ。そして、湊のメイド姿ならもっと好きな気がする」

「な、ななな!! こんなところで何を言ってるんだ!!」 


 思いっきり赤面している湊。クラスメイトからは「サイテー」とか「変態じゃん」とか聞こえるが気にしない。俺はあくまでも高橋の為にやったんだ。

 サムズアップをしながら高橋の方を見ると、何故か引いていた。


 ……お前まで引いてんじゃねえぇぇ!!


「……伊織君は私のメイド姿が好き、メイド姿が好き……」

「湊さん!?」


 湯気が出そうなくらい真っ赤になって呟いている湊。

 元凶である凛を睨むと腹を抱えて笑っていた。あいつ、絶対に許さねえ……。


 だが、湊の方はオーバーヒートしてしまったのか? 片手を突き上げ高らかに宣言した。


「よし、決めた! 今年はメイド喫茶をやる!」

「おい、暴走するな!」

「今年はメイド喫茶かぁ。服の用意は任せとけぇ」

「薫ちゃんまで!?」


 薫ちゃんは欠伸をしながら立ち上がると、黒板に大きくメイド喫茶と書き込んだ。クラスからは拍手が沸き起こっている。……お前ら。


 というわけで今年の出し物はメイド喫茶に決まったらしい。

 クラス中が盛り上がる中ため息をつくと、湊が俺の肩を叩いた。


「私、頑張るからな!」

「お、おう」

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― 新着の感想 ―
[一言] 高橋ぃぃッ!
2021/08/21 00:29 退会済み
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