電話3
1月11日
「普通じゃないよね?」
日陰はアブノーマルな付き合い方をしていたという事実を念押しするかのように確認した。
「うん。普通じゃない」
「冷静に考えたらそうだよ。なんで俺気づかなかったんだろう」
日陰はスマホを持っていない方の手で後頭部を掻く。
「まあわからないよ。付き合っているときは気づかないよ」
「外からみないと分からないよな」
うん、と奈津子が頷いた後に、日陰が
「洗脳みたいになってたんだろうな」
と付け足す。
「かげちゃんは、自分のことが」
日陰は頷く。
「っていうか、自分のしていることが全部正しいって思いこんでたんだろうね」
「全く、苦じゃなかったからな。こんなアブノーマルでもさ」
「自分を見失ってたね」
こわっとつぶやいてから日陰はうつ伏せから仰向けに寝返りを打つ。
「次は普通の恋愛したいわ」
「とにかく頑張って新しい人を見つけるしかなくね」
「そうなんだよな」
と日陰の伸ばした語尾に奈津子の、でも、という声がかぶる。奈津子は、
「でも、それまでが時間かかるんだけどね」
「そうなんだよ。そこが問題なんじゃ」
日陰は大きなあくびをした後に、
「奈津子付き合ってくれ」
と話を続けた。苦笑いのような声で奈津子は笑う。それから
「もっといい人が見つかるといいね」
とはぐらかすように話を変えた。まるでメッシのドリブルのように。
「面倒見がよすぎたかも」
日陰は友人の耕平に言われたことを思い出して、独り言のようにつぶやいた。