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第五十一話 ささやかなプレゼント

 「それでは続きまして二学期にある大きなイベント! 皆さんご存知のはず! その名も――、ガストルメ料理学園、学園祭『オステリア』!! 知らない方はいないと思いますので、説明は割愛させていただきますねー!」


 ようやくメジャーなイベントが出てきた。またもホール内にいる生徒達がザワザワし始める。

 皆さんご存知というが、俺は当然その学園祭がどのようなイベントなのか全く知らない。

 

 「ねぇ、そのオステリア……? ってなんなの? 普通の学園祭と何が違うの?」


 俺はイオラとフィナンに問いかけた。すると二人は驚いた表情で俺に言った。


 「……まさかガストルメ料理学園の学園祭を知らないの……!?」

 「そこまで無知だとは……。さすがの僕でも驚いたよ……」


 二人は驚きを通り越して、もはや呆れているようだった。

 他国から来た二人が知っているという事は、この世界でもかなり名が広まっているイベントなのだろうか。

 俺が頭にハテナマークを浮かべていると、やれやれといった表情でイオラが説明を始めてくれた。


 「まさかとは思ってたけど、マサトって本当に何も知らないのね……。……ガストルメ料理学園、学園祭、通称『オステリア』は、毎年大勢の来客が学園祭に訪れるという、世界規模の学園祭なの」


 世界規模の学園祭……? そんなの聞いたこともない。いや、ここは異世界だし当然と言えば当然なのだが。

 

 「具体的にはどんな学園祭なの?」


 俺は詳しくイオラに尋ねた。


 「私も噂でしか聞いたことないのだけれど、学園内で小規模の料理店を出店して、もてなすらしいわ」

 

 説明を聞く感じだと、ただ学園でお店を出店するという、現代の文化祭となんら変わらない。


 「このガストルメ料理学園というのは、この世界で一番有名な学園なの。そんな有名な学園の生徒が作った料理を食べに、色んな国からわざわざここまで足を運んで食べに来るそうよ」

 「なるほど……」


 要するにスケールが大きすぎる学園祭か。世界規模と言っていた意味がようやく分かってきた。

 

 色んな国から客が食べに来るという事は、もし不味いと言われ、客を満足させなかったら、学園の名に泥を塗る事になる。だからどのみち腕を磨いておく必要があるというわけだ。自分のレベルを上げるいいきっかけになりそうだ。


 「そして三学期のイベントについてですが――、これは特に大事な行事ですので、皆さんよ~く聞いといてくださいね!」


 三学期、一年の節目だ。一体どんなイベントがあるのだろう。まさかまた、なんとか祭りとか、なんとかコンテストとか来るんじゃなかろうか。

 俺は期待に胸を膨らませながら、ティラの説明を聞いた。


 「三学期、一大イベント、それが――、『進級実技テスト』! これをクリアできなければ、二年生に進級することはできません!」


 と、無邪気なティラは満面の笑みを浮かべながら言った。

 俺の聞き違いだろうか。今、クリアできなければ進級できないって言った気がしたが……。


 「大事な事なのでもう一度言います! この進級実技テストがクリアできないと、二年生に進級することはできません!」


 やっぱり聞き違いなんかじゃなかった。

 ここは良心的で生徒に優しい学園だと思っていた。だがやはり、牙は存在していたみたいだ。

 クリアできないと進級できないという事は、もしクリアできなかったらずっと一年生止まりという事か。


 「さすがはガストルメ料理学園……油断できないわね……」

 「でもまぁ、まだだいぶ先の事だし、それまでに腕を磨いておけば問題ないんじゃない?」

 

 楽観的なフィナンはそう言うが、確かに一理ある。三学期までまだだいぶ時間はあるし、その間、コンテストや学園祭もあるから、自然と腕は磨けるはずだ。


 「以上が一年の大まかな行事です! 特に進級テストに関しては、皆さん日々の修練を怠らないようにしましょうね! 続きまして学園内の施設についての説明です――」


 そこからは、特にこれといった大きな情報は出てこなかった。学園内に存在する調理室や図書館や保健室などの施設案内だけであった。

 

 いろいろと興味をそそるオリエンテーションだった。残り時間あと数分となったところで、ティラが最後の挨拶を始めた。


 「――はいっ! 以上でオリエンテーションはおしまいです! 皆さまお疲れさまでした! それでは最後に、皆さま、両手を前に出してください!」

 

 言われるがままに俺達入学生は、両手を前に出した。

 ホール内の全生徒が同じようなポーズをとっていて、少し異様な光景だった。


 「私からのささやかなプレゼントです! 受け取ってください――!」


 ティラが、持っていた杖を空中で一振りすると、俺達の頭上がキラキラと光り始めた。するとパッと何かが出現し、俺達の手のひらへとポスンっと落ちた。

 

 「うわっ! なんか降ってきた!」

 「これってまさかこの学園の……!」

 「コックコート……!!」

 

 頭上から降ってきたのは、真っ白くて肌触りの良い、学園のエンブレムが刺繍された綺麗なコックコートだった。


 「既にお持ちの方はそちらを使っていただいてもかまいませんので、ご自由に! ――それでは皆さん、お疲れさまでした! 明日の授業、頑張ってくださいね! おやすみなさいっ!」

 

 濃い情報ばかりだったオリエンテーションがようやく終わり、俺達はコックコートを大事そうに抱えながら、寮へと帰還し始めた。



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