動揺・恐怖・沼
「ふふっ。そっかぁ。」
沙彩と名乗る少女は不敵な笑みを浮かべ語る
俺はこの時、生と死の境目にいるようなそんな不思議な気分でいた
「じゃあ、明日からだね。もう目覚めて」
「なにを…」
途端、俺のこの世界のでの意識はなくなり代わりに俺が昨夜寝ていたベッドで目を覚ました。俺は今でも覚えている。あの夢はひどく現実的で今でも緊張からの余韻のせいか、体が小刻みに震えている。まだ、あの場所にいた感覚が残っているのだ。俺はそっとベッドから立ち上がり一階から
「朝ごはんできてるわよー!」
と母の声が聞こえてきたので俺は下へ降りる
降りたすぐのところにリビングは存在し、そこに木製のテーブル、木製の椅子が置かれていた。朝食はそのうえにあった。席に座り手を合わせ
「いただきます」
そう言って朝食を口に含んだ
何気ない日常。これが本当の幸せなのかな、などとらしくもないことを考えた。朝食を食べ終えた時、時間は7時50分だった。確か8時には瑞稀と透が来る予定になってるから急いで準備をしないとな。そんなことを思っているとふと、目眩がした
「風邪かな…。気をつけないと」
学校というものは、どこがで経験したことのあるような内容だった。そして思っていたよりも退屈で眠気がすぐに訪れた
眠っていたせいだろうか。時間は瞬く間に過ぎていき気付けば学校は終わっていた
「達也、寝すぎ」
透が俺に声をかける
「それ、私も思った。達也そんな寝ているとテストの結果とか、やばいことになるよ?」
「うぐ。いいんだよ。それはそれなんだから」
「なんだそれ」
などと駄弁りながら透たちと話しながら帰る
家に帰り着き、夕食を食べるとすぐに眠気が襲ってきた。学校であれほど寝ても体はまた睡眠を求めるのか…。まぁ、頭の悪い俺が考えても仕方ない。寝るか!
「遅い!」
寝たと思えば途端に少女から怒鳴られた
姿を見れば、そこには沙彩と名乗る人物がいた
「遅いって…今はまだ22時だ」
「外の世界の時間なんて知らない!」
「はぁ…そんで、記憶は返してくれるのか?」
面倒くさくなった俺は単刀直入に聞くことにした
しかし、こいつから出た言葉は予想外のもので俺はひどく動揺した
「返す?ただで返せと?」
「どういうことだ…?」
俺はなんとか震えてしまいそうな声を抑え平常心で言葉を返した。だが、その声はきっと震えていたのだろう
「私はゲームが好きなの」
「…」
いきなり、なにを言っているのだろう
俺は沙彩の意図が掴めずにいた
当たり前だろう。いきなりこんな状況で私、ゲームが好きと言われたのだ。例えるなら手紙で『放課後、屋上に来てください』と書いてあっていざそこについてみれば、自分の好きな子で、その子から突然、『私、ゲーム好きなの!』などという訳の分からない告白を受けるようなものだ
俺が固まっていると沙彩は
「本当に返して欲しい?今ならまだ間に合うよ」
そう、優しい声音で言ってきた
俺はそれを払う
「あぁ。返して欲しい」
そういうと沙彩はまた、不敵に笑いゲームの内容を話していった
「ゲームは簡単だよ。あなたの記憶一つにつき、『だれか』のあなたに関わる全ての記憶を消されるってだけ」
俺が動揺しているのを楽しんでいるのか少し笑っているように見えた。沙彩は補足するように言葉を付け足す
「最初の方はあなたの近しい人間は避ける」
「それでも、いつかは消えるのか」
「さぁ。あなたの記憶の必要なところだけを消した分に合うそういうところを与えていくから」
つまりは…
「そう。運が良ければ君のことを見ただけ、そんな人だけが犠牲になるだけで済む。でも、運が悪ければ…ざーんねん。初めに言ったよね?もうここまで来たんだよ。後戻りはさせない。せいぜい足掻いて苦しんでね」
そうして俺は夢から覚めた。
俺は慌ててリビングに行き
「母さん!俺のこと…覚えてる…?」
母はなに言ってんのこいつ。みたいな顔で
「覚えてるに決まってるじゃない。そんな馬鹿なこと言ってないで早くご飯を食べちゃいなさい」
「う、うん。ごめん…」
やっぱり、あれは所詮夢だったのか
本当に?そう断言できるのか?
分からない。あの夢は普通じゃない
それは直感的に分かっていたことだ
違う。分からないのはそこじゃないんだ
俺は恐怖した。まぎれもない自分自身に
俺は分からないところが分からないんだ
一度深呼吸をしよう
呼吸を整えて、よし。まずは一つずつ、丁寧に答えを導き出していこう