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第七十九話 それぞれの時間

 正人たちが食堂で昼休みをとっている頃、学内のとある廊下にて――。


 誰もいない廊下でコツコツと小さい足音だけが廊下に響く。


 ティラは今、午後の授業のため調理室へと向かっている。

 

 すると離れた曲がり角から、ティラがこの学園内で最も嫌っている人物が現れた。


 「――ん? よぉ奇遇だな、てめぇもこれから授業か、ティラよ」

 「……ルボナード……」


 運悪くルボナードと出くわしてしまったティラは、まるで苦いものでも食べたかのような表情で、道を遮るルボナードを見入る。


 「お疲れ様です急いでますので失礼します」


 道を遮るルボナードを避けてそそくさと進む。


 少し早口の言葉の裏には、どこか冷たさを感じる。

 だが、あくまでも教師であるため最低限のマナーは守っている。


 「んだよつれねぇな。普通世間話とかで花を咲かせるもんじゃねぇの?」

 「残念ながら、私は貴方のような人と花を咲かせる話題を持ち合わせておりませんので」

 「はっ、そうかよ」

 

 ルボナードの言葉に背を向いたまま返事をする。

 ティラはそのまま振り返りもせず、次の授業の準備へと向かった。


 「……相変わらずつんけんしてやがんなぁアイツは。――おっとやべぇ、俺も次の授業に向かわないとだったな」


 ハッと思い出し、ルボナードは再び歩き始めた。


 「そういや今日はマサトの野郎が授業を受けに来るんだったな。ちょうどいい、今日こそは()()料理のレシピを吐いてもらうぜ」


 ルボナードは不敵な笑みをこぼしながら、廊下の奥へと消えていった。



********************



 職員室前――。


 「さっさとこの用紙持ってかねぇと昼休み終わっちまう……」


 急ぎ足で職員室へと向かっているマーロウ。

 先ほど正人とぶつかった一件があったため急いでいた。


 そんな中、幼い女の子の精霊が声のみでマーロウに話しかけてくる。


 「あーあー、さっきのやつとぶつかってなけりゃ今頃昼ご飯だったのにな」

 「そう言うなって、よそ見してた俺にも責任はあるんだからさ」

 

 姿の見えない精霊にマーロウは優しく注意する。

 そうこうしているうちに職員室の扉の前に到着した。


 「ふ~ん、ま、お前が良いんなら俺は良いんだけどよぅ……。――おいマーロウ! 扉の向こうから()()の気配がするぞ……!」

 「……!!」


 マーロウが身構えるよりも早く、職員室の扉は開かれた。


 目に飛び込んできたのは、一切汚れの付いていない純白のスーツ。

 背中にある印象的な、コウモリに似た大きな翼。

 昼休みに入る前にあった精霊学の授業から戻ってきた――。


 「やっぱりあんたかよ、()()()()()……!」

 「……マーロウ」


 マーロウは怒りのこもったような眼差しで、スティーニを鋭く睨んだ。



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