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第五十九話 学園生活、始動

 全ペアの採点が終わり、後片づけも終わった。時刻は丁度十三時だ。


 「授業終了で~す。皆さん、お疲れさまでした~。赤点だった生徒には、後ほど補修の日程をお知らせいたしますので、しっかり予習しておいてくださいね~」


 初めての調理実習が終わり、皆一斉に調理室から退出し始める。中には、赤点を取って落胆している生徒もいる。

 

 「う~ん! 終わった~!」

 

 調理台に両手を付け、猫のように伸びをするフィナン。


 「俺達も出ようか」

 

 俺達は調理室を退出し、寮へと帰宅し始めた。

 なんだかんだ難しい条件のテストだった。でもなんとか高得点が取れて本当に良かった。最初の調理実習としては良い功績を残せたんじゃないだろうか。

 しかし今回はあまりにも唐突すぎた。せめて精霊の力をフルに使えれば良かったのだが……。今度からは予習できるように、事前に連絡して欲しいものだ……。

 いや――、逆に、いつテストが来てもいいように、日々練習をしておいたほうが良いのかもしれない。

 

 「マサト? 難しい顔しちゃってどうしたんだい?」

 「ん。あぁいや、さっきの実力テスト大変だったなーって」

 「ほんとだよ全く! やりにくいったらないよ! ……でも――」


 フィナンの声のトーンが落ちる。俺は「でも?」と聞き返した。


 「マサトとペアを組んでなかったら、たぶん僕も赤点だったと思う……。マサトのサポートがあったからこそ――」

 「……そんなことない。フィナンの腕は確かだと俺は思ってるから、きっと俺とじゃなかったとしても上手くできたはずだよ」


 なんて言うが、俺も偉そうなことを言えるほど腕は良くない。むしろフィナンの言っていることは俺のセリフだった。この世界では恐らく存在しない調理方法を教え、それを的確にこなしていくフィナンとペアだったからこそ、高得点を取れた。

 あとはイオラと同じく、俺がこの世界に来た時から共にいるから意思疎通がしやすいという点だろうか。


 「そ、そうかなぁ? えへへっ」

 「――フィナ―! マサト―!」


 フィナンが照れていると、後ろの方からイオラの声が聞こえてきた。どうやらイオラの方も授業が終了したようだ。

 

 「あ、イオラだ! 授業もう終わったのかい?」

 「えぇ、ついさっきね」

 

 受けた授業の教科書であろう書物を抱えたイオラは、俺達と合流した。


 「それで、どうだった? 最初の調理実習」


 絶対に聞いてくると思った質問を受けた俺とフィナンは、改めてどんよりした。


 「え……? どうしたの二人とも、そんな暗い顔して……」

 「いや……う~ん、なんというか……ねぇマサト?」

 「うん……、急すぎたね……」

 「……? 一体何があったの?」


 それから俺達二人はイオラに、今日の実力テストの事を話した。これで次イオラがテストを受ける時、少しは身構える事ができるはずだ。


 「そう……そんな事が……。精霊の力が制限されるなんて、確かにそれは厳しい条件ね……」

 「でしょ~? でもねでもね! なんと僕達、九十六点もらえたんだ~!」

 

 フィナンが、エッヘンと誇らしそうに胸を張る。


 「うそ!? すごいじゃない!」

 「でも、もう受けたくないや……」


 気持ちは分かる。が、この学園の事だから、きっとまたいつかあると、そう思ってる自分がいた。

 俺は犠牲者を増やさないために、イオラに注意を促す。


 「だからイオラも最初の調理実習は気を付けて」

 「わ、分かったわ……、肝に銘じとく」

 「それで、イオラの方はどうだったんだい?」


 今度はフィナンの方から、イオラに授業の事について質問した。


 「私? 私のところは……う~ん特に難しい内容でもなかったわ」

 「確か調理理論と栄養学? だっけ?」

 「えぇそうよ。調理理論は、主に調理方法や仕組みについての授業だったわね。栄養学の方はその名の通り、食品に含まれる栄養素について学ぶ授業だったわ」


 イオラは特に難しくない内容と言っていたが、話を聞く感じ、俺達には難しい授業にしか聞こえない。

 

 「イオラ……それ本当に難しくない……?」

 「? えぇ、むしろ面白かったわよ」


 薄々気づいていたが、きっとイオラは頭が良い。今までの行動から見てもそれが伺える。

 

 「心配しなくてもマサトならきっと大丈夫よ」

 「あれ、僕は?」

 「フィナンは……少し努力したほうがいいかしらね…」

 「ひどいっ!」


 俺は思わず苦笑した。相変わらずの二人のやり取りを見ていると少し和む。

 授業も終え、帰り際に友達と談笑をする。俺は、本格的に学園生活が始まったんだなと改めて実感した。



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