表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/96

第七十六話 とあるポスター

 入学式から半年が経とうとしている、とある気持ちの良い昼下がり。

 正人は教室でスティーニ先生による精霊学の授業を受けていた――。


 「――このように、精霊という存在は我々にとって必要不可欠であり――」


 瞼が重い。

 スティーニ先生の声が途切れ途切れに耳に入ってくる。


 ちょうど日の光が当たる席で授業を聞いているせいで、俺はこくりこくりと、既にまどろみ状態に陥っていた。


 入学したての頃は緊張と不安のせいで授業中眠くはならなかったのだが、半年ほど経った今、心に余裕が出始め、緊張も解け、思わず睡魔に負けてしまう事が最近よくある。


 というのも、入学式からこれと言ったイベントが無く、暇を持て余している事も事実だ。

 

 確かに授業や調理実習も大事な事なのだが、なんだが物足りない気分だった。

 もっとこう、胸躍るイベントでもやらないものかと、最近常々思う。


 「……あと五分……」


 手のひらに浮かび上がる時計を確認しながら必死に睡魔と戦う。

 

 この授業が終われば午前中の授業はクリア。

 晴れて昼休みにあり付ける。


 「あと一分……」


 授業終了の五分前が一番長く感じるのは俺だけだろうか。

 一分が数十分にも感じてしまう。


 秒針を目で追いながら、心の中でカウントダウンをする。

 

 すると秒針が零時を指すと同時に、いつものように授業終了の合図である時計のアラームの様な音が学園中に響き渡った。


 「それではこれにて精霊学の授業を終了します。皆さん復習を忘れないように。では……」


 スティーニ先生は軽く礼をし、教室を出て行った。


 「う~ん! おわった~!」


 腕を正面に伸ばし、伸びをする。

 

 不思議と授業が終わると眠気が吹き飛んでしまう。

 一体なぜだろうか……。


 そんなことより昼休みだ。

 

 教科書をトントンと机上で整え立ち上がり、背中を後ろに反らせ、さらに伸びをする。

 

 約五十人ほどが授業を受けていた教室を後にし、俺は寮へと帰還し始める。


 帰り道の廊下の途中、なにやら人だかりができているのを遠目で確認する。

 

 「なんだろ、あの人だかり……」


 近くに行って見てると、皆、掲示板に貼ってある()()を見ている様だった。

 しかし、人だかりのせいで、それを確認するのは難しかった。

 

 唯一分かるのは皆の目がキラキラと輝いている事だった。


 「ますます気になる……よし」


 意を決して、人ごみをかき分けながら掲示板まで進むことにする。


 「――ふぅ、やっと来れた……」


 やっとの思いで掲示板の前に出てくることに成功した。

 

 そして()()を見た――。


 『一学期恒例 ガストルメ料理学園 学内料理コンテスト 近日開催予定! 乞うご期待!』


 一瞬にして俺の物足りない気分が埋まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ