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第七十話 処分の内容

「っつー!」

 

 今頃になって手に負った火傷の痛みが襲ってくる。


 「――! あの時負った火傷ね? 早く保健室に向かいましょう、立てる?」

 「うん、大丈夫。それよりイオラは怪我とかしてない?」

 「私は大丈夫。それよりまずは自分の心配をして!」

 「は、はい……」


 俺は苦笑いを浮かべながらゆっくりと立ち上がる。

 イオラに怒られた禁足地の森での一件。俺が嘘をついて一人で子供達を助けに森に行ったとき以来だ。

 何はともあれイオラも無事そうで良かった。だがこれを言ってしまったらまた怒られそうなので止めておこう。


 「すまん! 遅くなった!」

 

 実習室の入り口から颯爽(さっそう)と校長が入ってきた。


 「校長!」

 「おぉマサト君とイオラ君! 二人とも怪我はないか?」

 

 校長は俺の体をポンポンと軽くたたきながら、異常が無いか確かめてくれた。

 

 「私は大丈夫です、でも……マサトが手を火傷してしまいました」

 「……そうか……本当に迷惑をかけた、申し訳ない。早く保健室で治療してもらうといい。後始末は私がやっておく」

 

 俺は今回の一件で、ルボナードがどう処分されるのか一瞬だけ気になった。


 「先生、ルボナード先生は――」

 「大丈夫だ、私に任せておきなさい」

 

 校長は自信気にウインクをしてそう言った。

 

 「さぁマサト行きましょう?」

 「あぁうん」


 先生達をしりめに、実習室を去ろうとする。


 「――君のおかげだ」

 

 校長が何かボソッと言ったような気がした。

 俺は振り返って校長に聞き返す。


 「校長? 今何か言いました?」

 「む? はて、何か言ったかな?」

 「そ、そうですか……」


 聞き違いだった。

 俺はイオラと共に今度こそ実習室を後にして、火傷の治療をしに保健室へと向かった。

 

 

 ************



 校長は正人達を見送ると、ティラと横たわっているルボナードの元に歩み寄った。


 「――ディサローニ様、お待ちしてました」

 「……あぁ、ご苦労だった。もう大丈夫だ」

 「はっ!」


 ロマネクスは仕事を終えると、ルボナードに一礼し、煙のように消えていった。

 

 「校長……」

 「ぐっ……アンタか……」

 「……」


 校長は、ティラによって負わされた傷跡をまじまじと見つめている。


 「こりゃ痛そうだな」

 「なんだよ……俺を処分するんだろ? 煮るなり焼くなり好きにしろよ……」

 「……なぁルボナード。マサト君は、どうだったかな?」

 「……あ?」


 ルボナードはうつ伏せのまま首だけを動かし、校長を見上げた。

 

 「お前から見てあの子はどう思う?」

 「……全然だめだ。他の生徒の奴らと比べるとそこそこできる方かもしれねぇが、俺から言わせてもらえば、下手くそで俺の言う事もろくに聞かねぇクソみてぇなやつだ」

 「ルボナード、貴方って人はまた……!」

 「――そしてその上お人よしだ。ちくしょうが……」

 「……!!」


 その意外な発言を聞いたティラは驚きの表情を浮かべた。

 しかもルボナードは、どこか悔しそうな顔をしている。

 ティラは心の中でふと、こんな男でも悔しそうな顔をすることがあるのかと不思議に思った。


 「はっはっは! お人よしか、そうだな、確かにそうだ! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 「……知らねぇよ、んなもん」

 「?」


 校長は満面の笑みで高笑いをして言った。


 「それで、俺はどうなるんだ? ここで処刑でもされんのか?」

 「そんな物騒な事はしない」

 「ふんっアンタもたいがい甘いな。それじゃあオムニバスを抜けてこの学園から去れ、か?」


 ルボナードはにやりと笑い校長に聞いた。

 しかし校長は、笑みを崩さずこう答えた。


 「そうだな……じゃあ。『二カ月の出勤停止』なんてどうだ?」

 「な……!?」

 「え!?」


 余りに軽い処分に、二人の教師は驚きを隠せなかった。



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