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ラウンド12

 定期試験が終わり、藤和高校は学園祭ムードへと動いている。 

 俺は湊との勉強会のおかげか、全ての教科で平均点以上を獲得。赤点を免れることに成功した。湊の方はいつも通り学年トップだったらしい。

 朝のHRまで時間があるのでスマホをいじっていると、朝の指導を終えたのか、湊が戻って来た。


「おはよう、伊織君」

「おう、湊」

「むむ、私のことは紗季でいいと言ったじゃないか」


 湊は不満そうに頬を膨らませている。

 名前で呼んでいいとは言われたものの、どうにも気恥ずかしい。


「別にいいじゃねえか」

「そうだが、これでは私だけが気を許したみたいになる」

「それでいいだろ」

「良くない」

「何?」

「何だ?」


 はじまりそうな言い合い。少しは仲良くなれたかと思ったが、まだ犬猿の仲は脱しきれていないようだ。

 バチバチ湊と視線を交わしていると、悪戯な笑みを浮かべながら凛が近寄ってきた。


「やあおはよう、お二人さん」

「おはよう高城さん。その節は世話になった」

「いいよいいよ。あと、高城さんじゃなくて凛でオーケーだよー」

「そうか、では凛君と呼ばせてもらおう。私のことも紗季で良いからな」


 がっちり握手する湊と凛。学校トップクラスの美少女同士の友情がここからはじまるのだろうか?


「で? お前は何しにきたんだ?」

「にゃはは。お二人さんが随分と仲良さそうだから冷やかしに来たのだ」

「な!? 私と伊織君は仲良くなんてない」

「ほんとかなー? 紗季ちゃん、前は伊織のこと名前で呼んでなかったよね?」

「うっ、そ、それは……」

「にしし、ほらね。伊織も隅に置けないなあ、学校一の美少女と名高い紗季ちゃんと仲良くなるなんて」


 いじりがいがある、そんな顔をして笑っている凛。また一段とややこしくなりそうな気がする。だがまあ、湊と凛が仲良くなるきっかけになるなら良しとするか。


「おら、席つけー」


 予鈴が鳴ると相変わらずやる気のなさそうな薫ちゃんが教室に入ってきた。

 適当に出欠を確認すると、プリントを配り始める。


「学園祭のお知らせだぁ」


 ボッサボサの頭をかきながら薫ちゃんが言うと、クラスが突然ライブ会場になった。


『うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』

「うるさい、盛り上がるな」

『すみません、甲原先生』


 盛りの下がるコールアンドレスポンスに、クラスメイトたちは一気に静まり返る。こいつら学園祭への意気込み高すぎだろ。


「一時限目LHRで学園祭の出し物決めるからな。湊、委員長として統率頼むぞ」

「はい!」

「良い返事だ。それでこそ我がクラスの委員長」


 統率ってなんだよ、このクラスは軍隊なのか? しかしながらクラスメイトたちは目を輝かせているし、隣の湊も鼻息荒くプリントを見つめている。お前、案外そういうキャラなのな。


 HRが終わり、一時限目のLHRがはじまる。学園祭の出し物決めということだが、俺はどうでも良かった。学園祭とか興味もない、勝手にやってくれ。

 と、思ったのだが。


「なんで俺が板書役なんだよ」


 気づけば俺は湊の横でチョークを持って立たされていた。

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